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4.遊び人と友人

「目的……まさか本当に観光したかっただけって言わないよね?」

「さすがに国境超えてまでそれはないでしょう。もしそれだけだったら、逆に驚きますよ」

「アンドレ様は、交友関係は広いですから、ありえなくもないですが……」


 へー、交友関係広いんだ……。

 まあ、遊びまわっているらしいし、知り合いとか友人とかは多そう。少なくとも、旦那様よりは。


 知り合いという面では旦那様だって、たくさんいるだろうけど、果たして友人レベルってどれくらいいるんだろう。


「まあ、義理の娘とクロード様抜きで親交深めたいって思ったら、国から出ないと無理でしょうし……」

「そうだよね。わたし、基本的に皇都邸から出ないし」


 もし外に良く出かけるのなら、偶然を装って近づくこともできるけど、わたしは基本引きこもり。

 だって知り合い少ないし、噂の的になりたくない。

 

 ただ、最近はミシェル経由の知り合い増えたし、お茶会の誘いは受けてもいいかなぁなんて思ってる。

 結婚当初からずいぶんと心境が変化して、わたし自身少し驚いていた。


「僕、思うんですけど……この件、皇太子殿下も関わっていますよね? おそらく」

「タイミング的に疑わない方がおかしいわね」

「アンドレ様と、一体どこでご一緒したのでしょうね?」


 確かに……。

 だって、皇太子殿下は将来のために遊学中で、アンドレ様は遊び人。


 実はアンドレ様って、国内よりも国外にいる方が多いんじゃないかって疑った。

 そもそも、生存しているのに、わたしが社交界デビューした頃にはアンドレ様は自国の社交界に姿を現したことはないはずだ。


 さすがに地方までは良くわからないが、少なくとも中央では。

 旦那様と仲が悪いから遠慮してる、というのはあるだろうけど。


 それでも、旦那様とは違う人脈もあるだろうに、そういった話は聞かなかった。 



 結局――。


 旦那様の御父上に関して、三人いればどんな突飛な案でも、何か出てくるかと思ったが、実際はとくにこれと言った収穫はなかった。


 国境では検問が敷かれていたが、アンドレ様がいたおかげかあっさりと通過。

 むしろ、はじめから話が通っていたような手際のよさ。


「わたし、国を出たことがないからちょっと新鮮かも」

「僕はありますよー。この国も通りましたし、他にもいろいろと」

「そうなんだ? 聞いたことなかったわ」

「今のところ、話題にもなりませんでしたからね」


 別に隠していたわけではないけど、たまたま機会がなかっただけ、そう言う事らしい。

 確かに、故意に隠していた感じではなかった。


「それなら、ミシェルにも頼れるのね。よろしく」

「いえ、通っただけで滞在したことはないと言いますか……、まあがんばりますよ。クロード様が来るまでは」


 そうそう、ぜひ頑張っていただきたい。

 わたし一人ではロザリモンド嬢の相手もアンドレ様の相手も疲れそうなので。


 馬車は軽快な音をたて順調に進んで行く。

 国境を越えすぐの町で、一度休憩で降りたが、なんというか田舎町、という感じだ。

 旦那様の領地と陸続きになっているから栄えているのかと思えば、そうでもないらしい。


「意外と地味ですわよね。でも、都市部は華やかですわよ」

「ロザリモンド嬢、ちょっとお静かに」


 道行く人に聞かれていますので。

 ちょっと気まずいんですよ。


「でも、今回のお祭りって国をあげてのお祭りよね?」

「そうですわ。ですが、結局は王都とその近郊だけが、お祭り仕様になる感じです」

「さすがに建国祭レベルにならないと、国全域でのお祝いはしないんじゃないかな?」


 後ろから突然アンドレ様が会話に入ってきた。

 ニコニコと微笑んでいる姿は、顔が旦那様に似ている分すごく慣れない。

 旦那様の笑みは、絶対何か考えているだろう腹黒い笑みなのに対し、アンドレ様は害のないような笑み。

 しかし、これに騙されてはいけないと本能が囁く。


「何かありましたか?」


 ミシェルがさり気なく、わたしとアンドレ様の間に入るように立った。


「ああ、ちょっとこの後の予定を伝えにね。この後少し進んだら、知り合いの貴族がいるから、今日はそこで休ませてもらう事になってる」


 さすがリンドベルド公爵家前当主というべきか、それとも、先ほどの考え通り、国内外で友人が多いのか。


「そうなんですか……あの、一応聞いておきますが、晩餐は共にされる感じですか?」


 貴族の家と聞いて、もしやと尋ねる。

 普通は、客を歓待するために夜に食事を共にすることが多い。

 できれば、各自がいいんだけど。しかし、それは叶わぬ夢だった。


「当然! 実は私に娘ができたって自慢しちゃって、見たいって言われちゃったんだよね!」


 言われちゃったんだよね! じゃない!!

 ちょっと、待って! わたしドレス持ってきてないんだけど。

 

 今着ているのは、当然晩餐に参加できるようなドレスではない。

 そもそも、アンドレ様は先に行ってちょっと観光しよう! みたいな軽いノリだった。

 つまり、祭り見物の一般観光客的な感じで過ごすのだと思っていた。


 そりゃあ、こちとら貴族ですけど!? だから他の貴族の邸宅にお世話になるのは普通に考えればありですけど!


 だけど、着替えもない状態で、貴族の邸宅を訪れるとか、どんな非常識だ。


 内心慌てていると、アンドレ様がそれを見透かしてかしてにっこり笑った。


「あ、大丈夫だよ! その邸宅にドレスあるからね」


 ここで、良かったと落ち着くべきか、それとも用意周到ですねと皮肉るべきかちょっと悩んだ。それとも、わたしのサイズいつ知ったんですか? と尋ねるべきか。


 いや、それを聞いて、はきはき答えられたら、それはそれで嫌だけど。


「あ、もちろんロザリモンドのドレスも準備してもらっているよ」

「それはありがとうございます」


 ずいぶんと気が回っていますね。

 そもそも、ロザリモンド嬢がついてきたのは結構予想外だと思っていたのに、どうやらアンドレ様は皇都邸の内情をよくご存じのようだ。


 わたしが行くなら、ロザリモンド嬢もついてくると。

 大体、なぜロザリモンド嬢がリンドベルド公爵家の皇都邸にいると知っていたのだろうか。

 

 内通者でもいるのだろうか……。

 それとも、一応旦那様が知らせたのかも。

 親戚が何をやろうとしていたのかを。注意勧告のつもりで……いや、ないか。


 わたしは即座に否定した。


 絶対弱みは見せないだろうなと。

 領地での件は、あれは親族からの攻撃だった。それを未然に防ぐことができなかったのは旦那様の手落ちともいえる。


 仕方がなかった面もあるけど、アンドレ様には知られたくないだろうね。


「ところで、そっちの彼の分は準備してもらってないけど、ドレス着る?」


 アンドレ様がニコニコと笑って、ミシェルを上から下まで見て聞いた。

 ミシェルはおぉっと、ちょっと感動したようにうなずく。


「ぜひ、お願いします!」


 ちょっと、ミシェル! 遊びじゃないんだよ、君はね!




お時間ありましたら、ブックマークと広告下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いします。


現在新作の小説アップしております。

興味がありましたら、暇つぶしにどうぞ。


こちらの更新もがんばります……。


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