第132話 フルコースのおもてなし
これまで好評だったものをピックアップし、ヤトさんのご両親にお出しした。
副菜は枝豆コーン。メインはニンニクの利かせたうまトマハンバーグと、ふわとろオムレツ。
オムレツに関しては、ハンバーグのソースとの相性が抜群という理由で作らせてもらった。
一つ懸念点があるとしたら、ニンニクのせいで口臭が気になってしまう状態にさせてしまうことだけど……美味さのことを考えたら、安い代償だと勝手に思っている。
そして、デザートはクイーンニードルの蜜をかけたホットケーキに、バニラアイスを乗せた至極の一品。
野菜にハンバーグにオムレツを食べた後だと、ホットケーキが重くなるかと思うけど、この一品ならどれだけお腹いっぱいでも食べられる料理となっている。
それに、クリカラさんもティアさんもドラゴンだし、きっとペロリと食べてしまうはずだ。
「見たことのない色の料理ばかりだな。真っ赤な血のソースに黄色と緑のつぶつぶ。我は卵料理くらいしか見覚えがないが大丈夫なのか?」
「特に好評だったものを作りましたので、きっとお気に召していただけると思います。まずは枝豆コーンから食べてみてください」
「先ほどのミルクティーがとても美味しかったので、私は何一つ疑っていませんよ。それでは頂かせてもらいます」
躊躇しているクリカラさんに対し、ティアさんは躊躇なく枝豆コーンをすくって口の中に入れた。
シンプルな料理だけど、コーンの甘みと枝豆の塩っけがマッチしていて癖になる美味しい料理。
どうやらティアさんのお口に合ったようで、笑みを零している。
美味しそうに食べるティアさんを見て、クリカラさんも食べる決心がついたようで一口頬張った。
「――これも美味い……だとっ! 野菜なのに甘くて美味くて、手が止まらない!」
クリカラさんのお口にもあったようで、かきこむように食べてくれている。
「お次はメイン料理をお食べください。白いお米と一緒に食べるとより美味しく感じると思いますよ」
「今度は我が先に食べる! ――うんまぁ! ……な、なんなのだ! この旨みの爆弾はッ!」
枝豆コーンをかきこんだ流れで、うまトマハンバーグを頬張ったクリカラさんだったが、旨さのあまり固まってしまっている。
一発目からガツンと来る美味しさだし、これは絶対に気に入ってくれると思っていたから良かった。
「――ほ、本当に美味しいですね! 味わってはいけない旨味を感じている気さえします……!」
「ご飯との相性も良すぎて、食べる手が止まらないッ!」
「あー、待ってください。ソースをオムレツにかけると、更に美味しくなりますので」
「認めたくはないが、佐藤は天才だッ!」
クリカラさんはそう叫ぶと、オムレツとハンバーグ、そしてご飯を一気に食べてしまった。
精一杯お行儀よく食べようとしていたティアさんも、掻き込むように食べており、おもてなしは大成功だったと言える結果になった。
「……はぁー。お世辞とかではなく、生まれてきてから一番幸せな時間だったかもしれない」
「私もです。流石にヤトが生まれてきてくれた時のほうが幸せでしたが、匹敵する幸福感でしたね」
自分の子供が生まれてきた幸福感に匹敵するという、最大限の賛辞を受け、私も笑みを抑えられない。
日本の食材、そしてレシピを考えてくれた方に改めて感謝だ。
「褒めてくださり、ありがとうございます。ただ……まだ終わっていません。デザートが残っておりますので」
「な、んだと……! まだ我を楽しませてくれるというのか!」
「ヤトが通いたがる理由を体感させられていますね。私も通いたいぐらいですもん」
「すぐにお作りしますのでお待ちください」
見るからにワクワクしている2人にそう告げ、私は準備していたホットケーキの元を焼き上げていく。
ふわっふわになるように調整し、クイーンニードルの蜜とバニラアイスを乗せて完成。
「お待たせしました。ホットケーキになります」
「か、香りが抜群だな。今回は見た目も美味しそうだ」
「本当に良い香りですね。……あれ? これはミルクティーに入っていた蜜でしょうか?」
「よくお気づきになられましたね。同じ蜜を使っています」
「佐藤さんの前では大きな声で言えませんが、私も料理は作るんです。これは期待大ですね」
「早速食べさせてもらう」
ナイフとフォークを上手く使い、切り分けていく2人。
切った断面にも蜜とアイスが染み込み、見ている私も食べたくなってくる。
「――至極」
クリカラさんは一口食べて、そう言い残し、天井を向いて固まってしまった。
ティアさんもポロポロと涙を零しているようで、美味しいと感じてくれているようだけど少し怖くなってくる光景。
「…………感服致しました。佐藤さんにならば、ヤトを嫁がせても構いません」
ティアさんの突然の発言に固まる。
想定していた発言ではなく、次の言葉が出ない中、私は絶対に反対してくれるであろうクリカラさんに助けを求めて視線を向けた。
「……悔しいが異論はない!」
――くそぉ。この人は本当に使えない人だ。
こういうときこそ、大反対してくれないと困るというのに……!
「い、いえいえ! 滅相もありません! 私にヤトさんは釣り合いませんし、そういった関係でもございませんので」
「なに……? 佐藤はヤトでは不満というのか!」
「いえいえ! そういうことではなく……!」
そこから、クリカラさんとティアさんに落ち着いてもらうまでかなり時間を説得に要した。
それほど喜んでもらえたということだろうけど、あまりにもぶっ飛び過ぎていて本気で焦ったなぁ。
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