第141話 カップ麺
カップ麺といえど、色々な種類がある。
王道なのはやはりカップヌードルだけど、これは万人が食べて美味しいと思うのか甚だ疑問。
もちろん私は一番好きなカップ麺だし、懐かしさも相まって、1週間前から食べたいと思っていた。
ただ、好きと美味しいは違うというのをよく知っている。
初めてカップ麺を食べた人が美味しいと感じるのは、きっとラ王なんかの生タイプ麺。
個人的にはどん兵衛なんかの蕎麦とうどんも好きだし、UFOなんかのカップ焼きそばも好き。
私は辛いものもいけるため蒙古タンメンのカップ麺も好きだったし、一風堂のとんこつラーメンも好きだった。
選択肢が多すぎて、見れば見るほど選べない。
今、私が挙げた全てのカップ麺が日清から出ているのも驚き。
ここまで種類が多いと、全員が違う種類でも余裕でいけてしまうが……なんとなく揉めそうだし、やはり今回はシンプルのカップヌードルがいいかもしれない。
回り回ってカップヌードルを購入することに決めた私は、醤油、シーフード、カレーの3種類を購入することにした。
個人的にはチリトマトやトムヤムクン、味噌なんかも好きなんだけど、カップヌードルといえばこの3種類。
プールや海で食べるカップヌードルは美味しかったなぁ――なんてことを考えながら、私は人数分のカップヌードルを購入した。
「あっ、カップヌードルだ! 懐かしい! 私は絶対にシーフード!」
「俺はカレーだな!」
「普通に醤油が一番美味しいです」
「俺はチリトマトが好きだけど、この中ならシンプルに醤油派」
私が購入したカップヌードルを見て、即座に反応した蓮さん達。
この4人の反応を見るだけでも、人によって好みが分かれることを示唆してくれている。
「みんなが知っているような食べ物なんですか?」
「私たちが住んでいた国では全員が知っていてもおかしくないレベルの食べ物ですね。きっと気に入ってくれると思います」
「楽しみなのじゃ! それでどうやって調理するんじゃ?」
「お湯を注いで待つだけですね。お湯の準備はしてくれていますので、3分後には食べることができます」
「お湯を注ぐだけ……?」
「手抜き料理なのかの!?」
私の返答に対し、全員が怪訝そうな表情を見せた。
確かにお湯を注ぐだけの料理なんて、普通は考えられないもんな。
「安心してください。少なくとも、このダンジョン街で食べた料理の中では一番美味しいと思ってくれると思います」
「そうそう! 作り手は手抜きなのは間違いないけど、完璧な味付けがされてるから大丈夫!」
「こっちの世界じゃカップ麺がないからな。概念を知らなかったら驚くのも無理はないのか」
「みんなが驚く顔を見るのは楽しみだぜ! お湯だけであの料理作れるんだからな!」
「むむむ、みなさんだけ楽しそうで羨ましいです」
異世界転移組だけで盛り上がっていた中、シーラさんは頬を膨らませながら少し拗ねた態度を見せた。
私はそんな態度に対して笑いつつ、みんなのカップヌードルにお湯を注いでいく。
「これで、3分待つだけなのですか?」
「でも、確かにもう良い匂いがするのじゃ!」
「2分で食べるって方も多くいますが、3分待つのが正規ですね」
私もどちらかといえば麺硬めが好きなので、一人の時は少し早めに食べていた。
ただ、今回はみんなと一緒にいるということもあり、しっかりと3分間待つ。
「3分経ちましたね。もう食べられると思いますよ」
「みんなで食べるのじゃー!」
「「「いただきまーす!」」」
ヤトさんの号令を皮切りに、みんなで食前の挨拶を行ってからカップ麺を食べる。
普通に考えたら自炊の方が美味しいはずなんだけど――やっぱり久しぶりのカップヌードルは格別に美味しい!
「――美味しいです! スパゲティやそうめんに似ているのかと思いましたが、全く別種の料理ですね!」
「これ、本当にカレー味なのじゃ! お湯だけでこんな料理になるなんて、佐藤の世界の料理は凄いのじゃ!」
「本当に美味しいですね。クオリティの高さに驚きます」
「僕は佐藤さんの料理の方が好きですが、確かにお湯だけで作れると考えたら格別に美味しいですね! 少なくとも、ダンジョン街で食べた料理の中では群を抜いて美味しいです!」
「ジョエルの言う通りだね。ダンジョンのお宝がこのカップヌードルとやらだったら、アタシはもっと熱を入れてダンジョン攻略をしていると思うよ」
全員のお口に合ったようで、大絶賛の嵐となっている。
そんな中でも私を含む異世界転移組は、なつかしさも相俟って無言で啜り続けている状態。
こっちでは料理ができないということで、妥協案のカップ麺だったけど……感動するぐらい美味しい。
問題なのは1つ30NPという高価なことぐらいだけど、1週間のお楽しみと考えたら、全員分を購入したとしても2ヵ月で4000NP弱。
貯めたNPを考えたらもう少し頻度を上げられるくらいだし、カップ麺はダンジョン攻略期間の最大の楽しみになりそうだ。
種類も豊富なのも大きいし、次はカップヌードル以外を攻めよう。
そんなことを考えながら、私は久しぶりのカップヌードルを心から楽しんだのだった。





