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閑話 龍の少女の家出


――エデルギウス山。


「お嬢様、どうかお待ちください! ご飯ならばご用意致しますので!」

「嫌じゃ! お主らの用意するご飯は不味い!」


 引き留めてくる使いの者たち――アシュロスの言葉を無視し、わらわはエデルギウス山を飛び立った。

 今は父上も母上もいないため、自由に外出できる絶好の好機なのじゃ。


 口うるさく、わらわを追いかけてきたアシュロスを龍の姿に戻って一気に撒いた。

 山の外から来た者から貰った食べ物の味が忘れられず、わらわは逃げる機会をずっとまっておったのじゃ。


 エデルギウス山を離れ、逃げるために飛行し続けていたのだけど……お腹がぐぅーと激しい音を立てて鳴った。

 不味いからといって今日は何も食べておらず、龍の姿に戻ったことでエネルギーを激しく消耗したからだと思うのじゃが、何か食べたくて仕方がない。


 とにかく龍の姿から人の姿に変わることで、エネルギーの消費は抑えることができる。

 ただ、人の姿だと飛行が安定しないため、わらわは地面に降り立って、何か食べられる物がないかを探すことに決めた。


「……お腹が空いたのう」


 知らない場所を歩きながらそうポツリと呟いたが、わらわの言葉に反応するものは誰もいない。

 アシュロスを振り切って飛び出てきたはいいものの、わらわは外の世界に詳しい訳ではない。


 それに……思っていた以上に食べられそうな物がないのじゃ。

 逃げるために適当に飛んだこともあってここがどこだか分からない上、辺り一面草木が生い茂っているだけ。


「……この草は食べられるのかの?」


 その辺に生えている草ですら美味しく見えてしまったため、軽く採取して食べてもみたのじゃが全くもって美味しくない。

 いくらお腹が空いているとはいえ、こんなに不味いものは食べることができない。


 エデルギウス山を飛び出してからまだ3時間。

 早くも飛び出してきたことに後悔し始めたのじゃが、今更後悔したところでもう遅い。


 龍の姿でぶっ飛ばしたこともあって、あんなに大きいエデルギウス山はどこにも見当たらない。

 その上、戻る体力も残っていないのに加え、倒れてしまいそうなほどお腹が空きすぎているのじゃ。


 家出から泣き寝入りまで早すぎるのはわらわも分かっておるが、帰りたくなったのじゃから仕方がない。

 でも……帰る方法が分からない。


 本当に情けないのは分かっておるが、涙がポロポロと溢れてくる。

 不味いご飯でも食べられるだけありがたかった――それが分かっただけ、エシュロスたちにも感謝することができる気がする。

 

「アシュロス……逃げたわらわが悪いけど、迎えに来てほしいのじゃ」


 そう心の底から願っても、使いの者はやってこない。

 当てもなく歩き回っていたのじゃが、とうとう日も落ち始めてきた。


 わらわは龍という最上位種に生まれたこともあり、他の種族には負けない自負を持っておったが、龍の姿に戻れないとなると話は別。

 今は人の状態で立っているのがやっとであり、ここで襲われたら最上位種であるわらわでも無事ではすまない。


 命の危険まで感じ始めたため、何でもいいから食べるものを探すことに決めた。

 少しの間だけでも、龍の姿に戻れるくらいのエネルギーを溜めなくてはならない。


 必死になったわらわは、木の根元に生えているキノコに目をつけた。

 使いの者の中でも特に口がうるさいアシュロンが、キノコだけは食べてはいけないと口酸っぱく言われておったのじゃが、背に腹は代えられない。 

 キノコを捥ぎ取り、口の中に放り込んだ。


「――んん!? 美味しいのじゃ!」


 アシュロンの言葉を信じて、これまで多くのキノコを見過ごしてきたのじゃが、なぜ食べては駄目なのか分からないくらい凄く美味しい。

 それからわらわは、見つけたキノコを片っ端から食べていったのじゃが……体の変化は突然現れた。


 頭がクラクラとし始め、視界がグルグルと回っておる。

 楽しい気分でありながら、何だか悲しい気分でも不思議な感覚じゃ。


 そこから次第に足取りがおぼつかなくなり、平衡感覚も失ったわらわは地面に倒れてしまった。

 頭の奥底ではまずいと思っておるのじゃが、体は動かないし思考も上手くまとまらない。


「……た、たすけて」


 声にならない声を発して助けを求めたのじゃが、そんなわらわの声に反応したのは腹を空かせた獣の魔物じゃった。

 3匹の獣の魔物が目を光らせて近づいてきており、追い払いたいのじゃが体に力が入らない。


 平常時なら1秒もかからずに倒せるというのに、わらわはこんな下級の魔物に食べられて死んでしまうのか?

 まだ死にたくない。わがままを言って家出をしたわらわが悪いの分かっておるけど、死にたくないのじゃ。

 

 そんな願いも空しく、ハイエナのような見た目をした魔物が大口を開けて襲い掛かってきた。

 わらわは目を瞑り、その攻撃に備えていたのじゃが……攻撃は一向に飛んでこない。


 不思議に思いながらゆっくりと目を開けると、黒い大きな魔物がわらわを襲おうとしていた魔物を蹴散らしてくれていた。

 わらわと同じような漆黒の翼を持つ、鳥のような魔物。


 まだ敵なのか味方なのか分からないはずなのじゃが、包容力のようなものを勝手に感じたわらわは助かったと思って、緊張の糸を切らしてしまった。

 そして、そのままプツリと切れるように意識を失ってしまったのだった。


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