第131話 親バカ
クリカラさんだけでなく、ティアさんも喜んでくれたようで、あっという間に飲み干してしまった。
掴みとしては大成功のようで、非常に満足気な表情を見せてくれている。
「佐藤さん、とても美味しかったです。ありがとうございますね」
「間違いなく、我が飲んだ飲み物の中で一番美味しかった! おかわりが飲みたい!」
「あなた、我儘は駄目ですよ」
「いえいえ。まだありますので、おかわりを持ってきます。少しアレンジを加える予定なのですが、ティアさんもいかがですか?」
「あ、アレンジ……。そういうことであれば、私も頂いていいかしら?」
「もちろんです」
ということで、先ほどの一般的なミルクティーとは異なり、今回はクイーンニードルの蜜を加えたアレンジミルクティーをお出しすることにした。
先ほど以上の甘さと香り、それからコクもあるミルクティーを飲み、今度は感動を覚えている様子のクリカラさんとティアさん。
まだ何の話もできていないけど、ヤトさんがここに通いたいと思う理由については理解してもらうことができたと思う。
食で説得するという荒業だけど、これが一番手っ取り早い方法だからね。
「我の一番があっという間に更新された――だとッ!? 佐藤は飲み物を作るプロなのか?」
「そんなことはありませんよ。クリカラさんでも作れると思いますので」
「あんな甘み、香り、コクが上品に、そして繊細に織りなしている飲み物を我でも作れるのか!?」
「ええ。確実に作れます」
「な、なるほど……。ヤトやアシュロスが熱弁していた理由を、悔しいが分からされた」
「そうですね。龍の里のどんなものよりも美味しいです。ヤトがここに来たがる理由が分かりました」
目論見通り、クリカラさんもティアさんも納得してくれた。
私は胸を撫で下ろしつつ、更に話を伺うことにした。
「今回は心配でやってきたという感じですよね? 私はヤトさんを利用してやろうなんて気持ちは一切ありませんし、危険に晒すつもりもありませんので、どうか安心してくださると幸いです。もちろん、まだ信じられないとは思いますが」
「いえ、私は信じておりますよ。先ほど働いているところも見させて頂きましたが、ヤトがあそこまで楽しそうに何かに打ち込んでいる姿は初めて見ましたので。それに龍の里でも、ここに来るために色々なことをこなすようになりましたし……何より佐藤さんの目を見て、信頼できる方だと確信しております」
ティアさんからの嬉しすぎる一言。
クリカラさんのことも常に止めてくださっていたし、笑顔が素敵な本当に良い人だ。
「我はまだ信用していないが、まぁヤトが佐藤に利用されることはないという安心はしている。佐藤、おぬし弱いだろう?」
「お恥ずかしいですが、そうですね。人間の子供とどっこいどっこいだと鑑定結果が出ています」
「はっはっは! やはりな! ヤトは強い男を好むため、その辺りの心配もいらない。そして、ここに来る目的が美味しい飲み物だと分かった今、警戒する必要はなくなったと判断した」
ティアさんと比べ、私にとっては悲しい理由のオンパレードだったけど、とにかくクリカラさんも警戒を解いてくれた様子。
「ありがとうございますが正しいのか分かりませんが、警戒を解いてくださりありがとうございます」
「正しくないですよ! 佐藤さん、この人にはガツンと言ってくださっていいですからね?」
「流石に言えませんよ。それに、クリカラさんもヤトさんが心配で心配で仕方ない上での行動だったと、重々承知しておりますので」
「ふふ、佐藤さんはよくお分かりで」
「むむっ! おい、佐藤にティア! その微笑ましい顔で我を見るな! 別に心配で取った行動なんかではない!」
厳ついおじさんの赤面は誰得という感じてはあるけど、非常に可愛らしく赤面しているクリカラさん。
恥ずかしくなったのか、両手で顔を隠し始めてしまった。
「子を心配するなんて当たり前ですから、恥ずかしがることないですよ」
「別に恥ずかしがってなどいない!」
「ふふふ、佐藤さんは面白い方ですね。出会った中で一番といっていいほど力を感じない方ですが、主人相手に一番堂々と接していた方でしたよ」
「それは……大丈夫なことなんですかね? クリカラさんから、後で仕返しとかは……?」
「後で殴る!」
「絶対にさせませんので安心してください。まぁ主人も口だけだと思いますが」
「口だけなら良かったです」
ヤトさんのご両親は非常にいい夫婦だなぁ。
家出をしたとのことだったし、毒親の可能性も考えていたけど、ヤトさんが愛されていることが分かって安心した。
「とりあえず……ヤトさんがたまに遊びに来ることを理解してくれたようですし、私の方からおもてなしをさせて頂きますね」
「おもてなし……ですか? ミルクティーではなくでしょうか?」
「はい。ミルクティーは接茶でしかありませんので。クリカラさんは美味しい飲み物目的でヤトさんが来ていると仰っておりましたが、飲み物はあくまでもオマケです」
「ミルクティーがオマケ……だと!? こ、ここにはまだ美味しいものがあるというのか?」
「ええ。今からお作りしますので、少々お待ちください」
「お、恐ろしい!」
ムンクの叫びのようになっているクリカラさんに笑いつつ、私は台所に向かった。
やはりヤトさんのお父さんなだけあり、表情が豊かで面白い。
何となく話は既にまとまった感じがあるけど、ここからが本番といってもいい。
美味しい日本の料理で、お二人を更に虜にするとしよう。
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