ゼインお兄様
真後ろから聞こえた懐かしい声にすぐさま振り向く。振り向いた先には私に向かってヨッと手を上げながらこちらに近づいてくるお兄様。
「ゼインお兄様!!」
ゼインお兄様は私の6歳年上で18歳。普通だったらまだ生徒なのだが、今から3年前に学園で学ぶことがもうないと判断され卒業した優秀なお兄様。卒業した後は修行として旅に出ていて約3年ぶりに会うお兄様に思わず抱きつく。抱きつくといつも様に抱きしめ返してくれて、オデコにキスもしてもらった。
「なんだ、サラ。まだ甘えん坊治ってないのか??」
「ふふ、だってサラはお兄様が大好きなんですもん!」
抱きしめられるのも、キスされるのも、家族にしか許してない愛称で呼ばれるのも3年ぶりなので思わずニマニマとにやけてしまう。人前と分かっているのに、顔がさっきロン・ベリッツに比喩された冷徹公爵令嬢の顔に戻らない。ニマニマして全然元に戻らないのでお兄様のお腹に顔を埋める。流石お兄様、三年前も筋肉凄かったがさらに凄くなってるしまた身長伸もびてる。普通に立っているのに埋める場所がお腹だ。
「殿下、お久しぶりです。話は聞きました。そこのご令嬢さんが言ってるのが証拠だと言われましたが俺からしたらそれは証拠だとは言えません。」
「え、リズは……う、嘘なんていってませえん!サラレイリーン様のお兄さまぁ?信じてください!」
「いえ信じません。まず、うちのサラは殿下やそこの取り巻きさんはまず名前で呼びません。男性は絶対にフルネームか、家名です。男の名前を口にするのはほぼ俺だけです。それにサラは俺や家族、陛下……のみにこうやって甘えます。冷徹公爵令嬢と言われるぐらいに周りに対して冷たい対応するサラが『レオン様キュール様ロン様は私のものよ!』というと思いますか??これが証拠です………と、言いたいとこですが第三者から見て何故か証拠にならないので俺のスキルを使いましょう。」
リズ・ウィリアス男爵令嬢がゼインお兄様に甘えた声で訴えてきた事にカチンときたが、流石お兄様一刀両断。だいすき。
ちなみにこの世界では魔法やスキルといったものがある、魔力がなければ魔法は使えないし勿論スキルが無ければスキルも使えない。上位貴族になるにつれ珍しいスキルや高い魔力量を持った子が産まれたり、下級貴族になるにつれ魔力が少なかったりスキルを持ってなかったりんりするが平民でもまれにスキルや魔力を持って産まれたりする。そのためほとんどの貴族やスキルや魔力を持った平民は7〜18歳までがこの学園で色々と勉強するのだ。
「え、す、スキル?」
ゼインお兄様もスキル発言にビクつく男爵令嬢。
「俺のスキルは特別なんで何のスキルか口外するつもりないが、陛下もお墨付きのスキルです。サラが本当に虐めを行ったのかは俺のスキルを使えば確実に分かります。何だったら陛下の前で検証したっていい。だからいつサラに虐められたのか教えて下さい。すぐ調べます。うちのサラが汚名をかけられてるんですから。すぐ対処しないとね。あ、そうそう……もしこれで貴女が嘘をついていると分かれば不敬になりますよ」
「ふ、けい?」
「そう、不敬。サラは王家の血が流れているダインベル公爵の娘であんたは男爵令嬢。虐めてるって話が嘘だって分かれば不敬の対象となって処罰がある。でも、虐められたって公衆の面前で言い張ったんだからきっちり調べないとね!うちのサラの汚名にもかかるし!……が、まぁ今日は新入生歓迎パーティーだ。これ以上時間とるのは新入生達が可哀想だから検証するのは後日にしましょう……サラ」
ゼインお兄様が自分の代わりに淡々と話している間、ひたすら抱きついてお兄様の筋肉を堪能していたが呼ばれたので中断する。
「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。せっかくの歓迎パーティーでお見苦しいものをお見せして申し訳ありません。私は人前で言われたくない事、ありもしない噂などで心を痛めてしまったのでこれにて失礼しようと思います。皆さませっかくですので歓迎パーティーを楽しんでいってくださいませ。」
「あ、そうそう。そこの2人。取り巻き。君達も今日の騒動お家に抗議するから楽しみにね?勿論殿下も条件破ったみたいなんで俺からしっかり父と陛下にお伝えしときますね。それでは失礼します。」
ゼインお兄様にエスコートされながら会場を出る。明日も学校だか、今日色々会ったしお兄様も帰ってきたので休んでも問題ないだろう。ちゃんと精神的に傷ついたとアピールしたし。
会場に残された殿下達や他の生徒達は、冷徹公爵令嬢と比喩されるほど人に対して冷たかったサラレイリーンの態度の変わり様に、現実として受け止めれず暫くボー然立ち尽くしていた。