第117話 冒険談
再び遊びに来たヤトさん達が帰ってから、約2週間が経過。
ヤトさんが想像以上に騒がしかったということもあり、かなり静かに感じている。
少し寂しい気もするけど、のんびり静かな時間を過ごすのも非常に楽しい。
そんなことを考えながら、ブライトボイスの収穫をしていると……疲労困憊といった様子のルーアさん達が戻ってきた。
全員の服がボロボロで、ブリタニーさんに至っては傷だらけ。
ただ、3人共に晴れやかな表情をしている。
「ルーアさん、ブリタニーさん、ジョエル君。戻ってきたんですね。随分とボロボロですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないね。アタシは左手の小指と中指が折れているよ」
「僕は右手首を捻挫しています!」
「私は何ともないが、盾が完全に壊れてしまったな」
「本当にボロボロじゃないですか。ただ……表情は明るいですね」
見た目だけじゃなく体もボロボロといった感じだけど、非常に楽しそうに見えるのが不思議でたまらない。
「分かってしまいますか!? ほんっとうに大変だったんですけど、ほんっとうに楽しかったんです!」
「アタシも長いこと冒険者をやっていたけど、今回がダントツで面白かったね」
「私も同じ意見だな。誘われるがまま冒険者をやってみることにしたが、やって良かったと心の底から思っている」
何があったのか分からないけど、とにかく楽しかったということだけは伝わってくる。
ここまで楽しそうにされると……羨ましく思ってしまう。
「そこまで面白かったんですか。色々とお話が聞きたいところですが……とりあえずゆっくりしてください。今日の夜は私がご飯を作りますので、それまで体を休ませてください」
「佐藤さん、ありがとうございます! 帰ってきてから、佐藤さんのご飯が食べられるなんて幸せすぎます!」
「本当にそう思うよ。何があったかは食事の時に教えるから、楽しみにしておいてくれ」
「はい。楽しみに待っています」
家へと帰っていく3人を見送ってから、私は収穫の続きを行うことにした。
何があったのかを聞くのを楽しみにしつつ、今日の献立を考えながら仕事をしよう。
――その日の夜。
家に帰ってからすぐに眠ったようで、3人共に寝起きの顔。
起きてすぐにご飯が食べられるのか心配だったけど……。
目の前にご飯が置かれるや否や、一瞬で目が冴えた様子。
今日の夜ご飯は天ぷら。
ルーアさん達の畑で野菜が収穫できたため、様々な野菜をカラッと揚げてみた。
それからうどんと海老をNPを使って購入したため、天ぷらうどんにして食べるつもり。
冒険帰りだし、ガッツリ系も考えたんだけど……採れたての野菜を使いたかったため、天ぷらにさせてもらった。
「はぁー……美味しいです! 揚げ物って本当に美味しいですね! レパートリーの豊富さには惚れ惚れします!」
シーラさんが大絶賛してくれている中、ルーアさん達は顔パンパンに詰めこむように食べている。
旅先で食べられるものなんて知られているし、そもそもこの世界の食材は美味しくない。
そんな中で2週間過ごした後の日本料理は、格別に美味しく感じているんだと思う。
私は美味しそうに食べてくれているみんなを見ながら、ゆっくりと天ぷらうどんを食べた。
「はぁー……本当に美味しかったね。ご飯を食べながら話すってことだったのに、無言で食べてしまったよ」
「黙々と食べてしまいましたね! それでは今から何があったかを僕が話します!」
「ぜひ聞かせてください」
ということで、3人から冒険について聞くことになった。
あれだけ満足そうな表情だったし、何かしらの成果を挙げているだろうから非常に楽しみ。
「僕たちはまず、白い煙の正体を突き止めるべく、国境付近を目指したんです!」
「国境まではすんなり行けたのだが、私の記憶が曖昧だったこともあって、国境から結構迷ってしまった」
「ルーアの明確な弱点は方向音痴なところだね。お陰で同じところをぐるぐると移動させられたよ」
「本当にすまないな。ただ、ブリタニーの案内もあって、無事に白い煙のところに辿り着くことができた」
「ということは、白い煙の正体を突き止めたんですか?」
「はい! ただ……白い煙の正体はお湯でした」
残念といった表情だけど、お湯ってことは天然の温泉ってこと。
日本人として、温泉にはめちゃくちゃ入りたい!
「凄いです! そのお湯には入りましたか?」
「ん? 触れはしたが、流石に入ってはないな」
「匂いも独特で飲めそうにもなかったんですよ! ただ、白い煙の正体を突き止めた後が面白かったんです!」
その後、温泉近くを縄張りにしていたバトルエイプ、そのボスのバトルコングなる魔物との激戦、そしてバトルコングが隠し持っていた数々のお宝を手に入れたみたいなんだけど……。
私の頭はすっかりと温泉に支配され、楽しそうに話してくれたジョエル君には申し訳ないが、話半分でしか聞くことができなかったのだった。
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