第99話 梅雨明け
ロッゾさんとシッドさんが越してきてから程なくして、この辺り一帯には梅雨がやってきた。
連日、朝から晩まで天気が悪く、スキルの畑の方は何ともなかったのだけど、耕した方の畑は土が緩々になったり、雑草の勢いが増したりで大変だった。
雨の中の作業も意外と大変だった部分もあり、冬季に次いで嫌な季節だったかもしれない。
日本にいた頃はそこまで嫌いではなかったんだけど、農業とは絶望的に相性が悪い。
それから梅雨を経験したことで、一つ分かったことがある。
それは、この異世界も季節は日本と変わらないということ。
冬があった時点でそうではないかと思っていたけど、春と来てからの梅雨は確信的。
梅雨が明けてから日に日に気温が上がっているし、これから夏が来ることも予想できる。
日本ではなくなりつつある四季を感じられるのは嬉しいし、後は夏の気温がおかしくないことを祈るばかり。
三十度後半は当たり前、四十度を超えることも日本では珍しくなくなっていたからな。
流石に四十度を超える気温では、農業もままならなくなるし、三十度を超えないくらいの気温ならありがたい。
そんなことを考えつつ、梅雨明けの過ごしやすい気温の中、私は畑仕事に没頭したのだった。
今日の分の仕事を終え、シーラさんと一緒に別荘に戻っていると、遠くから競い合うようにロッゾさんとシッドさんがこちらに向かってきている。
王都にいた頃も生き生きとしていたけど、ここに来てからは更に生き生きとしているように見える。
やっぱりだけど、兄弟で一緒にいるのが楽しいんだと思う。
「はぁー、はぁー。よっしゃー! 俺の勝ちだな!」
「ふぅー、ふぅー。別に競ってねぇよ。あと、ロッゾはフライングしていたから負けだ」
「フライングなんかしてねぇよ! ケチな言いがかりつけるな!」
「あ、あの……走ってきた用件を聞いてもいいですか?」
おっさん2人で小学生のような喧嘩をしているところを止め、用件を聞くことにした。
私は微笑ましい光景だと思える派だけど、隣にいるシーラさんの目が物凄く冷たい。
「あー、すまねぇ! 実はだが……ようやく馬車が完成した!」
「本当ですか? ちなみにどんな馬車なんですか?」
「一応、大量の荷物が運べる馬車だ。座る部分もふわふわだし、揺れも少なくなるように工夫が施されている」
「一応……? ちなみにですが、その馬車には私達も乗っていいんですか?」
「もちろん! 自由に乗ってくれて構わねぇ! ただ……一つだけ頼みがあるんだが聞いてもらってもいいか?」
そう言ってから、真剣な表情となったロッゾさんとシッドさん。
馬車を作った報酬が欲しい――とかだろうか?
そろそろ新作の映画か、AVをプレゼントしてあげてもいいとは思っていたため、タイミング的には丁度いいかもしれない。
「前にも言ったかもしれねぇが、馬車を引く魔物がいない。馬車という名前がついてはいるが、馬じゃ引けないぐらいの大きさと重さになっちまっているからな」
「なるほど。従魔は私が用意してほしいってことですね。……分かりました。馬車を引く魔物に関しては任せてください」
「引き受けてくれて助かったぜ! それじゃよろしく頼む!」
「こっちはこっちでいつでも乗れるようにしておく」
「分かりました。従魔が見つかり次第、すぐにお伝えします」
用件を済ませた2人は一度睨み合ってから、再び競い合うように住居兼、作業場に戻って行ってしまった。
騒がしいけど、やはり人が多いと賑やかで楽しい。
馬車まで作ってくれたみたいだし、こちらで魔物を用意できればいつでも気軽に王都に通えるようになる。
場合によっては王都以外の別の街にも行けるようになるかもしれないし、足ができたのは非常に大きいな。
「ロッゾさんが王都に居た時より楽しそうなのは何よりですが……あの2人は揃うと騒がしすぎます」
「シーラさんは、早々に別荘から追い出しましたもんね」
「うるさいのはもちろんのこと、ガサツすぎるのが耐えられませんでした。その分、馬車を作るのが遅れてしまったみたいで申し訳ありません」
「いえいえ。私が頼んだものではありませんし、私もうるさいとは思っていましたので、先に自分たちの家を建ててもらったのは正解だったと思います」
「それで……馬車を引く魔物はどうするのですか?」
「またシーラさんと一緒に決めてもよろしいでしょうか? スノーディアも良いとは思っているのですが、他に候補があるなら聞いてみたいです」
「もちろん構いません。それでは今日にでも作戦会議を行いましょう」
「賛成です。会議のおともにパンケーキでも作りますね」
「パンケーキ! ふふ、俄然楽しみです!」
それから私とシーラさんは一緒に別荘へと戻り、夕食を食べた後少し休んでから、馬車を引くことのできる魔物を選ぶ会議を行った。
シーラさんの魔物知識のお陰で、今回も良い作戦会議を行うことができた。
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