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第13話 目標


 シーラさんがここに残ることが決まった翌日。

 その後も穏やかな時間を過ごすことができ、異世界にやってきてから一番寝覚めが良いかもしれない。


 今日からまた変わらずの生活を送る予定だが、シーラさんも正式に残ると決まった訳だし、目標を決めてもいいかもしれない。

 このまま、のほほんと過ごすのもいいんだけど、緩くてもいいから何かしらの目標が欲しい。


 私は二人分の朝食を作りながら考える。

 そして丁度朝ご飯が完成したタイミングで、シーラさんが起きてきた。


「佐藤さん、おはようございます。ふふ、美味しそうな匂いです」

「ベーコンと目玉焼きです。冷めない内にどうぞ――と言いたいところですが、食事の前に一つお話をしてもいいですか?」

「ま、またお話ですか? 昨日のことがあって、あまり良いイメージがないのですが……悪いお話じゃないですよね?」

「昨日も悪い報告をしたつもりはないのですが……今日は悪い話ではありません。ここで生活するに当たって目標のようなものを決めようと思いまして、その目標をシーラさんと一緒に決めたいと思っています」

「目標ですか? 佐藤さんの国を造る――みたいな感じでしょうか?」

「そんなに大それたことはしません! とりあえず私が考えた目標の案は三つです。一つ目は大きな農園を造る。現時点で畑はありますが、あくまでもNPを増やすためのものです。そのためスキルに頼った畑でなく、自力でも畑を作ってこの一帯を農園にする――という目標です」


 今は王城から食糧を貰い、その食糧を頼りに暮らしている状態。

 NPを使って日本の食材を買い、その食材で料理を作ることもあるが、値段が高いこともあって毎日は無理な現状。


 そのため、スキルに頼った畑以外も造り、食用やこの世界の通貨に変えるために売る用の野菜や果物を育てたい。

 まぁ今はスキルの畑だけで手一杯ではあるんだけども。


「大農園! 凄く面白そうですね。流石に私と佐藤さんだけでは難しいと思いますので、人手は増やさないといけないと思いますが」

「その辺は王様に相談してって感じになりますね。そもそも、この場所を農園に変えていいのか問題もありますから」

「確かにそうですね。でも、ワクワクします! 二つ目はなんでしょうか?」

「二つ目は魔物の牧場のようなものを造る――です。NPを使わないと駄目ですが、ライムのように魔物を購入して、従魔を増やして牧場を造りたいと大雑把ながらに考えてました。私は魔王討伐には役立つことができませんが、魔物でしたら戦力になってくれる可能性もありますので」


 ドラクエシリーズのテリワンやイルルカが大好きだったため、魔物をかき集めてパーティを作るというのには憧れがあった。

 配合なんかはできないと思うけど、ゲームと違って三体~四体しか同時に戦えない縛りはないから、もしかしたら魔王を脅かすことのできる戦力になる可能性があると思っている。


 それに戦力として期待できなかったとしても、ライムのように他の分野で活躍できる可能性は大いにあるし、魔物の牧場を造るというのは私がやってみたいものの一つ。

 まぁこちらも、NPをしこたま集めないといけないため、遠い未来の話にはなると思うけど。


「魔物の牧場……。これは手放しで賛同できません――と言いたいところですが、ライムを見てしまっていますからね。例えばですが、強力な力を持つ魔物がライムと同じように懐いてくれるのであればワクワクします! 確実に魔王討伐の役に立つと思いますし、魔物の種類や数によっては……今回召還された勇者様たちよりも、遥かに戦力になる可能性があると思います」

「シーラさんがそう言ってくれて安心しました。この世界の人たちは確実に魔物に対して不信感を持っていると思いますし、魔物を大量に集めていると噂が立ったら魔王軍の一員認定されてしまうかもと思っていましたので」

「あー、いや、そう思われてしまう可能性はありますね。ただ、こちらも王様に事前に報告すれば大丈夫なはず――です! それで三つ目はなんでしょうか?」


 際どいといえば際どい感じか。

 とりあえず、一度王様に会って話してみないと解決はしなさそう。


「三つ目は異世界のものを集めてリゾートにする――です。まぁリゾートは言い過ぎですが、異世界の食材なんかをこの世界で作れるか試して、いつでも異世界料理を食べれるようにしたり、異世界の娯楽なんかも集めたいと思ってます。ここは自然も豊かで羽休めには最適の場所ですし、おもてなしをしつつお金を頂けるような場所に変える的なことを考えていました」

「異世界料理がいつでも食べられる!? それ、いいです! 最高ですよ!」


 どの選択肢よりも心に響いたようで、興奮気味に机に身を乗り出したシーラさん。

 私はテーブルの朝食をさっと避けてから、冷静に話を進める。


「こちらも王様の許可が必要になりますけどね。勝手にリゾート地にしようとしていますので」

「だとしてもやるべきです! 食糧も少なくなってきましたし、王都に戻って話をしにいきましょう」

「その前に三つから一つを選ばないと駄目です。シーラさんの意見は聞かずとも分かりますが、最後の選択肢が一番建設的ではない気がしているんですよね」


 トマトやキュウリといった日本の野菜が、この世界で育つのか不明。

 NPがNPだけに試すにも勇気がいるし、仮にスキルの農地でしか育たないとしたら、一気に不可能寄りになってしまう。


 娯楽の方も漫画や小説なんかは大丈夫だろうけど、ゲームや映画なんかは電力を必要とするため、購入したとしてもこの世界では使えない可能性がある。

 シーラさんの話によれば、電気という概念はあるみたいだけど、主なのは魔力で動かす魔動みたいだからな。


「確かにこの三つの中から一つを選べと言われましたら、私は三つ目が一番魅力的でしたが……一つに絞る必要はあるのでしょうか?」

「えーっと……三つともやるってことですか?」

「はい。三つの提案全てが魅力的でしたし、どうせなら全てやりたいと私は思いました」


 その考えは流石になかった。

 決して不可能ではないだろけど、どれか一つでも大変だろうし……のんびり田舎暮らしとは逸脱してしまう気がしている。


 それに一番はNP問題であり、三つとも目指すとなったら足りるとは到底思えないんだよな。

 私が腕を組んで頭を捻っていると、シーラさんが追撃の言葉をかけてきた。


「あくまでも目標ですし、気軽に考えましょう! 達成できなかったらできなかったで、今の生活を送ればいいのですから」

「…………確かにそうですね。あまり深くは考えずに大きな目標として――私が挙げた目標を達成できるように気楽に動きましょうか」

「はい。私もお手伝いしますので! まずは……近い内に王都に行きましょう。王様との交渉が最優先事項ですので」

「そうですね。次からは収穫のみで、種植えはしないようにしましょう。王様への交渉だけでなく、王都も見てみたいので数日空けても大丈夫なようにしましょうか」


 こうして話し合いを終えた私たちは、急いで朝食を食べた後、遅れた分気合いを入れて農作業を行った。

 目標を立てたことで更にワクワクできているし、シーラさんに相談して大正解だったな。


 後は単純に王都に行くのも楽しみだし、久しぶりに一緒に転移してきた勇者のみなさんとも会いたい。

 もし、ご飯で苦労していたら日本の食材で何か作ってあげてもいいかもしれない。



お読み頂きありがとうございます!


この小説を読んで、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも感じましたら、

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読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、是非よろしくお願いいたします!

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