毒林檎を超える呪い
第1章 ジョーカーと王子様
ねえ、恋占いって罪だと思わない?カードを引いただけで運命の人が分かってしまうんだから。
君はさ、もし私がジョーカーだったらどう思う?私を選んでくれる?
――――――――――――答えてよ、私の王子様
4月の暖かいある日のことだった。
「みんなでさ、恋占いしない?」
そんなことを突拍子に言い始めたのは、いつもクラスの中心にいる凛々花だ。
私、彩恋は天気予報の運勢占い、タロットカードどれも信じない。信じるのは自分の心だけ。まあ、それもいつもシーソーみたいに揺らいでいるけどね。
「恋占いって何するの」
「えーっとね、トランプを始め1枚引いて、引いたカードを見ないで、次に自分が好きな人のことを想像しながらまたカードを1枚引いて計4枚のカードの組み合わせで運勢が決まるの」
「ふーん、面白そうだね」
口では面白そうとは言ったが、内心下らないとしか思っていない。まあ、友達付き合いとして嫌とは言えないのでやってみることにする。
「じゃあ私始め引くね」
私が引いたカードは、ジョーカーだった。なんか嫌な感じ。
次に私の好きな人を想像しながら引いた。
引いたカードは、またもやジョーカーだった。
「え、」
「彩恋逆にすごくない?」
「そう…………だね」
だからこんなつまらないことはしたく無かった。
ジョーカーとジョーカーなんと言っていいのか。
喜劇のヒロインと王子様の出会いなのか、それとも、悲劇のヒロインと王子様の出会いなのか。
君と私っていつもこんな感じだよな。
そう心のなかで思っていると、私の視界の中で動くものがあった。
翔だった。まあ、自分で言うのも恥ずかしいが彼が私の片思いの人だ。
彼は顔だけはいい。テレビに出ているそこら辺のローカルアイドルよりは全然イケメンだ。でも難点がある。人に対して冷たすぎるところだ。まあ、会話が苦手ぐらいなら私も何も言わないのだが無視、無視、無視の三拍子だ。
そんな彼を好きになったきっかけは、簡単だ。
私は彼の幼なじみだからだ。家も近くて幼稚園の頃からいつも一緒にいた。小さい頃はバーベキューとか川遊びをしたのを覚えている。
いつからだろう、彼が冷たくなってしまったのは。
そんなことを考えていると…………気づけば彼は廊下に出ようとしていた。
「待ってよ」
私はバックを取って彼を追いかけた。
「ヒュー、お幸せに」
そんな事情も知らない冷やかしを無視しながら私は追いかけた。
「待ってよ…………」
「…………」
「君も置いていくの?」
「ねえ…………」
「…………」
「ね……ぇ……」
「どこ…………行くの」
かすれた声しか出ない。
「…………家」
「違う、違う、違うっっ」
「何が」
私だけがヒューズが外れた時計の中で取り残されている。
君はどこに行こうしているの。
「ごめん、なんでも無い」
きっとわたしだけなんだよね。
過去の楽しみとあの美しくて、儚い手の届かない記憶に。
君に寄りかかりだけなんだよ。知ってる?
昔は私のことを待っていてくれたのに、もう待ってはくれないんだね。
私も変わった。
君は変わった。
やっぱり私は運命なんて信じられない。信じるのは自分の心と記憶だけ。
でもその記憶さえも信じられなくなってきている。
ねえ、忘れちゃったの翔、私は覚えているよ…………
これから始まるのは私と彼の恋占いの物語。
第2章も現在書いてるのでぜひ完成したら読んでください。