表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おさかなさん

作者: 阿弖流為

 ぼくのところにおさかなさんが来ました。ちょっとぶさいくで丸っこいおさかなさんです。おさかなさんはつぶらな瞳でぼくのことを見ています。たぶん、ぼくとおさかなさんは仲良しになれたのだと思います。


 おさかなさんはいつもぼくの近くにいます。ぼくが寝ていると、時々ペタペタとぼくの上を歩いたり、ぼくの腕や足に寄りかかったりします。ひんやりとしていて、ちょっと生臭いです。


 通りがかりのおじさんが「その魚、旨いんだけど食わねえのか? 勿体ねえなあ」と言いました。


「たべるの?」


 おさかなさんがちょっと怯えたように聞いてきました。すこし声が震えてます。


「食べないよ」


 ぼくはそう答えました。ちょっと安心したようにつぶらな瞳でぼくのことを見ます。でも、おさかなさんはまだちょっと不安そうです。


「ほんとうに?」

「うん」

「でも、おいしいんでしょ」

「そうらしいね。でも、別に食べたくないし。友達でいたいし」

「ともだち?」


 うん。たぶん、友達になれたのだから。でも、おさかなさんは、通りがかりのおじさんの言葉がまだ心に引っかかっているみたい。


「でもね。どうしてもたべたいのなら……いいよ?」


 こんなに丸っこくて、ひんやり気持ちよくて、ちょっとぶさいくでかわいいおさかなさんを、そんな風にできるわけ無いじゃないか。ぼくはその代わり、おさかなさんを手の上にのせて、その丸っこいからだに頬ずりしました。やっぱりひんやりしていて、ちょっと生臭かったけれど。


 おさかなさんは、ようやく安心したみたいで、ぼくのてのひらの上でまどろみ始めました。ぼくはそんなおさかなさんを、そっとベッドのわきに寝かせます。寝ている姿もかわいいけれど、やっぱりちょっと、おさかなさんはぶさいくです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ