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2.悪者はどちら?

「単刀直入にいこう。お互い暇じゃないのだから」


 はい、そうですね。

 わたしは暇のはずなんですけどね? どっかの誰かさんのせいで、なーんか仕事が増えております。あ、仕事じゃなくて義務ですね?


「確か旦那様は、わたしに対して最低限の生活を保証していましたよね? わたしの記憶違いでなければ、この間の件で貴族夫人の最低限生活になったと思っておりましたが?」


 そう、交渉に交渉を重ねて、時には少しだけ身体使って頑張りました。

 その結果、貴族夫人の最低限生活にしていただきましたよ。


 その辺はラグナートがわたしの味方をしてくれて、じゃあ身の回りの世話と食事は改善すると約束してくれた。

 食事は確実に改善され、今は旦那様と三食一緒にとっている。

 別邸の仕事場はどうしたと思ったら、居心地いいのでこっちに戻ってきたらしい。

 もともと立派な執務室があるし、ここにいれば別邸以上に至れり尽くせりだし。


 時々、皇宮での仕事が舞い込んで居ない時があるけど、もうその時は最高だ。

 いつもいなくていいですよと送り出したい。

 市井の言葉に亭主は元気で留守がいいって言葉があるけど、本当にその通り!


 で、話がそれたけど、貴族夫人の最低限生活にはお茶の時間があるのだ!


「お茶の時間はきっちり守っていただきます。それに、お茶に付き物のお茶菓子も義務の範囲ですよ」

「リーシャ、私は今君が箱入り娘だと実感したよ」


 えー、なんかすごく馬鹿にされてますけど?


「最下級貴族がどんな生活かは知っているか?」


 ま、まさか――……


「貴族夫人の括りわけは広義だな。私は最下級貴族に焦点を当てたんだ。それでも、十分すぎる位待遇は良いだろう?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! わたしはちゃんと公爵夫人としての義務を遂行しています!」

 

 ほら、家政とか家政とか、なぜか時々当主の仕事とかぁぁ!


「それは、貴族夫人の最低限生活を送るための最低限義務だ。だな、ラグナート」

「その通りでございます」


 うおーい! なぜそうなるの?

 わたしが理解力ないだけなんですか?

 もう、何を言っても勝ち目がないとわたしは敗北寸前だ。


「まあ、でも私もそこまで鬼じゃない。そんなにお茶菓子を食べたいのなら、茶会に参加でも主催でもすればいい――、そう思わないか?」


 えー、絶対嫌。

 社交とか一番面倒な義務だしね。


「そうだな、一回茶会に参加すれば一か月は茶菓子を保証しよう。茶会を開催するのなら半年――さらに皇室主催の茶会に参加するのなら、向こう一年は保証する」


 あー、そう来る?

 でも旦那様、わたしが皇室主催のお茶会に参加すると思っているんですか?

 意地の悪い皇女殿下が待ち受けているであろうお茶会に。

 普通の神経があったら行かないわ。まあ、普通の神経があれば皇室主催のお茶会断ることはしないけど。

 わたしは普通じゃないので行かないの選択一つですよ。


 うんうん、悩んでいるわたしに、旦那様がさらに続けた。


「もう一つ、公爵夫人としての生活を完全保証する案もある」

「なんですか、その案とは?」


 即座に飛びつくわたし。でも飛びついて、後悔した。

 旦那様の顔が悪役面だったから。旦那様は口角を上げた顔で言う。


「私と夜を共にする事、子供を産むこと」

「遠慮します」


 即座に言ってしまった。

 もちろん、公爵夫人として子供は産んだ方が良いのは分かってるけど、旦那様がなんか怖いんだよなぁ。

 何されるかわからない恐怖? そんなものを感じる。

 だって向こうは女性にすごく慣れているけど、こっちは初心者。

 しかも、信用ないし。


 旦那様の今の発言がどこまで本気なのか分からないけど、残念と肩をすくめている時点で半分以上は遊ばれていた気がする。


「で、それでどうする?」

「えーと……」

 

 実際考えてみると、そう悪い事じゃない気がする。

 お茶会に参加したり、お茶会開けばそれぞれお茶菓子が期間限定で保証されている。

 開催は面倒だけど、参加するくらいなら月一回やればいいし、それくらいは我慢するか。


 それに、旦那様はお茶会の規模については言及してないし……なにか企んでそうだけど。

 この間の件があって、ミシェル嬢からお茶会のお誘い来てるし、ちょうどいいのかも知れない。


「分かりました、とりあえずお茶菓子の件は、社交するということでお願いします」


 やはり甘い物は女性にとって重要な栄養分。

 これがないと生活に(いろど)りがない。


「一応聞いておきますが、お茶会は女性だけのお茶会だけに限りますか?」


 まあ、基本お茶会は女性が中心だけど、この間のエリーゼのお茶会みたく男性を呼んでも問題ない。

 実際、大規模な昼の社交ならば一応お茶会と銘打っても、その内容は夜の社交並だったりする。

 さすがに、そんな大規模なものはそうそう開かれないし、行く気もない。わたしだって主催したくない。


「いや、別に女の茶会に男が交ざってもいいが、ただし、男と二人きりというのは認めない」

「分かっています。そんな世間的に疑わしい行為はしません」


 それくらい常識ありますよ、旦那様。


「ほかの条件は?」


 とは言われても、準備も無しにあれこれ決めるのは良くない。

 こっちにだって考える時間をくれたっていいじゃないですか。


「旦那様、正直今は色々あって考える時間が少ないです。何かあったら、その時その時に契約更新しませんか? 旦那様にだってそのうち出てくるかもしれませんし」


 今がちがちに固められるとわたしに逃げ場がない状況になりそうだ。

 それはそれで困る。


「私としては後者の案が一番楽なんだが?」

「一つ言っておきますが、子供は産まなくていいって言ったの旦那様ですよ?」

「言ったが、でも子供を作らない方法はいくらでもある」

「? 良く分からないのですが、子供を作らないのにわたしと夜を共にする必要があるんですか?」


 ようは、子供作らないのにどうしてわたしが夜を共にしなくちゃいけないんですかね? って事なんですが。


「分かっていない顔してるな……」


 ええ、全く分かっておりませんね。

 なぜかラグナートが困った目で旦那様を見ていて、旦那様はラグナートに問いかけるような目で返した。


「まだ、子供――と言う事か……」

「申し訳ありません。こういう事は、さすがに私では――……」

「仕方ない……、誰か適任はいたか?」

「はい、今週中にこちらに来ていただく予定です」


 なんだろう、また二人して分かっている雰囲気だ。

 のけ者にされているような疎外感の中、侍女たちにこの二人がどんな話をしているのか分かっているのか視線で問いかけると、三人ともなぜか旦那様を同情的な目で見ていた。


 えぇ?

 これ、完全にわたしが悪者パターンじゃない?

 


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