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第150話 乾杯


 テーブルの上に全ての料理を置き、今回来てくれた全員がリビングに集まった。

 こうやって見てみると相当手狭だし、立食じゃないと入りきれないぐらいの人数。


 異世界に転移してきてから、これだけの人と親密な関わりを持つことができたことを嬉しく思う。

 ただ……次に開催する際、これ以上参加者が増えた場合は、流石にこのリビングで全員を集めるのは難しい。

 シッドさんに何か大きな建物を造ってもらうことも考えつつ、俺は乾杯の音頭を取ることにした。


「改めて、今日はお集り頂きありがとうございます。ここにお集り頂いたのは、私がこの一年間で本当にお世話になり、助けて頂いた皆さんです」

「そんなことないのじゃ! わらわの方がお世話になったからの!」

「そうそう! 絶対に私達の方がお世話になってる!」


 乾杯の音頭の合間に、ヤトさんと美香さんが叫んでくれた。

 そう言ってくれるのは非常に嬉しいけど、喋ろうとしていたことが頭から飛んでしまった。

 ……長々と話していてもしょうがないし、もう乾杯にいこう。


「ヤトさん、美香さん、ありがとうございます。……えーっと、ささやかなお礼にはなりますが、とびきり美味しい料理を用意しましたので、是非とも楽しんでいって頂けたらと思います。それでは乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」


 乾杯の合図の後、手に持っていたグラスに入ったお酒を一気に呷った。

 ジョルジュさんお手製のお酒であり、最高品質のものを提供してくれたということもあって非常に美味しい。


 お酒の飲めない蓮さん達やヤトさん、ジョエル君には、ベルベットさんが持ってきてくれた『マルカメ堂』のジュースを飲んでいる。

 新作のジュースみたいだったけど、やはり味の面で少し劣るようで、お酒組と違ってあまり美味しそうにはしていない。


「うわー! 今回もピザがあるじゃん!」

「マルゲリータだけじゃなくて、シーフードとか照り焼きチキンがあるな! 宅配ピザを思い出しちゃうクオリティだわ!」

「この間のだけがピザなのかと思っていましたが、ピザにもこんなに種類があるんですね! 早速食べさせて頂きます!」


 新作料理には目がないシーラさんが、早速別の味のピザに手を伸ばした。

 どちらも宅配ピザの中では定番だし、きっと気に入ってくれるはず。


「んー! トマトのピザとまた違って本当に美味しいです! ピザという同じ括りの料理には思えないですね!」

「喜んでくれたみたいで良かったです。パスタに関しても、また別の種類のものがありますので是非食べてみてください」

「あっ、本当だ! ソースで分からなかったですが、白いのもキノコのもパスタなんですね!」


 カルボナーラと和風パスタにも興味を示してくれたみたいで、シーラさんは美味しそうに料理を頬張っている。

 私はそんなシーラさんを見て穏やかな気持ちになりつつ、ノーマンさんが作ってくれたオリジナル料理を食べてみることにした。


「佐藤。こっちは佐藤の世界の料理じゃないんでしょ?」

「ええ、あそこにいるノーマンさんのオリジナル料理です。食材だけは異世界のものですな、こちらの世界の料理風に作られているみたいですよ」

「へー。確かに見覚えのある見た目をしているわね」


 ノーマンさんの創作料理に興味を示していたのはベルベットさんであり、早速私の分も取り分けて持ってきてくれた。

 こちらの世界の料理も、食材が悪いだけでレシピは悪くないと思うからね。

 どんな味わいになっているのか、非常に楽しみな一品。


「いただきます。――あっ、美味しい! 見た目はカルストに似ているのに、味は美味しいから脳が変な感じだわ」

「へー。これはカルストって料理なんですね」


 ベルベットさんの知識を聞きながら、私も一口頂くことにした。

 ――うん、普通に美味しい。


 一口大のもちもちの生地の中に野菜とお肉、それから甘辛いソースが入っている料理で、小さなケパブみたいな感じの料理。

 食材がしっかりしているため、無難に美味しい料理といった感じ。


「確かに美味しいですね。一口での満足感がいい感じです」

「一口で満足できる料理になっているわ。……でも、料理としての完成度は佐藤の料理の方が上じゃないかしら? 食材は美味しいけど、食べた時の感動はしないわね」


 良い反応かと思ったけど、結構な辛口コメントを残したベルベットさん。

 確かに私も同じ感想であり、とびきり美味しい料理ではなく、無難に美味しい料理という評価。


 なんというか、元々が食材の悪さを誤魔化すための料理である故に、分厚すぎる生地のせいで食材が美味しいと勿体ないという感情が出てしまう。

 もちもちの食感は楽しいんだけどね。


「……王女様には痛いところを突かれたな。自信作だったんだが、王女様の言う通りいまひとつ足らない」

「あら、聞こえてしまった? せっかく作ってくれたのに、酷いことを言ってしまって申し訳ないわね」

「ノーマンさん、凄く美味しいですよ?」

「いや、佐藤のレシピの方が優れているのは自分が一番分かる。悔しいが、食材もレシピも負けているからな。異世界の料理は、何よりも簡単に作れる工夫が施されているのが狂気すら感じる」


 確かに私が作る料理は、動画投稿サイトのレシピを参考にしているし、レシピを作るプロによって誰でも簡単に作れるような工夫が施されている。

 簡単に作ることができて、あのクオリティの味が出せるのだから、料理人であるノーマンさんからしたら狂気を感じてもおかしくないのかもしれない。


「へー。佐藤の料理って簡単に作ることができるのね」

「あくまでも、ある程度料理ができる前提だけどな。とにかく……今回、俺のオリジナル料理を作らせてくれた佐藤には感謝しかない。目指す道が見えた気がする」


 そう言ったノーマンさんの目は燃えており、ベルベットさんの屈託のない意見を聞いても落ち込んでいるようではないようなので安心した。

 この熱が変な方向にいかないことを願いつつ、私は料理と雑談をとことん楽しんだのだった。



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