第102話 魔道具屋
ランゾーレの街は王都と比べ、街並みが非常に綺麗。
王都も決して汚くはないんだけど、なんというか東京っぽい感じ。
そして、ランゾーレの街は京都っぽさがある。
和の要素は一切ないんだけど、個人的に良い表現ができたと思う。
「チラホラと魔法使いっぽい人がいますね。あれが魔術学校の学生さんなんでしょうか?」
「そうだと思いますよ。年齢も若そうですから」
「本当に魔法使いの街って感じですね。ちなみにシーラさんは魔術学校に行く予定とかはなかったんですか? 幼少期の頃に魔法を習っていたんですよね?」
「私は魔法の才能がありませんでしたからね。飛び抜けた才能があれば通っていた可能性もありますが……私自身が魔法よりも近接戦の方が好きだったので、どちらにせよ通ってなかったと思います」
「そうなんですか。私ならすぐに飛びついちゃいそうです」
確かに模擬戦大会とかを見ても、シーラさんの近接戦の強さは抜きん出ていた。
初級魔法しか使えないというのもあるだろうけど、模擬戦では一度も使わなかったところを見ても、本当に魔法が得意ではないことが分かる。
「佐藤さんは魔法がお好きですもんね。この際ですし、魔法を習ってみるというのはどうですか? ランゾーレの街なら、魔法を教えてくれる講師みたいな人がいると思います」
「やってみたいところですが、私に才能がないのは分かっていますのでやめておきます。……シーラさんも私の能力値を知っていますよね?」
「あっ……」
シーラさんは小さく声を漏らすと、気まずそうに視線を逸らした。
私の魔法力は脅威の1。
特にこの間で魔法力を高めるトレーニングなどもしていないし、1から変化がないのは分かっている。
魔法力が1ではどんな指導を受けようが、魔法を扱うことができないのは悲しいけど火を見るより明らか。
「そういうことです。私は扱いたくても扱えないんですよ」
「悲しすぎます! 私は佐藤さんに、何としてでも魔法を使わせてあげたいです」
「お気持ちだけ受け取っておきます。シーラさんやモージの魔法を見るだけで幸せですから」
「……駄目です! ここは仮にも魔法の街。きっと魔法を使える感覚になる道具があると思いますので、ちょっとお店巡りをしてみましょう」
そう言うと、早足で歩き始めたシーラさん。
何やら火をつけてしまったみたいだけど、そんな便利アイテムがあるのだろうか。
……あっ、ロッゾさんとシッドさんが前に話していた、魔道具なら可能なのかな?
魔法を扱うことに関しては諦めているけど、魔道具店は確かに気になる。
私は年甲斐もなくワクワクしながら、シーラさんと一緒にお店へと向かうことにした。
着いたのは古い感じではあるけど、非常にお洒落なお店。
そんなお店の看板には杖、魔道具を取り扱っていますという文字と共に、『マジックキャビネット』と店名が書かれていた。
「雰囲気のあるお店ですね。どんな人が店主さんなんでしょうか」
「年季が入っていますし、お爺さんとかじゃないですかね? 元魔術師とかでしたら嬉しいですね」
そんな会話をしつつ、私達がお店の中に入ったのだが……レジに立っていたのはまさかの若い女性だった。
見た目も魔術師っぽくなく、どちらかといえば日本にいそうな今時のファッションをした女性。
「いらっしゃいませ! 何かありましたらお気軽にお声掛けくださいね!」
「こんにちは。初めてきたのですが、少しお伺いしてもよろしいですか?」
「もちろんです! 何でも聞いてください!」
「ありがとうございます。実は魔法を扱える魔道具を探していまして、こちらで購入することはできますか?」
「もちろんありますよ! ちょっと待っててくださいね……!」
元気よく接客してくれた店員さんは、棚をゴソゴソと探してから何やら一つの箱を取り出した。
何の箱か分からないけど、扱い的にそんな高価なものには見えない。
「その箱に入っているのが魔法を扱える魔道具ですか?」
「いえ! こちらは魔道具ではなく魔法玉といって、魔法が閉じ込められている水晶になります! 魔道具とは違って一度しか使えない使い切りなのですが、安価なのでお試し用として優れているんです!」
「へー……魔法玉なんて初めて聞きましたね。そのアイテムは世間的に流通しているものですか?」
店員さんの説明に引っかかったようで、シーラさんが店員さんにそう尋ねた。
シーラさんが知らないということは、かなりマイナーなアイテムなのかもしれない。
「いえ、この魔法玉は私が作ったものです! 水晶に魔法を込められないかなと思って試してみたら、作ることができたんです!」
「店員さんが作ったものなんですか! ということは、このお店の店主さんなんですか?」
「はい! おじいちゃんから引き継いだお店ですが、今は私一人で切り盛りしています!」
「お若いのに凄いですね。魔法を込められるということは、店主さんは魔術師だったりしますか?」
「この街にある魔術学校を卒業しています。あまり大きな声では言えないのですが……私、主席で卒業しているんですよ」
「主席って凄いですね! 魔術師に興味があって、この街に来たので光栄です!」
「ふふふ、お兄さんは口がお上手ですね! 気分が良いので一つプレゼントします! ここで使える魔法を込めている魔法玉ですので、試しに使ってみてください!」
「流石に頂くのは申し訳ないですよ」
「遠慮しなくて大丈夫です! ほらほら、少し強く擦ってみてください!」
押しきられるように魔法玉を手渡され、困った私はシーラさんに視線を送ったんだけど……。
頷くだけだったため、お言葉に甘えて使ってみることにした。
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