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11.事業企画案

 一通り食べて、ほっと一息つく。

 結構な量があったと思ったのに、意外とたくさん食べてしまった。

 外で食べると、なぜだかおいしく感じるのは気のせいでしょうか? いえ、きっと気のせいではありません!

 だって、旦那様も朝早い時間なのに、モリモリ食べていましたしね。

 正直、この量多いなぁって思っていたけど、そうでもなかったようです。


 なんとなくまったりしていると、空になったグラスに飲み物を追加で注ぎながら旦那様が少し真面目な話を始めた。


「昨夜の話だが――」

「さ、昨夜ですか?」


 若干声が上ずってしまい、視線を逸らせた。

 わたしの挙動不審さを分かっているのに、旦那様はそれに触れず、話を進める。


「肉の品質の話だ。あれを北で行うのはいいが、具体的にどうするかだな」


 あ、そっちか。

 昨夜の旦那様の話を掘り返されるかと思ったら、別案件だった。

 というか、こんなところでも仕事の話とは……。

 それだけ北の炭鉱問題はまずいのかも知れない。


「まあ、一から育てるところから始めなければなりませんよね。商品化できるまでには数年かかるでしょうし、その補償とかどうするか考えなければ……」

「北に作るなら、今の炭鉱夫への雇用につながるからいいが、そもそも任せられるか問題だな。祖父が仕事を紹介しても定着しなかった相手が素直に応じるかどうか……」

「わたしは実際に行ったことがある訳ではないので、正直どういう状況かは分かりませんが、年寄り世代が固執しているだけで、若い世代は意外と違ったりするとかないですか? 資料によると若い世代もいるみたいですけど……」

「そこまで頭が固いとは思えないんだが……、正直安全な仕事があるのに、危険な炭鉱に固執する意味が分からない。扇動されていた可能性もあるが、一度は廃鉱になったんだぞ? それに仕事も紹介されて従事していた」


 うーん、領主様にそこまでしてもらって何が不満なのか、こっちが聞きたい。

 掘れば掘るだけお金になる炭鉱の方がいいのか、最低限の賃金を約束されている安定した職。

 わたしなら後者なんだけどなぁ。

 採れなくなったらお金にならないし、危険な事ははじめから分かっているのだから。

 先々代の領主だって地層深くにならないと採掘できないと知っていたから、表層だけにしたんだろうし。

 つまり、先はなかったわけだ。

 説明もあったはずだろうけど、その世代はもうほとんど残っていない可能性が高いので、理解していない人が増えたとも考えられる。

 考えられるけど……。

 ちょっと現状は良く分からない。

 廃鉱時点で、すでに話が拗れていたのか、そのあと拗れたのか。


 少しでも現金化したかったから無理をして炭鉱堀りをさせていたので、いざというときにここまで補償してくれたのだ。

 恵まれていると言わざるをえない。

 領主主導の事業で破綻しても、普通ここまでしてくれる領主少ないけどな。

 結構あくどい領主は多いよ? わたしの父親みたいに。


「お話し合いは必須ですよ。何か始めるにしても、住民の理解が得られなければ、すぐに破綻します」


 冷たい言い方をするようならば、違法な事をしているのは彼らであって助ける必要性はない。

 むしろ、違法な事をしている人たちを捕らえるのが秩序を保つためには必要でもある。

 しかし、今回は前総括執事が関わって扇動していた可能性があるので、大っぴらにはしたくない。

 騙される方が悪いと言ってしまえばそこまでだけど、抑えることの出来なかった当主にも問題があると思っているのだ、旦那様は。


「とりあえず、見てみたい気持ちはありますね。その場所を。そもそも家畜を育てるのに環境がどうなのかは重要ですし」

「二、三日後には向かう予定になっている。前後する可能性はあるが」

「決断、早くないですか?」

「時間は有限だからな。できれば、君が考えていた研究を書面にしてくれないか? 大雑把でいいし、ベルディゴ伯爵家で考えてた計画案でもいい」


 仕事が増えるぅ!

 でも、仕方がないかと諦める。

 領地が栄えてくれれば、お金が入ってわたしもきっと将来楽できる――……って! 希望は将来ではないんだけどね!

 ただ、今回はわたしが考えてやってみたかったことだし、それに興味を持ってくれた旦那様をパトロンにするのだから、それぐらい提出しましょう。

 きちんとしたものでなくてもいいみたいだし。

 箇条書きとかでもいいんだろうしね。


 きっと大まかのことを書いておけば、旦那様の優秀な頭脳で形作られていくはずだから!


「ちなみに、遠いんですか?」

「いや? ここから馬車で行っても一日かからないな。馬だと半日くらいの距離だろう」


 ああ、それならちょうどいいかもしれない。

 一応事業企画者として、軌道にのるまでたまには様子を見に来るけど、遠いとその頻度はきっと下がる。

 近いのなら頻繁に来れるし、そのついでに二匹を思い切り遊ばせることが出来る。

 平地を駆けまわるのもいいけど、やっぱり生活環境が似た場所の方がいいだろうしね。

 いつの間にか戻ってきていたレーツェルは、どこか物足りなさそうだし。

 

「ところで、今日は本当にロザリモンドと会うのか?」


 唐突に旦那様が聞いてくる。

 そのつもりですけど?


「……一応聞いておきますけど、ロザリモンド嬢と何かありました?」


 その、口にはできないようなご関係――だったとは言いませんよね? 流石に。


「君が心配しているような事は何もない。あえて言うなら、天敵だな」


 嫌そうに顔を歪める旦那様。

 天敵ですか?

 旦那様にも天敵がいるとは思いませんでしたよ。


「あまりあいつの話を鵜呑みにするなよ」


 そんな有難い忠告を聞いて、ピクニックは終了となった。





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