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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第1章

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閑話 シーラ視点2


 農作業を手伝いながら、佐藤さんの護衛を行う生活が始まって早くも四日が経った。

 佐藤さん以外の人がいないという環境だからなのか分かりませんが、私はゆったりとした生活を送ることができている。


 作物を育てるという行為も楽しいですし、午後の裏山での自然遊びも楽しい。

 私は護衛の任務という名目上、裏山で思い切り遊ぶことはできていないのですが、佐藤さんを見守りながら山菜や木の実採りを行っている。


 今日もいつものように農作業を終え、裏山に遊びに向かったのですが……今日は佐藤さんが釣竿を持参。

 夜に何か作っていることは知っていましたが、どうやらこの釣竿を作っていたようですね。


 魚を取ると気合いを入れていたのは、この釣竿を作ったからだったようだ。

 理由が分かったことで私はほっこりしつつ、佐藤さんの後ろを歩いて裏山を登っていると――遠くから草木をかきわけるような音が聞こえてきた。


 この音は……おそらくファングディア。

 好戦的な性格に加えて鋭い牙を持っている魔物ですが、農民の方でも狩ることができるくらいには弱い魔物。


 とにかく知能が低く、一直線にしか動けない性質を利用することで罠にもかけやすいことで有名。

 子供でも怖がらない魔物なのですが、佐藤さんはとても怖がっているようです。


「も、もう音がすぐ近くですが、ほ、本当に大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫ですよ。ふふ、佐藤さんは意外と怖がりなんですね」


 絶対にこんなことを思っちゃ駄目なのですが、佐藤さんはおじさんなのに可愛らしい。

 年齢も一回り以上上ですし、絶対に口には出しませんが優しいことも相俟ってそう思ってしまっています。


 私が怖がっている佐藤さんを守るように先頭に立って進んでいくと、やはり正面にファングディアが見えてきた。

 体はかなり大きな個体のようですが、体が大きかろうとファングディアはファングディア。

 一切の苦労もせずに倒せますね。


「やっぱりファングディアですね。大した魔物じゃありません」

「え、え!? あ、あの魔物が大したことなおんですか!?」


 後ろから聞こえてくる佐藤さんの情けない声に私は微笑みつつ、ファングディアに向かってゆっくりと近づいていく。

 ファングディアもこちらに気がついたようで、凶悪な牙を覗かせて攻撃の意思を見せておりますが……一直線の攻撃が来ると分かっていれば何も怖くありません。


 ギリギリまでファングディアを引き付けてから、相手の力を利用して首もとを撫で斬る。

 血が一気に吹き出し、私に斬られたファングディアはあっという間に絶命した。


 やはり図体が大きいだけの魔物ですね。

 手応えのない相手に少し落胆しつつ、私は後ろを振り返ると――そこには尻餅をついたまま、動けないでいる佐藤さんの姿があった。


 子供でもそう怖がらない魔物のはずなのですが、どうやら佐藤さんは本気で怖かった様子。

 決して馬鹿にしている訳ではないのですが、つい表情が緩んでしまう。


 そんな笑いを堪えている私に対し、佐藤さんは子供のように目を輝かせながら手放しで褒めてき始めた。

 異世界には魔物がいないようですし、こういった反応が普通なのかもしれませんが、たかがファングディアを倒しただけでここまで褒められると逆に恥ずかしくなってくる。


 そこからは常に羨望の眼差しを向けられ、ことあるごとにお礼を伝えてきた佐藤さん。

 せっかくの釣りにも集中できていないようで、釣果はゼロだったのですが……佐藤さんが楽しそうでしたので良かったです。



 翌日。

 佐藤さんが昨日言っていた通り、初日に植えた作物がしっかりと実っていた。


 流石に実るまで早すぎる気がしますが、それでも大事に育てたものが成長してくれたというのは本当に嬉しい。

 私は頬を緩ませながら、実った野菜を佐藤さんと一緒に収穫していく。


 この別荘で暮らし始めて、自分でも分かるほど笑顔が増えた。

 佐藤さんが護衛の任を解いてくれるという言葉で肩の荷が下り、実家を出てから初めて自然体の私でいられている。


 そのせいか、あれだけこだわっていた戦闘職へのこだわりも薄れつつあるのが不思議でたまらない。

 何なら、このままここでゆっくりと暮らすのもありとすら思ってしまっている。


 生活を初めて一週間も経っていないし、流石に時期尚早だとは思いますが、それほどまでに充実した生活を送らせてもらっていることに感謝をしつつ……。

 私は黙々と、血のように真っ赤な『トマト』なる野菜を収穫していった。


 赤い野菜はあるにはあるのですが、ここまで真っ赤だと美味しそうとはとても思えない。

 佐藤さん曰く、万能でとても美味しい野菜ということなのですが本当なのでしょうか。


 今日の夜にトマトを食べさせてくれるとのことですので、夜まで怖さ半分楽しみ半分の気分で作業を続けていると、あっという間に実っている全ての野菜の収穫が終わった。

 植えた数はクラックドラフの方が多いのですが、トマトは一本の茎から実る数が多いので結構な数が収穫できた。


 残りの作業は佐藤さん一人でやるとのことで、私は一足先に戻らせてもらうことにした。

 お風呂にも入り、万全の状態でリビングで待っていると――キッチンの方からお腹が鳴ってしまいそうになるほど、美味しそうな匂いが漂ってきた。


 今まで嗅いだことのない香り。

 これがトマトから香ってくるものなのでしょうか。


 どうしても気になってしまい、はしたないと分かっていながらもキッチンを覗き見する。

 うーん……。トマトだけでなく、見たことのない食材も使っており、この位置からでは何が何だか分かりません。


 そんなそわそわとした状態で待っていると、どうやら料理が完成したようで、お皿に盛り付けられた料理が運ばれてきた。

 真っ赤な美味しそうな料理と、クラックドラフ系の野菜をそのまま揚げただけの料理。


 真っ赤な料理というのは視覚的に食欲が湧かないはずなのですが、私の体は早く食べさせろと言わんばかりにぐぅーとお腹を鳴らした。

 それは佐藤さんも同じだったようで、いつもよりも早く食前の挨拶を済ませた。


 そして佐藤さんの食べ方を真似つつ、私はミートソーススパゲティなる料理を口に入れたのですが――舌に触れた瞬間に分かる強烈な旨味。

 今まで食べたことのない衝撃的な美味しさに、ほっぺたがとろんとなるのを感じつつ、私は口いっぱいにミートソーススパゲティを詰め込んだ。


 口いっぱいに広がる美味しさを噛み締めながら、私は次から次へと口の中に入れていく。

 食べるのがもったいないという気持ちになっているのですが、そんな気持ちに反して食べる手が止まらない。


「美味しすぎて……死んでしまいます! これが異世界では当たり前に食べられているのですか? 王城でもこんなに美味しいものは食べたことがないですよ!」

「喜んでもらえたなら良かったです。私の暮らしていた世界では当たり前に食べることができましたね。安いくらいの料理ですよ?」

「こんなに美味しいものが安いのですか? ちょっと信じられませんね……!」


 異世界の超高級料理だと思っていたのですが、佐藤さん曰く普通の料理。

 その衝撃に驚きを隠せないまま、私はもう一つの料理に手を伸ばす。


 赤いソースをつけてから食べたのですが、こちらも驚くほどに美味しい。

 ホクホクな食感に丁度良い塩加減。


 そこにケチャップというソースがよくマッチしていて、素材そのものといった感じなのですが、食べる手が止まらないやみつきになる味。

 どちらが私の好みかと問われればミートソーススパゲティですが、こちらのフライドポテトも人生で食べた料理の中で二番目に美味しかったと思えた料理。


 全て食べ終えてしまい、お腹は満腹なんですが、もう食べられないというショックも隠せない非常に不思議な感覚。

 ただ……とにかく美味しかった。


 食材からして、こちらの世界のものでは出せない味がしていた。

 先ほど、半分冗談でこのままの生活でもいいかもしれないと思っていましたが、月に一度だけでもこの料理を頂くことができるのであれば――私は一生佐藤さんの護衛をしていたい。

 そう強く思ったほどに、私の胃袋は完全に掴まれてしまったのだった。



お読み頂きありがとうございます!


この小説を読んで、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも感じましたら、

ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、是非よろしくお願いいたします!

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