第123話 ヘレナ
ヘレナを従魔にした翌日。
誰よりも早く起きて、ヘレナが私とシーラさんの朝食の準備をしてくれた様子。
エプロン姿も似合っており、非常に可愛らしい。
そんな感想が表情に出ていたのか、シーラさんにジト目で睨まれつつも、席に着いて朝ご飯を食べることにした。
「朝ごはんを作ってくれて、ありがとうございます。ご飯を作る知識はあったのですか?」
「はい、マスター。ハイシルフも人間と同じようにご飯を食べますので、簡単なものであれば作ることができます」
「匂いは……悪くないですね」
私が購入してから、どういった形で従魔になるのかが気になった返答だけど……今はそれよりも朝食。
形の変な卵焼きに、少しだけ焦げたベーコン。
シーラさんや私の作る朝食と比べると、少しだけ不格好ではあるけど、不味そうという感じではない。
良い香りもしているし、この世界の食材じゃなければ抜群に美味しい仕上がりになっていたであろう料理。
「それじゃいただきます」
「どうぞ、お召し上がりください!」
食前の挨拶を行ってから、勢いよく口に入れたのだが……。
見た目や匂いに反して、非常に美味しくない。
「あっ、駄目です。美味しくないです!」
「えっ!? ……もぐもぐ。普通に美味しいですけど……シーラさんの舌がおかしいのではないでしょうか?」
不味いと言ってのけたシーラに対し、少しムッとした表情で言い返したヘレナ。
2人は息を合わせたように、感想を求めて私の方を向いた。
「た、食べれないことはないかもしれません」
「……がーん。私の料理って美味しくなかったのですか!?」
精一杯の配慮をして伝えたのだが、ヘレナはショックを受けてしまった様子。
料理が大好きで私と出会う前から腕の良かったシーラさんと、食に恵まれている日本で1人暮らしが長かった私とを比べてしまうのは可哀想だけど……味に関しては数段劣っているのも事実。
「明日からはこれまで通り、私と佐藤さんでお作りします。ヘレナは食べる側に回ってください」
「は、早くも私は戦力外ということですか!? お、お願いします。もう一度だけチャンスを頂けないでしょうか?」
「ヘレナにやる気があるとのことですし、私とシーラさんで料理を教えるというのはどうでしょうか? シーラさんがよろしければですが」
「むむ、私は構いません。ただし、料理に関しては少し厳しいですよ?」
「マスター、シーラさん! よろしくお願い致します!」
ということで、明日からヘレナに料理を教えることとなった。
何でもできそうな美人のお姉さんといった雰囲気だったけど、早速イメージが崩れた印象。
何でもできそうで何にもできなかったとしても、そのギャップが良いと私は思うし、楽しければ何でもいいだろう。
それに昨日、シーラさんとヘレナは若干険悪なムードだったから、料理を一緒に作る過程で少しでも仲良くなってくれたら嬉しい。
そんなことを考えながら、私達は少し美味しくない朝食を頂いた後、ヘレナに仕事内容を教えながら農作業を行ったのだった。
――就業後。
微妙な朝食から、ヘレナがちゃんと働くことができるのかも心配だったけど、農作業に関しては素晴らしい活躍を見せてくれた。
ハイシルフなだけあり、モージと同じく四元素の魔法を使いこなせるだけでなく、光と闇の魔法まで扱えるとのこと。
光と闇の魔法は今のところ農業で使い道がなさそうだけど、ダンジョン攻略ではシーラさんに匹敵する活躍を見せてくれるかもしれない。
それからモージの欠点である魔力量に関しても問題なく、モージとヘレナがいれば、今ある畑の全面を水やりすることができ、更に開墾や土いじりも問題なく行える。
私達の作業は実質的に種まきと収穫だけとなり、従魔達のお陰で作業量が少なくなった。
こうなってくると、そろそろ3つ目の畑を作ってもいい気がしてきている。
今はスキルの畑でNPのための作物を育て、ルーアさん達の畑で食べるための日本の作物と、お金に換えるためのこの世界の作物を育てている。
ルーアさん達の畑を2つにし、1つは食用の作物を育てる畑。
もう1つをお金に換えるための作物を育てる畑にしてもいいかもしれない。
ヘレナのお陰でせっかく作業量が減ったのに、また作業を増やすような案だけど……。
私は1つ策を思いついている。
その策というのは――安い従魔を大量に購入するということ。
ここまでは量より質を重視して従魔を購入してきたが、ここからは収穫と種まきができそうな魔物を大量に購入する作戦に出たいと思っている。
3つ目の畑をその魔物達に任せることができれば、全て上手くいくからね。
ということで、昨日ヘレナを従魔にしたばかりだけど、新しい魔物を購入しようと思う。
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