第126話 オタク気質
ゴブリン部隊が手伝いを初めてから、2週間が経過した。
収穫作業を手伝ってくれるというのは本当に大きく、モージとヘレナが魔法で水やりと土いじりをこなし、収穫作業はゴブリン部隊とポーシャさん、ロイスさん。
私とシーラさんとマッシュは種植えという分担作業を行うことができている。
不定期参加のジョエル君とルーアさんは、手が足りていないところの助っ人に入ってもらうことで、お昼頃には1日の作業が終わるようになった。
週1で休めるようになっただけでなく、お昼には全ての作業が終わるため、非常にホワイトな職場。
そもそも農作業自体が楽しいし、今のところ最高の環境にすることができていると思う。
一仕事終え、そんなことを考えながらお昼ご飯のおにぎりを食べていると……。
豪華絢爛な馬車がやってくるのが見えた。
あの馬車は確実にベルベットさんであり、久しぶりの来訪。
もしかしたら新作の漫画が完成したのかもしれない。
私はワクワクしつつ、ベルベットさんを迎えに行くことにした。
「ベルベットさん、お久しぶりです」
「佐藤、久しぶりね」
「あれ……? 今日はドニーさんと一緒じゃないんですね」
ドニーさんとはいつもセットの印象だったのだが、どうやら今日はベルベットさんだけのようだ。
まぁドニーさんは日々のランニングがてら、頻繁に顔を出してはジョエル君に指導しているため、いなくて残念とかはないんだけどね。
「ドニーは蓮達のパーティに一時加わっているのよ。こっちに来たがっていたけど、流石に止めたわ」
「へぇ! 蓮さん達と一緒に動いているんですか。指導的なことですか?」
「そうみたい。佐藤のお陰で今が強さの全盛期でありながら、ベテラン冒険者だからね。色々と教えているみたい」
それは知らなかった。
模擬戦大会で優勝した蓮さんがエキシビションマッチで負けたし、一対一での戦いでも学ぶことがたくさんあることを考えると、更なる成長が見込めると思う。
……というか、蓮さん達は模擬戦大会以降、こっちに顔を見せていないから久しぶりに会いたくなってきた。
とにかく、元気でやっている報告を聞けたのは良かったな。
「そう考えると、ドニーさんほど指導者に向いている人はいませんもんね」
「そういうこと。だから、今日は私1人で来たわ。こっちも結構変わっているようだし、色々と教えてちょうだい。私も報告したいことがあるから」
「報告したいこと? 新作の漫画でしょうか?」
「ちょっと声が大きい! ……それもあるけど、別件で報告したいことがあるの」
「すみません。その別件での報告とはなんでしょうか?」
「それは夜ご飯を食べた後で。まずはそっちのことを教えなさい」
ということで、まずはこちらの近況をベルベットさんに教えることになった。
まずは畑を大きくしたこと、それからヘレナとゴブリン軍団が増えたことの報告。
そして何と言っても、娯楽部屋の紹介が一番大事だろう。
娯楽部屋の構想自体は伝えてあったけど、実際に見せるのは今日が初めてのため、反応が非常に楽しみ。
「うっわぁ! 凄い漫画の数じゃない! 新たに増やしたの!?」
「そうです。ワンピースの続きと、ハンターハンターという漫画ですね」
「よ、読みたい! 読んでもいいわよね!?」
「構いませんが、読むのはお互いの報告が終わってからにしましょう」
「えぇー! さっきは勿体ぶったけど、今は適当に報告したくなってきた!」
「駄目ですよ。ベルベットさんの漫画もゆっくり読みたいですし、最後まで勿体ぶってください」
「た、確かに……。この漫画を読んだら、佐藤に漫画を見せるのが怖くなりそうだから、今読むのは止めておくわ」
止めるに至った理由が変すぎるけど、この場で読むのは止めてくれたようだ。
それから漫画だけでなく、ゲームの紹介もしたいため、私はそのままSwitchを起動する。
「すっごい! なにこれ!」
「ゲームですね。前にやったのはボードゲームで、こちらはテレビゲームになります」
「これが同じゲームなの!? 全く違うように見えるけど!」
「遊ぶということでは同じなので、少し遊んでみますか?」
「やりたいわ!」
ということで、操作説明をしてからベルベットさんにゲームをプレイさせた。
夢中になって遊んでくれ、漫画と同等の熱量で色々な考察をしているベルベットさん。
あまり思わないようにしていたけど、ベルベットさんはかなりのオタク気質。
私も同じ気質を持っているので、一緒にいて非常に居心地がいい。
「流石は飲み込みが早いですね。絵も上手でしたし、ベルベットさんは手先が器用ですよね」
「裁縫とかも得意だし、そうかもしれない。まさか漫画を描いたり、ゲームしたりで活かされるとは思っていなかったけど……器用で良かったわ。佐藤、ありがとね」
「えっ? 器用なのはベルベットさんの力と才能だと思いますよ?」
「佐藤と出会えていなかったら、器用で良かったなんて思わなかったと思うから。そのお礼」
ベルベットさんからの何気ない感謝に、少し胸が熱くなるのを感じる。
出会ったときはツンツンしていて、感謝するような感じではなかったからなぁ。
親のような目線で成長を喜びながら、私はベルベットさんがゲームを楽しんでいるのを眺めたのだった。
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