第157話 珍味ハンター
ランゾーレの街で買い物を行った日から3日後。
冒険に出ていたルーアさん達が戻ってきた。
今回もかなり壮大な冒険だったようで、未発見のダンジョンを発見したとのこと。
私達が冬季期間に潜っているダンジョンほど、大きいダンジョンではないみたいだけど、国境近くにあったこともあって、誰も踏み入れたことのないダンジョンだったみたい。
今回は1階層しか見ていないようだけど、次の冒険では最奥を目指して攻略すると息巻いていた。
今回発見された未踏のダンジョンも気になるが、私が今、一番気になっているのは珍味ハンターさんについて。
ベルベットさんのお話では、今日にも訪ねてくると言っていたんだけど……。
畑仕事を行いながら、ソワソワとしながら到着を待っていると、豪華絢爛なベルベットさんの馬車がやってくるのが見えた。
「あら、佐藤。出迎えてくれたの?」
「馬車が見えたので、急いでやってきました。その奥にいるのが……珍味ハンターさんでしょうか?」
「ええ、そうよ」
「ワシは『美食』ハンターをやっているダグラスじゃ。よろしく頼む」
私が何気なく言った珍味ハンターというワードに引っかかったようで、怪訝そうな表情をしているダグラスさん。
本人は美食ハンターを名乗っていたため、
珍味ハンターと呼ばれるのは好きではないようだ。
「はじめまして。私は佐藤と言います。ダグラスさんのことはベルベットさんが聞いていまして、ずっと会いたいと思っていました」
「本当かどうか怪しいがな。とりあえず素直に受け取らせてもらうぞい」
「本当に会いたかったです。クイーンニードルの蜜には感激しましたし、私も美味しい魔物を見つけたいと思っていますので」
「……ふーん。そうなのじゃな。なら、構わないが」
今度は表情が緩んだため、私が魔物食に興味があることを知って、嬉しく思ってくれているのが分かった。
意外とツンデレ気質があるのかもしれない。
そんな失礼なことを心の中で考えながら、私はベルベットさんとダグラスさんをリビングに案内した。
クイーンニードルの蜜を入れた紅茶を出してから、早速お話を伺う。
やはり聞きたいのは、美味しい魔物について。
「早速ご質問させて頂いてもよろしいでしょうか? クイーンニードル以外の美味しい魔物について、ダグラスさんには色々と教えてもらいたいんです」
「ふーむ。クイーンニードル以外じゃと、サマーキャトルの乳やゴールドヘンの卵なんかは比較的食べやすくて美味しい食材じゃな」
キャトルは牛で、ヘンは確か雌鶏だったかな?
魔物の名前のせいで仰々しくなっているけど、言い換えてしまえば牛乳と卵。
クイーンニードルの蜜はハチミツだったし、この2つも絶対に美味しいと思う。
「名前からして美味しそうです。ぜひ食べてみたいですね」
「名前から美味しそうとは随分と変わっておるな。少量だが持ってきたから食べてみるか?」
「頂けるのであれば、ぜひ食べさせてください!」
ということで、私はサマーキャトルの乳とゴールドヘンの卵を受け取った。
生では食べられないということなので、両方とも火にかけてから食べてみることにした。
本当に火にかけただけのため、完成したのはホットミルクとゆで卵。
両方とも真っ白って感じではなく、少し茶色混じりの色となっている。
「食べさせて頂きます。……ベルベットさんも食べますか?」
「私はいらないわ」
凝視していたから食べたいのかと思っていたけど、どうやら興味があるだけで食べたいという気持ちはない様子。
魔物から生み出ているものだし、蜜とは少し違うのかもしれない。
私はまず、ゆで卵から食べてみることにした。
少量の塩を振ってから、勢いよく齧りつく。
「――美味しいです! かなり濃厚な卵ですね」
「ふぁっふぁ。お主は味が分かるようじゃな。癖はあるが、旨味も強いのが特徴じゃ」
確かに若干だけど硫黄の香りがする。
大涌谷の黒卵を濃厚にしたような味わい。
次に温めた牛乳を手に取り、こちらも一気に飲んだ。
「こちらも美味しいです。砂糖を入れていないのに、甘みが強いですね」
「そうじゃな。デザートを作る際に使うと相性が良いぞ」
「確かにデザートには合いそうですね」
この世界の食材と比べたら、比較にならないくらい美味しい食材。
私はあっという間に牛乳とゆで卵を食べ終えてしまった。
非常に大満足の味だったけど、そんな私を見るベルベットさんの目が冷たい。
これだけ美味しいのに、この視線を向けられるということは、やはり魔物食にはかなりの抵抗感があるようだ。
食べればきっとハマると思うんだけど、無理に食べさせることはできないので悩みどころ。
もう少し料理っぽくしてから、いずれベルベットさんにも食べさせてあげたいな。
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