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5.その顔は毒

「いかがでしょう? きっとリンドベルド公爵家のことを何もご存じないと思いますので、わたくしが色々お話して差し上げますわ」


 上から目線のお言葉に素直に頷くとでもお思いですか?

 あからさまな勧誘は警戒するのが基本ですよ?

 それとも、そんなことも分からないくらい馬鹿だとでも言いたいのだろうか。

 確かに、わたしの評判は散々だけど。


「わたくし、ここ最近まで留学していましたが、この度優秀な成績で卒業して戻ってまいりましたの。その経験も踏まえて、この先のリンドベルド公爵家の発展についてもお話ししたいですわ」


 おっと!

 優秀ってところがかなり強調されたわ。あからさまに馬鹿にされたのは良く分かります!

 しかも、この先のリンドベルド公爵家の発展とはね。

 なかなかここまで言えませんよ。

 ちょっと聞きたくなってきた。


 そもそも、優秀な成績で卒業して、他国を見てきた女性の話はためになりそうだとも感じてしまった。

 まあ、ちょっと話聞くくらい、いいでしょう。


「ところでヘルミーナ。まだ前時代的な采配でやっているとは、困り物だと何度も言っております。いいですか、今後はますます他国との交流が盛んになるはずです。それに合わせていかなければいけませんわ」


 ヘルミーナのこめかみがピクリと動く。

 なるほど、厄介な滞在人と言うわけですか。

 旦那様が家政はヘルミーナが取り仕切っていると言っていたし。

 ヘルミーナの態度がさっさと帰れっていってますけど、すごいですねぇ。

 これが世に言う空気を読まない女……いえ、空気を読めない女なのだろうかと見当違いな事を考えてしまいました!


 それに、もし本当に旦那様の隣は自分のものって思っていたらエリーゼの件を片付けて、自分が収まっていそうなものだけど……あぁ、留学中でしたっけ?

 いや、でもその前から知っていても……。


「二人がいなくなったとは聞きましたが、それはよろしかったですわね。お母様から口を出すなと言われておりましたので、わたくしが処罰してあげることが出来ませんでしたもの。でも、いざというときはわたくしがなんとかして差し上げましたわ」


 そのいざという時に留学していたわけですね。


「奥様が追い出したとか? まあ、それくらいはできないと困りますけどね」

「ロザリモンド、それくらいでやめろ。不愉快だ」


 不愉快なのは、旦那様では?

 何せ、理由があったとはいえエリーゼの事にわたしを巻き込んだ張本人ですしね。

 

 わたしは旦那様の腕をぎゅっと握って、会話を遮った。

 なんだ、とわたしを見る旦那様の視線を感じながらロザリモンド嬢に微笑みかけた。


「それはすごいですわ。わたくしは、外国に出たことがないのでぜひ色々聞きたいものです……そうね、ヘルミーナ。ぜひこの方を話相手として迎えたいわ」


 わたしがそう返すと、後ろの面々がギリっと奥歯を噛みしめるような顔をした。

 しかし、意外なことにロザリモンド嬢は目を細めてこちらを見るだけで、憤怒の如く顔を歪めることは無かった。


「奥様――しかし……」

「旦那様もよろしいでしょう? きっと反対はなさらないと思っております」


 旦那様はわたしの真意を考えているようで沈黙している。


「わたくしが話相手――?」

「ええ、その幅広い知識をぜひわたくしに教えて頂きたく思います。まだまだいたらないことが多くありますから」


 知識量は劣っていますと認めつつ、相談役――使用人として就任させようとした。

 なんだか面白くなさそうな顔になる。

 不愉快というわけではないようだけど、わたしの反応が思った通りではなかった事への苛立ちというか、不信感というか……なんとも表現しづらい。


「旦那様、よろしいでしょう?」

「君が良いと言うのなら、許可する」


 なんとなく、リンドベルド公爵家の血を感じた。旦那様ほど悪質な感じではないけど。


「では奥様、のちほどお部屋にお伺いしますわ」

「わたくし、旦那様と同じお部屋ですけど、人を招いてもよろしいのかしら」


 わたしの言葉に嫉妬で燃えているであろう方々が目に入った。

 その時、旦那様がわたしの肩に腕を回し、ぐいっと自分の方へ抱きしめて、そのまま頭の天辺に口づけた。

 

「駄目に決まっている。夫婦の寝室に入れるなど、許可できないな。応接室にしろ」


 甘く蕩けるような口調に、やりすぎだと抗議の視線を向けると、やるなら徹底的にやると言う雰囲気の旦那様がいた。

 

 あのですねぇ!

 やり合うのは、わたしなんですけど!?


「そのように手配しろ……ただし、明日以降だ」


 そうですね。

 この後、大量の家臣軍団との面談が待っていますからねぇ。


「ロザリモンド様、明日のお茶の時間にお会いしましょう。もちろん、そちらの方々も」

「よろしくてよ。でも、晩餐会にはわたくしも参加いたしますので、その時にまた会えると思いますわ」


 ふふっと笑いながらロザリモンド嬢がくるりと背を向けて去っていく。

 うーん、ここは指摘した方がいいのか。

 当主夫妻に背を向けるなんて、非礼も非礼なんだけど……。


 でも、誰も指摘していないので、とりあえず様子見ですね。

 

 旦那様はロザリモンド嬢の後姿を見送りながら、どこか苦々しい思いをしているみたいだった。


 ところで、そこの旦那様、あっちにもこっちにもわたしの後釜狙ってくるような人がたくさんいるんですけどね。

 ちょっとはその顔どうにかしてください!





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