一話 契約
ある男は力を欲した。
男の名はハルト。
ハルトには夢があった。幼少期、大好きな母親から聞かされた英雄譚に出てくる騎士だった。
どんな相手にも屈さず王家や国を守り抜き、国民から信頼される、そんな夢があったのだ。
だが彼は騎士にはなれなかった。
国の兵士になり、剣術や槍術などを学んだが才能があまりなく、平凡だったのである。
それでも彼は特訓を続け、盗賊や違法組織、人や家畜を襲うモンスター、人を食べるトロルやオーガなどの蛮族から国民を守る小隊をまとめる小隊長の地位にあがる事になった。
その小隊は、生けるものを堕落させる悪魔を崇拝する邪教徒との戦いにて勝利する。
しかしその教徒達の命によって呼び出された上位悪魔によって壊滅、ハルトを含めて全員が死亡という扱いになった。
しかしハルトにだけ死ぬ間際に、その上位悪魔に契約を持ちかけられた。
「貴様の身体を我に差し出せ、そうすれば命を助けてやろう、フッフッフ…。」
「俺の体をお前に?誰が悪魔の言う事なんか信じるかよ。」
「フッフッフ…。我を貴様の身体に降ろせば、貴様が見たこともないような力が手に入るぞ?」
「…!」
ハルトの失いかけてた意識がパッと戻ったような気がした。そしてそれを悪魔は見逃さなかった。
「フッフッフ…。どうやら契約は成立のようかな?」
「そそっかしいぞ…!まだ俺は何も言ってねぇ!」
「そうだな…フッフッフ…。だか時間はないぞ?貴様が死ぬか、我が魔界に帰ってしまうかどっちが先かな?」
「クソッ…」
「安心しろ、契約をして貴様に死なれては我もただでは済まないからな、悪いようにはしないぞ?さぁどうする?」
「わかった…。」
「賢い判断だ。それでは契約に取り掛かろう…」
ハルトの体が墨を被ったように真っ黒くなると同時に痛みを感じなくなる。そして自分の中に鎖のような物が着いたような感じがした後に彼は疲労で眠ってしまった。