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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第3章

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第107話 自作の漫画


 その日の夜――。

 シーラさんがお風呂に入っている間、ベルベットさんが自作の漫画を持ってきた。

 見せるといったものの実際に見せるとなると恥ずかしいようで、描いた漫画を背中に隠しながらモジモジとしている。


「あの……早く見せてくれないと、シーラさんがお風呂から出てしまいますよ?」

「分かってるわよ! いざ人に見せるってなったら心臓が痛くなるの!」

「絶対に馬鹿にはしませんし、口外もしませんので安心してください」

「……絶対に、ぜーったいに他の人には見せないでね」

「分かっています」

「それじゃ――はい」


 覚悟を決めたのか、合計10枚ほどの紙を差し出してきたベルベットさん。

 受け取ろうとしたのだけど……私が掴んでも離そうとはしない。

 引くのか、それとも無理やりにでも取るのか悩んだ結果、私は力を強めて奪うように受け取った。


「あぁ……!」


 自作の漫画を渡したベルベットさんは両手で顔を覆っており、本気で恥ずかしそうにしているのが耳が真っ赤なことからも分かる。

 何だか読むのを躊躇いそうになるけど、ここで読まないのは逆に生殺しにすることになってしまう。


 そう思って、私はベルベットさん作の漫画を読み始めた。

 少女漫画をプレゼントしているため、内容は恋愛モノかと思っていたけど……違った。


 恐らくだけどベルベットさん自身をモデルにした作品で、喜怒哀楽の怒と哀しか知らない王女様が、自分だけの狭い世界から飛び出して色々なものに触れるお話。

 そんな王女様を連れ出すのが行商人なんだけど、この行商人のモチーフが明らかに私。


 読んでいて少し恥ずかしくなったが、広い世界に触れることで喜と楽の感情を手に入れるというのが、ベルベットさんも感じていたのだとしたら……決して悪い気はしない。

 10ページと短いながらも、起承転結がしっかりしていたし、初めての作品にしては完成度が非常に高い。

 絵も上手だし、漫画というよりかは絵本のような感じではあるけど、素晴らしい漫画だと素直に私はそう思えた。


「ベルベットさん、凄く面白いですよ! 絵も上手ですし、初めて描いたものとは思えない完成度だと思いました」

「ほ、本当……? 変な気遣いとかいらないから、素直な意見を言ってよ?」

「本当に面白いと思いました。起承転結がちゃんとしていますし、短いながらも物語としてのクオリティが高いです。絵も想像以上に上手いですね」

「……嘘じゃないなら良かった」


 短くそう告げると、ベルベットさんは私から漫画を取り上げて後ろを向いてしまった。

 隠そうとしていたけど、終始ニヤニヤとしていたし、私がプレゼントする単行本と同じように自作の漫画を大事そうに抱きしめているところ見ても……めちゃくちゃ喜んでいるのが伝わってくる。


 私もベルベットさんを喜ばそうと思っての発言ではなく、本当に良いと思った作品だったからなぁ。

 私と出会う前から本を読み漁っていたとのことだったし、元々物語を構成する能力が身についていたのだと思う。


「またベルベットさんの漫画を読むのを楽しみにしています。それと……この別荘の横に家が建っているのはご存じだったですか?」

「……ん? もちろん知っているわ。すぐに目についたし、あの家がどうかしたの?」

「あそこの家を丸々娯楽室にしようと思っていまして、今回のもそうですが、完成度の高い作品は飾りたいと思っているのですがどうでしょうか?」

「――駄目! いや、嬉しいんだけど……やっぱり恥ずかしいから駄目!」


 ここでようやく振り向いてくれたのだが、激しい葛藤があるのが表情の変化から読み取ることができる。

 怒り顔30%、ニヤけ顔70%といった感じであり、まだ嬉しさの方が勝っている様子。


「そこは追々話させてください。名前を伏せるでもいいですし、ペンネームといって偽名を使うのもいい訳ですから」

「不評だったら怖いから駄目! 佐藤にしか見せられない!」

「この処女作も本当に面白いから大丈夫だと思いますけどね。とりあえず話はこの辺りで切り上げましょうか。多分ですけど、シーラさんがそろそろお風呂から上がってきます」

「た、確かにシーラが来ちゃうわね。私は部屋に隠してくる!」


 大事そうに抱えていた漫画の原稿を持って、ベルベットさんは急いで部屋へと戻っていった。

 なんというか……非常に微笑ましかった。


 これからベルベットさんが漫画を描いていくのかは分からないけど、描いていくのであれば是非娯楽室に置きたい。

 私しか読まないというのはあまりにも勿体ないからね。


「お風呂から上がりました。……あれ? 佐藤さん、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」

「え? 嬉しそうですか? ふ、普通だと思いますけど」

「むむ……何か隠していますね。ニヤニヤしていましたよ」


 ベルベットさんがニヤニヤしているのを見て、どうやら私もニヤニヤしてしまっていたようだ。

 微笑ましいと思っていたけど、これではベルベットさんとやっていることが同じ。

 その上、シーラさんにバレかけているし……これはまずい。


「……やはりシーラさんには隠せませんね。実は、近日中にスイーツを作ろうかを悩んでいたんです。それで何のスイーツを作るか悩んでいたのですが、味を思い出してニヤけてしまいました」

「スイーツ! バニラアイスもプリンも最高でしたが、他にもいっぱいあるんですか!? 是非食べてみたいです!」

「シーラさんならそう言ってくれると思いました。近い内に作りますので、楽しみに待っていてください」

「待っていますので絶対に作ってくださいね!」


 よし、上手く誤魔化せたみたいだ。

 その上、今度はシーラさんがニヤニヤしてくれている。


 スイーツを作らないといけなくなったけど、ベルベットさんの秘密を守るためなら安い出費。

 それに、スイーツは私も食べたいし一石二鳥と言えるだろう。



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