第114話 見間違い?
ヤトさんを助けた翌日。
朝食を済まし、軽く伸びをしながら外へ出てきたんだけど……畑の奥の平原でクロウと戯れているヤトさんが見え、思わず体が固まってしまう。
「佐藤さん、立ち止まってどうしたんですか?」
「いえ、ヤトさんが見える気がして……私の気のせいじゃないですよね?」
「……気のせいではありませんね。クロウと遊んでいるヤトさんが、私にもしっかり見えています」
やはり気のせいではなかったようだ。
確かにすぐに来るとは言っていたけど、まさか昨日の今日でやってくるとは思ってもいなかった。
いや、帰り道が分からなかったから戻ってくれば一緒に探すと伝えてあったから、もしかしたら戻ることができなかったのかもしれない。
……でも、それにしては見知らぬ人がいるんだよなぁ。
「あっ、佐藤なのじゃ! アシュロス、あの者がわらわを助けてくれた佐藤とシーラじゃ」
別荘から出てきた私とシーラさんに気がついたヤトさんは、満面の笑みでこちらにやってきた。
昨日のドラゴンの姿や、ヤトさんの年齢、色々と気になることはあるけど、やっぱり一番気になるのは……。
「ヤトさん、おはようございます。いきなり質問させて頂きますが、昨日の今日で何故ここにいるのですか? 帰れなかったという訳ではないですよね?」
「うぬ? 佐藤のお陰で無事に帰ることはできたぞ! わらわもしばらく来れないと思っていたのじゃが、アシュロスが佐藤にお礼がしたいと言ったから連れてきたのじゃ!」
ヤトさんのそんな説明を受けてから、アシュロスと呼ばれていた人が私の前へと出てきた。
綺麗な赤髪のスラッとした女性で、黒いスーツのようなものを着ている。
最初はヤトさんのお母さんかと思ったけど、どうやらそんな感じではなさそう。
ドニーさんのような護衛の方だろうか。
「はじめまして、私はヤト様の従者をさせて頂いております。アシュロスと申します。この度はヤト様をお助け頂き、本当にありがとうございました」
「いえいえ、気になさらないでください。クロウが助けただけで、私達は軽い手当てしかしていませんので」
この世界の人にしては、驚くほどに丁寧な方。
今、まさに頭を下げてくださっているのだけど、直角90度過ぎてこちらが申し訳なくなってくる。
「ヤト様が仰っていた通り、あなた様がお優しい人間で本当に良かったです。お詫びの品と言ったら申し訳ないのですが、どうぞこちらを受け取ってください」
そう言ってアシュロスさんが差し出してきたのは、見るからに凄まじい赤い宝玉。
宝玉の中は何か分からないけど、ギュルンギュルンと力のようなものが渦巻いており、何かの瞳のようにも見える。
私は物の凄さも価値も分からないけど、とにかくこの宝玉がヤバいことだけは分かる。
私なんかが絶対に受け取ってはいけない品だ。
「そんな宝玉を受け取ることなんてできません! 私は何かを貰うために、ヤトさんを助けた訳ではありませんので」
「遠慮せずに受け取るのじゃ! わらわと佐藤は友達じゃろう? 友達なら受け取るのじゃ」
「友達だから受け取れないんです。友達が困っていたら助けるのが普通ですから。対価を受け取るなんてありえません」
「よく分からないのじゃが、友達とはそういうものなのか?」
「はい。ヤトさんが困っていたら、私はいつでも助けます。ですので、ヤトさんも私が困った時に助けてください。損得勘定なしで動くのが友達というものです!」
「うぬ! ふふふ、友達とは良いものじゃな!」
この説明でヤトさんは、大満足といった様子で喜んでいる。
アシュロスさんは首を傾げたまま、よくわかっていない様子であったけど、赤い宝玉を懐に戻してくれた。
ふぅー……。なんとか受け取らずに済んで良かった。
一般人が手にしてはいけない臭いがプンプンとしていたもんなぁ。
とりあえずヤトさんは喜んでくれているし、私も宝玉を断ることができて満足。
少しだけ騙した感覚もあるけどwin-winだし、良しとしよう。
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