14.これが本当の待遇です!
もう好きにしてって感じで三人にお任せして良かったです。
もう、最高です。
こんな扱いうけたのいつ振りでしょうね。
「奥様、いかがですか?」
「気持ちいいです――……」
本当にすごいですよ、ライラ。
実技一位というのは伊達じゃないんですね。
寝そうです。
リンドベルド公爵家に嫁いで、間違いなく今が一番公爵夫人としての待遇を受けていると断言できる。
至れり尽くせりとはまさにこの事。
服をはぎ取られ、まずはお風呂に入れられた。
お湯にも美容にいいものなのか乳白色の入浴剤のようなものが入れられていて、丹念に塗りこめられる。
爽やかな花の香りが良い匂いだ。
ライラが中心となって動いているけど、こういう事は本当にライラは得意だ。
下女服を纏って三人といた時も、一番ライラが美容に関して詳しくて、これ使えあれ使え、手入れの順番は――と正直面倒だなぁって思ってたけど、サボると即座にバレるので、真面目にやっていた。
リンドベルド公爵家に嫁いで、侍女たちから何もしてもらえなかったので、面倒でも自分でやっていたけど、本来はこうしてやってもらえる立場なんだよなぁって思うと、やはり権力というのは素晴らしいと思ってしまう。
伯爵家の異母姉は侍女にしてもらっていたようだけど、今なら分かる。
これ、本当に癖になる。
美容にそこまで命かける意味を見いだせなかったけど、これなら毎日でもやってほしい。
超楽、そして気持ちいい。
あー、これが天国か……なんて思いながら特別待遇を受ける。
これよ、これ!
わたしが望んだ生活というのはこういうものだ!
なんだか、最近忘れがちだけど、わたしが望んだのは三食昼寝付きの最低限の生活であり、堕落生活の満喫だ。
なんでかその最低限生活が貧民層の最低限生活に基準があわされていたけど、それおかしいでしょ!
公爵家に嫁ぐのに、誰がそこに照準当てるんでしょうね。
まあ、貧民層の最低限生活よりはましな生活送れてはいたけど、絶対何か違うでしょ!
雨風凌げていれば上等とか言っちゃうラグナートもどうかと思うけど、家畜飯食べさせる旦那様も大概だと思う。
あー、だからか。
あの二人妙に気が合っているようだった。
似たもの同士、通じ合うものがあるんですね。
わたしは全く理解できませんけど!
「首筋から肩にかけて、堅くなっていますね」
ライラがマッサージを施してく。
ぐっ、ぐっ、と押されて、痛気持ちいい。
あっ、そこ! うぅ、効きますねぇ。
「頭皮の方もほぐしますよ」
頭皮のマッサージなんて初めての経験だけど、これまた気持ちがいい。
なんだか、毛穴という毛穴から洗われていくようだ。
「いかがですか?」
「最高です……」
「頭皮マッサージはあまり重要視されていないのですが、頭皮をほぐすことで毛穴を綺麗にし、美しい髪を保てるようになります。それに、これは最近分かってきたことなんですが、頭皮をほぐすことで顔のしわやたるみを防止できるようなんですよ。奥様はまだお若いのですが、ケアは早くからやっておくに限ります」
うんうん、それは分かる。
死にかけてからどうにかしたって、手間も時間も膨大にかかるからね。
早いうちから対処するからこそ、最悪の事態を防げる。
それは美容も領地も同じだね。
「奥様、髪のオイルはどれにしましょうか?」
もうなんでもいいです。
気持ちよくて寝そうなんで。
うっとりとしながら適当に選ぶと、それを髪に塗り込んでいく。
なんでもこれを塗ってさっと洗うと、乾かしたときにつやつやのさらさらになるんだとか。
最近発売されてから一気に女性の間で広まって、現在は生産が追い付いていない代物らしい。
そんなものが簡単に手に入るとか、公爵家は違うわぁ。
というか、ライラさん。
色々詳しすぎですよ。
本当に好きなんですねぇ、こういう事。
なんだか、そのうち市中に美容関連のお店とか開きそうな勢いなんですけど。
「奥様、寝る前にお風呂から上がってこちらに横になって下さい。顔もきちんと保湿しなければ」
「はひぃ……あー、それとリーシャって呼んで……」
程よく身体が温まり血行が良くなる。
しかも身体もマッサージでほぐされて、わたしはもうこの三人の言いなり状態。
身体ぐらい自分でふけるけど、ふわふわのタオルで丹念にぬぐってもらう。
その後、導かれるまま長椅子に横になった。
「少し冷たいですよ」
ヒヤリとした物が顔の上に貼られていく。
でも、火照った身体には気持ちがいいくらいだ。
「このまま、少しお休みください」
そう言われなくても寝ますとも。
お休みなさーい。
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