第110話 シーラの反応
シーラさんはリビングのソファで、ライムと一緒にダラダラとしていた。
どうやらひんやりモチモチのライムの上に乗りながら、ワンピースを読み直していたみたいでタイミングばっちり。
「シーラさん、異世界の娯楽アイテムの購入が終わりました。忙しくないようでしたら今から見に行きませんか?」
「本当ですか? もう何回読んだかも覚えていない10巻目でしたし、全く忙しくありません。ぜひ紹介してください!」
「もちろんです。それじゃ行きましょうか」
ライムからゆっくりと降りると、ノリノリで返事をしてくれた。
読み直していたところに追加で50巻分も増えたとなったら、きっと喜んでくれるはず。
ワンピース、ハンターハンター共に、内容もいいところまで収録されているし……。
ベルベットさんに続いて、シーラさんも漫画の沼にハマってしまうかもしれない。
「……佐藤さん、随分と楽しそうにしていますね。そんなに良いものが買えたのですか?」
「はい。シーラさんもきっと喜んでくれると思います」
どうやらまたニヤニヤしてしまったようで、シーラさんが微笑ましいといった顔で私を見ている。
日本にいた頃は、こんなに表情に出ることはなかったはずなんだけどなぁ。
まぁ日本には友達と言える人もいなかったし、こっちの世界に来てから感じる楽しいって感情も少なかった。
わざわざ30倍の額を支払っていることもあって、充実具合では日本に遠く及んでいない現状だけど、周りの人々のお陰で100倍くらいは楽しく生活させてもらっている。
漫画やゲームで遊ぶことも楽しみだけど、どちらかといえばシーラさん達がどんな反応を見せるのかの方が楽しみ。
そんなことを考えながら、私とシーラさんは別荘を出て、隣の家の娯楽部屋へと向かった。
「おおー! 漫画がズラリと並んでいます! もしかして、私が読んでいた漫画の続きですか?」
「はい。この際なので、50巻分追加してみました」
「一気に50巻……! こ、これ……眠れる気がしないのですが、大丈夫でしょうか?」
「いえ、絶対に寝てください! ここにずっと置いておくつもりですし、一日数冊と決めて読むのが絶対にいいです」
一気読みしたくなる気持ちはよく分かるけど、健康面を考えると徹夜はしない方がいい。
睡眠の大事さは、元社畜だった私はよく知っている。
「むぅー……。全部読みたいですけど、漫画が逃げることはありませんもんね。数週間かけて大事に読むことにします」
「そうしてくれると私も助かります。それに、漫画だけでなくゲームも購入しました」
「ゲームですか? よく遊ぶボードゲームとは違うものですか?」
「ボードゲームも増やしましたが、今回はテレビゲームというものを購入しました。……少しだけやりますか?」
「是非やらせてください!」
テンションの高いシーラさんに、私は購入したスイッチを手渡す。
渡されたはいいものの、使い方が分からないシーラさんは可愛らしく小首を傾げている。
「この上部部分を押すと電源が入ります」
「わっ! 映りました! 可愛らしいキャラがぬるぬる動いてます!」
「左側で操作をしながら、右側の4つのボタンで入力するんです」
「ほー! あ、あれ……? か、かなり難しいですね」
操作には慣れていないようで、かなりたどたどしい感じ。
ボードゲームは無類の強さを誇るシーラさんだけど、テレビゲームは慣れていないこともあって操作がおぼついていない。
「これは対戦ゲームでして、相手を場外に飛ばしたら勝ちになります。円から出たら駄目な模擬戦だと思っていただければ分かりやすいかと」
「なるほど。攻撃を食らうと自分のダメージが増えていき、逆に攻撃を当てると相手のダメージが増えていくんですね!」
「そうです。ダメージが大きいと、攻撃を受けた時に吹っ飛びやすくなるって感じですね」
「これは得意だと思います! 完勝してみせます!」
そう意気込んでいたシーラさんだったけど、CPUレベル1の相手と激闘を繰り広げた末、何とか勝利をもぎ取ることができた。
正直、負ける方が難しい相手ではあるんだけど……凄く嬉しそうにしているし、褒めてあげよう。
「おー! 初めてやったのに、勝っちゃうなんて凄いですよ」
「――これ凄く面白いです! 自分で戦えたら楽なのにっていうモヤモヤはありますけど、キャラの技が豊富ですし夢中になります! ゲームの仕組みも皆目見当もつきませんし、本当に異世界って凄い技術を持っていますね」
「面白いと思ってくれたなら良かったです。ゲームの技術については私もさっぱり分からないので、シーラさんと全く一緒の感想ですね。本当に凄い技術だと思います」
「こんな小さくて、こんなに綺麗に映るんですもんね。漫画も衝撃でしたけど、このテレビゲームにはもっと衝撃を受けました!」
シーラさんは気に入ってくれたようで、それから何戦かCPU戦を行った。
本当は一緒に対戦もしたかったんだけど、小さい頃からゲームに慣れている私とシーラさんでは相手にならないため、操作に慣れるまでは対戦できなさそう。
マリオパーティならワンチャン勝負になるかもしれないけど……。
とりあえず今日は時間もないし、別日にじっくりやるとしよう。
「今回購入したのはこんな感じですね。今日はもう遅いですし、また明日にでもじっくりと漫画を読むなり、ゲームをするなりしましょう」
「本当は今からゲームもしたいですし、漫画も読みたいです。王城に居た頃は一日が長く感じたのですが、ここに来てからは一日の短さに驚くばかりです。その上で、こんな娯楽まで増えたら……体を分身させるしかありませんね!」
真面目な顔で訳の分からないことを言っているシーラさんに笑いつつ、今日のところは別荘に戻って寝ることにした。
気に入ってくれたのは何よりだし、私と同じようにシーラさんがここでの生活を楽しんでくれていることが何より嬉しい。
もっと楽しいと思ってもらえるよう、私のスキルでドンドン充実させていけたらいいな。
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