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お題シリーズ

婚約指輪 紛失

作者: リィズ・ブランディシュカ



 探し物はなんでしたか?

 見つけにくいものだったのですか?


 なんだかとっても聞き覚えのあるフレーズを口ずさみながら、我が家にやってきたのは、探し物屋さんという変わったお仕事の人だった。


「今日はどういった探し物をご依頼でしょうか」

「実は、夫にもらった婚約指輪をなくしてしまって」

「なるほどなるほど、それは大変ですね!」

「色々な所を探したんですけれど、見つからないんです。どうか探し出してください」

「分かりました! お任せを!」


 その探し物屋さんは安心させるように微笑んで、どんと胸を叩いた。


 私は、少しだけ肩の荷が下りたような気持ちで、探し物屋さんに探し物を任せる事にした。


 さっそく家の中に入った探し物屋さんは、私の話を聞きながら探し物を始めた。


「奥さんの普段の行動パターンを教えてもらえませんか?」

「はい、朝起きた後はまず」


 最初に、まず私の行動パターンを分析して、婚約指を探し出そう、という事になった。


 けれど、見つからない。


「それでは、ペットや子供さんなんかはいらっしゃいますか」

「ペットはいません。でも子供はいます。今は幼稚園に行っていますけれど」

「おもちゃ箱とかも探してみましょう。子供はキラキラしたものが好きですからね」


 なるほど、婚約指輪というものを知らない子供が玩具と勘違いして、遊んでいたなんて話はありえそうだ。


 私は子供がよく使う棚や箱を、探し物屋さんに教えていった。


 しかし、見つからない。


 なんだか申し訳なくなってきた。


「では、掃除機やゴミ箱の中を点検してみましょう。床掃除をしている時に吸い込んでしまったなど、考えられるかもしれません」

「分かりました」


 それからもあちこち探してみるのだが、見つからなかった。


「すみません。これだけ探しても見つからないなら、もしかしたら、ゴミと一緒に出してしまったのかもしれません。何かの拍子に落としたものを、きっともう捨ててしまったんです」

「いけません奥さん。大切な物なのでしょう。だったら、諦めずに探すべきです」


 そう言われても、もう思い当たる場所などない。

 これ以上探せる場所など想い浮かばなかった。


「では、最近行ったお店などはありますか?」

「地域のスーパーや、親戚のお家です」

「なら、アレルギーなどはお持ちですか」

「え? いいえ、私はもってません。あっ」


 そこで私は思い出した。

 つい先日、訪問した親戚の家で、掃除の手伝いをすることになったのだが、その訪問先の家の人が金属アレルギーを持っていた。


 直接私の指輪が、相手のに触れ合う可能性は少ないと思う。

 しかし、協力して重い物を運び出す事もあったため、気を使って指輪をはずしたのだ。


「思い当たる節があるようですね。電話をかけてみましょうか」


 私はさっそく、その親戚のお家へ電話をかけた。

 すると、指輪を見つけてちょうどこちらに連絡しようとしていたところだったようだ。


 何もせずとも、指輪は私の元に戻る運命だった。

 探し物屋さんに頼まずとも、良かったのだ。


 私はものすごく申し訳なくなった。


「すみません、こんな事のためにわざわざお仕事を依頼してしまって」

「こんな事などと言ってはいけませんよ。大切な物のために、力を尽くすその姿勢は尊いものです。旦那さんはさぞ、良い奥さんを見つけられましたね」


 探し物に人の手を借りる必要はなかった。


 けれど、探し物を通して、良い思い出ができたようだ。



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