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第136話 お風呂


 焼き芋パーティーから1カ月ほどが経過。

 気温はグッと低くなっており、いつ雪が降り始めてもおかしくない気温になっている。


 新たな作物を植えるのは既に止めていて、後は今育っている作物が育ったら今年の農業は終わりとなる。

 寂しい畑を見ていると、今年1年を振り返りたくなってくるけど、振り返るのは冬季期間のダンジョン攻略が終わってから。


 私は密かに剣を振り続けていたし、今年の目標の1つは魔物を討伐することだからね。

 これを達成しない限りは、今年1年を振り返ることができない。


 午後は完全に剣の稽古に移行している中、シーラさんとルーアさん、それからジョエル君にみっちりと指導をしてもらっている。

 剣術自体のコツは掴みかけている気がするんだけど、如何せん体がついてこないのが悩み。


 ダンジョンに向かうまでは、後1週間はあるだろうし、この1週間で仕上げたい。

 そんなことを考えつつ、私は着替えとタオルを持って、とある場所に向かった。


 そのとある場所とは……もちろんお風呂。

 以前から、ロッゾさんとシッドさんに造って貰っていたのだけど、冬前にしてようやく完成したのだ。


「あっ、佐藤さん! 今日も来たんですね!」

「はい。お風呂に入るのは日課ですから。ジョエル君も入りに来たのですか?」

「はい! 稽古終わりのお風呂は最高に気持ちが良くて、完全にハマってしまいました!」

「お風呂の良さを分かってもらえて良かったです。この寒い時期は格別に気持ちがいいですからね」


 お風呂に入りに来ていたジョエル君と出くわした私は、一緒にお風呂場に向かうことにした。

 今は男性用のお風呂しかないけど、10人以上が入れるくらいの大きさで作ってくれたため、こうしてジョエル君も入りに来ている。


 今は女性用のお風呂も建設中であり、冬明けくらいには女性用の方も完成する予定。

 旅館のように、時間帯によって男風呂と女風呂を分けることも考えたんだけど、ロッゾさんとシッドさんがいるため却下。


 それに、女性陣はまだお風呂というものに魅力を感じていない様子だし、女性用お風呂が完成するのを待ってもらうことにした。

 早いところ完成させ、お風呂上がりの牛乳なんかをみんなで一緒に飲みたいんだけど……それらはまだ先になりそう。


「異世界って本当に凄いですよね! お風呂も入る前はよく分かりませんでしたが、僕の価値観が毎日壊されていってます!」

「私のいた世界は、どう楽しむかにシフトしていましたからね。まだまだ価値観を壊すことができると思います」

「楽しみですが、少し怖いです! もう、僕は以前のような生活じゃ絶対に満足できない体になっていますから!」


 良いことなのか悪いことなのか分からないけど、ここにいるみんなにはもっと楽しんでもらいたい気持ちが強い。

 発展を止めるつもりはないし、私も正直みんながいない生活を考えられなくなっているし、私のスキルが使える限りは発展させまくるつもり。


 そんな会話をしながらお風呂に入ると、既に湯船には先客がいた。

 もちろんロッゾさん、シッドさん、ジョルジュさんの3人であり、お盆に酒を浮かべながら、お風呂を最大限に楽しんでいるのが見えた。


「おう! 佐藤さんとジョエルも来たか!」

「今日も月見酒をやっていたんですか? 危ないのでほどほどにしてくださいね」


 月見酒については一切教えていないのだが、勝手にやり始めていた3人。

 とことん酒好きのようだし、本能でお風呂×お酒の相性の良さを嗅ぎつけたのだと思う。

 お酌1杯ならまぁ大丈夫だとは思うけど、泥酔だけには気をつけて欲しい。


「温泉を完全に見くびっておったわ。最高に気持ちがええの」

「本当にな。俺はもうシャワーだけじゃ満足できないぜ」

「な! こっちじゃ冷水が普通だったって考えると、完全におかしいって思えるわ!」


 酒をちびちびと飲みながら、お風呂の良さについて語っている3人。

 温泉を造るに当たって、大事な3人がお風呂の素晴らしさに気づいてくれたみたいなのは非常に喜ばしい。


「気に入ってくれたみたいでよかったです。魔導のお風呂が素晴らしいお陰です」

「そりゃ俺が魔道具を設計したからな! 作ったのは俺じゃねぇけど!」

「んで、風呂を設計したのは俺だ。完璧なのは当たり前だが、想像以上に気持ちがいい」

「この調子で女性用のお風呂も作って頂けるとありがたいです」

「そりゃもちろん。俺達だけ、こんなに気持ち良い思いをするのは不公平だしな」

「それに湯上がりの美女も見れるってんだから、気合いはバッチリだぜ?」


 動機は相当不純だけど、やる気を出してくれているなら良かった。

 

「こうなってきますと、佐藤さんが言っていた温泉にも入ってみたくなりますね! あの白い煙がそうなんですもんね?」

「ですね。温泉は更にもう一段階気持ちが良いので、いつかは近辺に作ってみたいと思っています」

「もう一段階気持ちが良いってすげぇな! 俺も入ってみたいわ!」

「温泉作りには女性陣の協力も必要不可欠ですので、そういった意味でもお風呂を完成させて頂けるとありがたいです」

「おう。任せてくれ」

「もう作り方は分かっているから、完璧に作り上げてみせるぜ!」


 頼もしいロッゾさんとシッドさんの返事を聞きつつ、体を洗い終えた私も湯船に入ることにした。

 近くに自然の小川もあるし、いずれは温泉だけでなくサウナも作ってみたい。

 そんな夢を抱きながら、私は湯船に浸かる気持ちよさに身を委ねたのだった。



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