表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨が降れば

作者: 漢信彦

「いやー降ってきよったで」


 私は、山本さんに話しかけながら窓を閉めるため家中を走った。

 平日の12時〜16時この時間帯は、家主はおらず私が唯一素でいられる時間。


「山本さん窓閉め完了しました、次に洗濯物回収に行ってきます」


 平日の昼間から家にいて何もしていないので少しでも家主の機嫌を取るため炊事、洗濯をし、何もしていない感を感じさせないようにする。

 仕事やバイトの話が出たらうやむやにし、別の話題で話を逸らす、こんなことをしてもう3年が経った。


「洗濯物回収完了、山本さんいつものいっときますか」


 山本さんに向かって霧吹きの水をかけた。

 この瞬間が私と山本さんの大切な日課で、水をかけることで山本さんは生き生きとし輝きが増す、雨の日は特に山本さんの魅力が溢れている。


「今日は、いつもよりワンプッシュ多めにしましたね」


 いつもは、2回かけるが今日は3回かけた。

 今日が最後の日課になるんだ。

 家主が山本さんと話している私を見て、気味悪がって山本さんを燃やすと言ったのだ、そして私の就職先を見つけ寮生活をさせようとしていた。

 家主曰く、私は外に出ないから異常なのだ、外に出ていろんな人に出会えば必ず良いことがあると毎日言われた。


「初めて出会った時も雨でお別れする時も雨ですね」


 涙が出た、大好きだったおじいちゃんが亡くなった時は出なかった涙が、スーパーの端に安売りされていた観葉植物が燃やされる時には出たんだ。

 山本さんがいなくなるまでの時間は一瞬だった。

 明日には私の寮生活が始まる。

 3年後の私は山本さんのことを覚えているのだろうか。

 雨が降ればまた会える気がする。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ