婚約(仮)破棄
「サラレイリーン・ダインベル……貴女との婚約を今ここで破棄する!そして新たに、リズ・ウィリアスと婚約することをここに宣言する!」
ガリオン学園で開かれた新入生歓迎パーティで突然行われた宣言。壇上の上にはアバルト国の王太子でもあるレオン・アバルト殿下とその取り巻き……同じ公爵のキュール・サウザーと侯爵のロイ・ベリッツ。そして殿下の隣にそっと寄り添う最近噂の男爵令嬢。
「……はぁ」
一昨年辺りから殿下と男爵令嬢との噂を聞いていたがまったくもって気にしては無かった。むしろただの噂ではなく本当にデキていて欲しいっと願っていたぐらいだ。っというもの私と殿下の婚約は(仮)であって、正式に発表されているものでもない。にもかかわらず何故殿下は公衆の面前で婚約破棄と言ったのか……昔から思ってはいたがあまりのアホさに思わずため息が出た。
代々アバルト国の王家から産まれるのは男が多く、勿論公爵家でもあるダインベル家も男が産まれることが多い。それが150年ぶりに女が産まれたと世間を賑わせたのがサラレイリーンこと私だ。そもそもこの婚約は幼い頃は妹、大人になってからは娘と熱望していたがその願いが叶うことが出来なかった陛下が公爵であり従兄弟でもある父にお願いしたのがきっかけだ。因みに何故婚約(仮)かというと、娘欲しさに『息子の嫁は俺の娘だ!!』とはっちゃけてしまい私が産まれた次の日に、私より先に産まれていた殿下との婚約話を父持ちかけたのが原因だ。
勿論父は激怒&拒否したが何度も何度もめげずに頼まれる婚約話に拒否し続けて3年目。結果、条件付きであればっと婚約をOKしたのだ。
(ちなみにこの婚約を知らされた時に将来、父や兄と結婚できないという現実を突きつけられ衝撃で自分が転生して生まれ変わった事を知った。)
その条件というのも難しい事ではない。
その1)娘もしくは殿下に好きな人が出来たら破棄。ようは、娘と殿下がお互いを想い合っていればOK。
その2)ガリオン学園を卒業するまで婚約は仮とする。お互いがお互いの同意なしに勝手に婚約したと公表すれば婚約は破棄。
その3)婚約(仮)破棄する際も内密にし公表しないこと。
たったこれだけだ。私の父が私と殿下のことを想って作ったたった3つの条件を殿下は破ったのだ。
「サラレイリーン、殿下が婚約破棄と仰っているのにため息だけ吐いて無視するとは何事だ!」
「キュール様!きっとサラレイリーン様は婚約破棄に落ち込んでいらっしゃると思うの!責めないであげてください!」
「さっすがリズ!そこの冷徹公爵令嬢に虐められていたっていうのに、なんて優しいだ!ほんとそいつにも見習って欲しいよ!」
「ロイ様、優しいだなんて……皆様が一緒に居て支えてくださったお陰で今の私がいるんです!」
「………は?」
なんだこの茶番はっと思ったら聞き立てならない言葉が聞こえた。ガリオン学園は7歳から入学し18歳で卒業するので生徒人数はかなり多い。(ちなみに私や殿下達は12歳だ)新入生歓迎のパーティーなのでこの会場には新入生以外にも多くの生徒がいる。その会場の中心……数段高い壇上で声高々に宣言したものだから生徒の視線は私と殿下注目していたのだ。
誤解を解くために一歩前へ進む。
「ウィリアス男爵令嬢さん、私が何故婚約破棄で落ち込んでいると判断するのですか?その言い方では私が殿下をお慕いしてるように聞こえるのでおやめ下さい。ロイ・ベリッツ様、私が冷徹公爵令嬢と周りから呼ばれているのは知っております。それは別にどうでもいいですが、家名に傷が付きますのでしてもいないのに虐めをしていると嘘をつくのもおやめ下さい。」
「「「は?」」」
「父が出した条件を破ったのは殿下なので公衆の面前ですが誤解を解くためにお話ししますが、私と殿下が3歳の頃に婚約が決まりました。が、それは(仮)です。どちらかがお慕いする人が出来たら婚約破棄をする、(仮)なので完全に婚約はと決まるまでは公表しない。また、婚約破棄する場合も(仮)なので公表しない……と、陛下から婚約のお話が出た際にこの条件付きであればと父がお受けしました。私自身がなかなかお慕いする方が出来なかったので婚約(仮)破棄出来なかっただけであって殿下の事をお慕いしてるわけではありません。あ、殿下。父が出した条件を最悪な形で破ってしまった件については陛下にきちんと抗議させて戴きます。」
「ふぅ」と一息ついてリズ・ウィリアス男爵令嬢に視線を合わせる。すると態とらしくビクつくので思わず笑いそうになってしまう。
「それと、私がリズ・ウィリアス男爵令嬢を虐めていると噂を聞きました。こちらで調べると貴女ご本人が周りに言いふらしていると分かったのですがどういうことでしょうか?」
「わ、わたしは本当にされた事を……レオン達ににそ、相談しただけです!」
「された事とは例えば何でしょうか?私が聞いた噂では『男爵令嬢の分際で、私の未来の旦那様レオン様に近づくんじゃないわよ!』と、泥をかけたり『レオン様キュール様ロン様は私のものよ!』と階段で突き飛ばした聞きましたが?」
「サラレイリーン、それは噂ではなくお前がやった事実であろう!!白々しい嘘はやめろ!!」
リズ・ウィリアス男爵令嬢に話しているのに殿下の横槍が入る。……邪魔だ。
「事実?殿下、事実とは何を根拠に仰っているのですか??証拠はありまして?」
「リズ本人が言ってるのが何よりの証拠だ!」
「ぶ!!!で、殿下……それは証拠じゃないですよ、どちらかというと言い掛かりです……クックク」
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