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宣戦布告⑧

「あらら、わりとあっさり潰されたわね」


 天瑞宮に戻った織音がそう言うと蓮夜と華耶は視線を交わした。


「もう一回行ってくるか?」


 蓮夜の言葉に織音は苦笑を浮かべつつ首を横に振った。


「大丈夫よ。今回は宣戦布告よ。とりあえず八悪(やつあし)は十分役目を果たしたからね」


 織音のいう八悪(やつあし)とは、もちろん暁賢で暴れた蜘蛛にも似た物体である。織音の霊力を物質化し命ある存在のように織音が動かすことも出来るし、簡単な命令を与えてそれに従い動かすことも出来る。


「でもあっさり潰されたんだろ?」

「大丈夫よ。令貴夢伊切命(れきむいきりみこと)は片付けたから」

「ほう」


 織音の言葉に蓮夜は感心したようである。蓮夜の反応に織音は小さく微笑んだ。


「でもお姉様、令貴夢伊切命を片付けたからといって私達の宣戦布告としてはインパクトが弱いんじゃないかしら?」

「華耶の言う通りね。だから……」


 ここで織音はにっこりと嗤った。


 蓮夜も華耶も織音の笑顔に小さく頷いた。


 織音の覚悟を二柱(ふたり)は、しっかりと感じ取っていた。天津御神(あまつみかみ)は決して今まで蓮夜達が蹴散らしてきた相手よりも強大である事は理解している。そのためにはどのような手であっても躊躇するつもりはないのだ。


 織音が仕込んだ内容は、蓮夜も華耶も詳細はわからない。ただ、生半可な対応をするつもりはないことは確実なのだ。


(織音は手を穢すことをためらうつもりはないと言うことか……ならば俺は)

(お姉様の覚悟に私も応えないとね)


 蓮夜と華耶は視線を交わすと互いに頷いた。織音を守るために、そして自分たちの尊厳を守るためにもちろん躊躇などするつもりはない。たとえ旧知のものであってもそれは変わらない。


「華耶、すぐに各世界に送り込んでいる配下の者達を呼び戻してくれ」

「ええ、もちろんよ。蓮夜もよ」

「もちろんだ」


 二柱(ふたり)はそう言うと各世界へに送り込んでいる配下の者達へ思念をおくった。



 *  *  *


「気がつかれたぞ!!」


 令貴夢伊切命の目が開いたときに喜びの声が上がった。喜びの声をあげた者達は治療士達である。

 横たわる令貴夢伊切命の周囲に数人の治療士達が手をかざしていた。


「令貴夢伊切命様は爆発に巻き込まれたのです」

「爆発……やはりあれは……そういうことか」

「はい」

「ほ……かの者た……ちは……?」


 令貴夢伊切命の問いかけに治療士達は一斉に沈み込んだ。


「……そ……うか」


 令貴夢伊切命のつぶやきに治療士達は慌てたように口々に言う。


「令貴夢伊切命様だけでも助かって良かったです!!」

「ええ、あの爆発で助かるなんて奇跡(・・)です!!」

「さすがに四肢は欠損しておりますが、すぐに再生させますのでお待ちください!!」


 治療士達の言葉に令貴夢伊切命は自分の体へと視線を向けると驚きの表情を浮かべた。令貴夢伊切命の四肢はなく、腹部の三分の一が失われていたのだから無理もないと治療士達は思ったのである。


「大丈夫です!! 我々にお任せください!!」


 右手のあった位置にいる治療士の一人がそう言うと、手の輝きが増した。すると令貴夢伊切命の右肩口から失われていた腕が右肘辺りまで再生した。


 令貴夢伊切命はその様子を無表情に見つめている。


 治療士達は代わる代わるに令貴夢伊切命に治療を施していく。四肢が再生されていくのを見て令貴夢伊切命は治療士達に見えないように嗤った。



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