第127話 ベルベットさんの本題
ゲームでしばらく遊んでからは、みんなで夕食を取った。
久しぶりにベルベットさんが来たということで、日本の料理を振る舞うことにした。
ロッゾさんやルーアさん達も呼び、みんなでワイワイした後、私はベルベットさんとリビングに残り、話を聞くことにした。
ちなみにシーラさんとヘレナは娯楽部屋に行っており、日課のスマブラ対決に勤しんでいるため、今は内緒話を行うことができる。
「ようやく夕食後の時間ですね。別件のお話を聞きたいところですが、まずは新作の漫画からでしょうか?」
「ええ。シーラ達が戻ってくる前に、漫画だけは見せておきたいからね。先に見てもらうわ」
ということで、私はベルベットさんから新作の漫画を受け取った。
もうパッと見から、前作よりも数段レベルアップしているのが分かる。
書き込みが凄まじく、この間プレゼントしたペン先を活用してくれているらしい。
今はデジタルが主流らしいけど、このインクの香る原稿は読む前から凄くワクワクする。
私は一息ついてから、ベルベットさん作の漫画を読み始める。
ページ数は20枚ほどであり、今回も短い話でまとめてくれたようだ。
内容は前作と打って変わり、魔物の生贄にされた女性が主人公のお話。
村の代表として魔物の生贄にされたところから始まり、あの手この手を使って魔物から逃げるというアクションコメディー漫画。
ここが魔物の跋扈する世界ということもあり、魔物の書き込みがとにかく凄まじいの一言。
逃げるためのあの手この手も異世界の人だからこそ考えつく感じであり、思わず関心してしまう物語となっていた。
主人公も、一休さん並みにトンチが効くだけで特別な力を持っていないため、ハラハラの塩梅が絶妙。
前作が褒められながらも、大きく舵を取ってこの作品を描けるのだから、やはりベルベットさんには才能があると思う。
「……めちゃくちゃ面白かったです! やっぱりベルベットさんは天才ですよ!」
「そ、そう? 面白いと言ってくれたなら良かった」
「面白いではなくて、めちゃくちゃ面白い――です! 全くの別ジャンルも描けるなんて凄いですね!」
「魔物に支配されている村が、生贄を捧げる――なんてよくある話だけどね。でも……佐藤が面白いって言ってくれて安心した」
「めちゃくちゃ面白いだけでなく、絵も凄く上達していました! この魔物の書き込みは素晴らしいです! 見開きを使って圧倒するなんて、そうできるものじゃないです!」
「そこもこだわったところだから、気に入ってくれたなら良かったわ。それじゃ返して」
私の熱に反し、ベルベットさんは冷静な感じを装っているけど……目尻は下がりながら、口角が上がりきっている。
表情精査はしない方が良いと思うけど、私の素直な評価に喜んでくれているみたいだ。
「素晴らしい作品ですから、やっぱり娯楽部屋に置きましょうよ。私だけしか読めないのは勿体ないです」
「…………駄目! まだ恥ずかしい!」
ベルベットさんはそう言うと、持ってきた漫画の原稿をカバンの中に閉まってしまった。
ただ、少し考えていた間が合ったし、もう何作か描いて自信が出てきたら置いてくれるようになりそうな感じがある。
「本当に面白いんですけどねぇ……。みんなもきっと絶賛してくれると思いますよ?」
「駄目なものは駄目! ということで、本題に入るから! 私が今回来たのは漫画を見せるためじゃなくて、美味しい食材を見つけたからなの」
「美味しい食材ですか? それはこの世界でってことでしょうか?」
「ええ、そうよ」
漫画の件をもう少しプッシュしたかったけど、こっちの話題も非常に気になってしまう。
以前から美味しい食材を発掘すると言っていたし、とうとう見つかったということなのか。
「それは流石に気になりますね。その美味しい食材とはなんでしょうか?」
「この瓶の中に入っているわ。蜜なんだけど、少し舐めてくれる?」
渡されたのは蜜の詰まった小瓶。
蜂蜜に近い感じがするけど、確かに蜂蜜よりも色が濃くて香りも強い。
私はスプーンを取り、軽くすくって舐めてみた。
「――美味しいです! 香りが良くて甘みも強い。雑味はありますが、その雑味も良いアクセントになっていますね!」
「そうでしょ!? 後から言ったら怒るかもしれないけど、その蜜は魔物が集めた蜜なの」
「怒る……の意味は分かりませんが、魔物の蜜は興味深いです。何の魔物の蜜ですか?」
「クイーンニードルの蜜よ。佐藤は魔物の蜜に抵抗感はないのかしら?」
「特にはありませんね。この世界では魔物を食べるのは禁忌なんですか?」
「あまり良くは思われていないわね。魔物は襲ってくるものだし、精神的に無理という人が大半だと思うわ」
なるほどなぁ。日本で言う昆虫食みたいなものかもしれない。
美味しいのかもしれないけど、見た目が嫌だみたいなのがありそうだ。
「へぇー、初めて知ったかもしれません。ちなみにクイーンニードルはどんな魔物なんですか?」
「王都から西に進んでいったところにある、『バブルフォレスト』ってところに生息している魔物。大きな蜂の魔物って感じの見た目」
「大きな蜂って怖そうですね。ベルベットさんが、そのクイーンニードルから採取したんですか?」
「私じゃなくて、珍味ハンターっていう職業の方から頂いたの。数多の魔物を食べている変な人なんだけど、このクイーンニードルの蜜は抜群に美味しかったのよ」
魔物を使ったグルメは割と鉄板な感じがしちゃうけど、この世界では珍味ハンター呼ばわりされてしまうのか。
まぁでも、日本で言う昆虫を専門に食べる人って考えたら……確かに珍味ハンターかもしれない。
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