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28.狭い馬車でのにらみ合い

「死人が出ていないなら、別にいい」


 馬車から降りた旦那様の第一声がそれだった。

 ただし、目つきはお騒がせなロザリモンド嬢を睨みつけている。


 なんだろう、この騒ぎだけじゃない何かあったかのような感じがするけど……。

 ロザリモンド嬢は相変わらず微笑んでいるけど、お互い何か隠し事をしているような感じだ。


「クロード様、わたくしお願いしたいことがあります」

「私はお前に言いたいことがある。いや、聞きたい事と言っても良いかも知れないな」

「あら、わたくしにお答えできることですか? クロード様がわたくしに何か聞きたいことがあるなんて初めてのことですね。その代わり、わたくしのお願い事も聞いて下さいますか?」

「まともな頼みならな」


 旦那様の答えは冷たい。

 それを感じているだろうに、ロザリモンド嬢は平然としている。

 鋼の心臓を持っているのかも、この人。


「クロード様、ちょっと数人護衛が少なくなってませんか?」


 ミシェルが指摘すると、ああと旦那様がなんでもないかのように言った。


「少し仕事を任せた」

「仕事ですか?」

「……どんな仕事か詳しく聞きたいところですけど、旦那様」


 荒事系のお仕事なのは間違いない。


「後でな」


 秘密にするかなと思ったら、話してくれる気はあるようだった。


「ロザリモンド、一応親族だから聞いておくが、返答次第では自分がどうなるか分かっているか?」

「クロード様が聞きたい事の内容によりますね。でも、わたくしの実家が絡んでいるのならば、見逃してほしいとは思っています。ああ、見逃してほしいというのはわたくしの家族ではなく、わたくしをという事ですけど」

 

 わー……なんかすごいお家騒動予感。

 まさか、今起こってる事全部それ関連かなとか言わないよね……いや、でもなぁ。

 この炭鉱の件、南のロザリモンド嬢の実家も関わってるって明らかになっている。

 自分達は何も知らなかったと謝罪に来てるけど、今の言い方。

 絶対に何かあるって事じゃないの。

 しかも、ロザリモンド嬢はそれを知っていて、旦那様も知らない何かを知っている可能性があって……。

 

「お話は帰ってからというのはいかがでしょうか?」


 珍しくロザリモンド嬢が尤もな提案をした。

 外で話す内容ではないけど、この状況を放置するのはちょっとなと思う。


「こっちは全員に適当に説明しておく。適当と言っても今日あった事を事実としてだがな」

 

 気を使ってくれたのか、イリーガルがむすっとしているカルナークを見ながら言ってくれた。

 カルナークが不満そうに何か言いかけていたけど、イリーガルが頭を押さえて黙らせる。

 それに対し、旦那様がイリーガルとマードックに向けて一つの情報をもたらした。


「先ほど分かった事だが、大型の獣の件は問題ない。ただの穀物(・・)動物だ。刺激をしなければ何もしてこない。餌が無ければいなくなる。おそらくだがな」

「穀物動物? なんだそれは……」


 わたしも聞いた事ないんですけど? 穀物を主食としてる動物って事ですかね? でも今まで聞いた事ないんだけど?

 

「そっちは私の管轄外だが、飼い主がいるからそっちに話を付けておく」


 飼い主とは?

 もしかして、逃げ出した動物という事なのだろうかと首を捻ると、面倒事が増えたと言わんばかりにわたしを見下ろす旦那様。

 え、何?


 困惑しながらも、旦那様が馬車に促すので、ロザリモンド嬢と並んで馬車に乗る。

 来るときは旦那様と二人きりの車内。

 もともと、二人だったので馬車としては小さい方だけど、リンドベルド公爵家の持ち馬車の中では小さいというだけであって、一般的には十分大きい四人乗り。


「イライラしていらっしゃいますけど、わたくしにそんな感情向けられても困りますわ、クロード様?」

「隠し事されるのは好きではないんでな」

「隠し事を見つけられない方も悪いと思いませんか?」


 ころころ笑うロザリモンド嬢は相変わらず、旦那様に何を言われても効いていないようだ。

 本当にこういうところすごいって思うんだよね。

 わたしだったらここまで旦那様に言い返せるか自信ないよ。心の中で罵倒して終わりかも。


「この騒動の始まりは、わたくしのせいではありませんし、わたくしは被害者だと思いますけど?」

「被害者なら被害者らしく逃げ回って隠れていればよかっただろう? それこそ戻ってこなければよかったんだ」

「それは……やはりクロード様がご結婚された相手と言うのが気になりまして。仕方がないと思いません事?」


 良く分からないけど、とりあえず被害者だと訴えるロザリモンド嬢は何に対して被害者だと言っているのだろうかと考えてみるけど、わたしに分かるわけがない。

 根深い何かがあるという事は分かるけど、公爵家に嫁いで日の浅いわたしがすべての親族家門、分家家系とのかかわりを把握できるはずがない。

 ラグナートに最低限のお勉強と資料は渡されたけど、今どうなっているの? って感じだし。

 とりあえず……。


 狭い馬車の中で睨み合わないでほしいんだけど。こっちが気まずいんですよ!




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