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9.玄関前にて

 準備して玄関ホールに向かうと、すでに旦那様が待っていた。

 男の準備の方が基本的には早いとはいえ、いつから待っていたのか気になる。

 

 いや、待つのが男の嗜みとは言っても、さすがに待たせすぎなのは気が引けるんだよね……。


 旦那様は黒の乗馬服姿で悔しいくらいに似合っていた。

 むしろ、似合わない服なんてあるのかと思ってしまう。


「お待たせいたしました」

「ああ、行くか」


 旦那様が手に何か持っている。

 バスケット……?


 足元にいたリヒトが何かをかぎつけて旦那様の足元でバスケットの中身に気を取られている。中身は食べ物のようだ。

 というか、少しは我慢しなさい、リヒト。

 だから最近デブ気味なんでしょう?


「おはようございます、リーシャ様」


 呆れたようにリヒトを見ていると、横からミシェルがリンドベルド公爵家の領軍の制服姿で現れた。


「おはよう、ミシェル。一緒に行くの?」

「そう、朝早くからクロード様にたたき起こされたからね」


 あー、それはごめん。

 普通に考えれば、まだ寝てる時間だよね。


「一応クロード様はリンドベルド公爵家の当主でリーシャ様は公爵夫人だからね。護衛が誰もいない状況は良くないってことだねぇ」

「ほかにはいなかったの?」

「いるよ。一緒に行くのは僕だけじゃないけど、僕はリーシャ様専属の唯一の騎士だから、しょうがないかなぁ」


 当主夫妻を守るのが役目と言っても、どちらを優先して守るのかという話になると当たり前だけど旦那様になる。

 けれど、専属はその限りではない。

 現在の所、専属が一人しかいないので、必然的にミシェルが常にわたしの護衛をすることになる。

 一応旦那様から書類は渡されていたけど、実際に会ってみない事にはなんとも言えない。

 旦那様の推薦なら問題ないとは思うけど、ミシェルと上手くやれる人でないとね。


「これからは、ゆっくり起きる様にするね」

「できれば、よろしくお願いします」


 朝から騒々しい玄関ホールで、準備が整ったのか、旦那様に声がかけられた。


「リーシャ、君はどこまで乗れる?」

「駈足程度ですね。最近乗っていないので、できればゆっくり乗りたいところです」


 嘘を言っても仕方がない。

 実際結婚してから全然馬に乗っていないのは旦那様だって知っている。

 腕前もそう期待しないでほしい。


「まあ、散歩のつもりだったからな、歩かせる程度できれば問題ない」


 それなら良かった。

 緊急事態のような事は起きないことを祈ります。


 乗馬は貴婦人の嗜みの一つとは言っても、本格的に乗る人は少ない。

 社交の一貫で、手綱を使用人に引かせながらゆったりと乗るのが普通だ。

 一人で走らせるくらいできるわたしは、上手い方。


「リンドベルド公爵領に住む人間はほとんどが馬に乗れるから、もし乗れないのなら勧めるつもりだったが、その必要性はなかったな」


 なるほど、ここでも戦争事情。

 逃げるために馬は有効だ。

 乗って逃げてもいいし、家財を乗せた台車を引かせてもいい。知らせに走ることもあるだろうし。

 結果、領地の人間はほとんどが乗れるとの事だ。


「馬の生産地でもありますしね」


 軍馬もそうだけど、他の農耕馬などもリンドベルド公爵領の馬がずば抜けていい馬ばかり。

 その分高いけど、やはり馬力が違うし優秀な子が多い。

 そこで、はたっと思い至り、旦那様に聞く。


「さすがに、軍馬じゃないですよね?」


 そんな立派な馬を乗りこなす自信はない。

 わたしの言葉に旦那様が呆れたように視線を向けた。


「初心者に毛の生えたような人間に軍馬など渡すものか。逆に危険だぞ」


 あ、ですよね?

 軍馬は戦争用に特別に調教された馬だ。

 意外と気性は荒いらしい。


「あ、僕は軍馬乗れますよ!」


 ミシェルが欲しいなぁって顔で旦那様を見てる。

 軍馬は高いのでおいそれと買えるものでもないし、必要もない。

 ほとんどが、リンドベルド公爵領で使われてもいる。

 一部国軍の方にも納めているけど、ほとんど市場には出回らない。


 つまり、軍馬に乗る機会はほとんどないし、持つことはもっとない。


「それ相応の働きをしろ」

「えー、僕結構頑張ってるとおもうんだけどなぁ。どう思う、リーシャ様?」

「わたしに振られても……」

「僕、リーシャ様の専属だよ? すごく頑張ってるでしょ?」


 いや、ミシェル、周り煽って楽しんでいるだけじゃない?

 最近はリヒトと遊んでるだけだし。

 リヒト、ミシェルの事遊び相手だって勘違いしてるけど?


「仕方ないなぁ。新参者だし、我慢するしかないか」


 そうそう、謙虚が一番ですよミシェル。

 今のところ、騎士というより話し相手でしかないしね。


 表に出ると準備の整っている護衛の方々。

 一人は二頭の馬の手綱を持っている。


 一頭は見るからに体格のいい馬で、黒い毛並みが艶々な子。絶対に軍馬だと思った。なんか、雰囲気が違う。

 もう一頭はその馬より体格が小さいけど、栗毛が綺麗な馬だった。


「リーシャ、こっちだ」


 旦那様に栗毛の馬を紹介された。


「少し年は上だが、その分頭も良いし落ち着いている。隣に大型な獣がいても怯えないだろう」


 確かにその通り。

 レーツェルがすぐそばにいて怯えられても困る。

 今レーツェルが側で興味深そうにぐるりと見ているが、落ち着いていた。

 まあ、彼らが肉食でないのは確認しているので大丈夫だと思うけど。


 ちなみに、レーツェル達は肉食獣ではないけど、食べられないこともないようだ。

 好みではないようだけど、それしかないなら仕方なく食べる――という感じのようだった。

 意外なことに好物は果物。

 特にドライフルーツが好きなようだ。

 ナッツ系も好き。

 色々分かってきた生態だけど、きちんと研究して発表したら怒られるかな? 隣国に。




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