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宣戦布告⑥

「さて、蓮夜が令貴夢伊切命(れきむいきりみこと)の相手をしてる間に……」


 華耶の指先に蒼い炎が現れる。


 華耶は手を振るとその動きに従って炎が放たれた。


「ぎゃあああああああ!!」


 華耶に斬りかかってきた衛士が炎に灼かれて絶叫を放った。


「あらあら、わざわざ灼かれにこなくてもいいのにね」


 華耶の呆れたような声に衛士達は怒りを発するが、仲間の救助を優先することを選択したようである。

 華耶とすれば別にその衛士を灼こうなど考えてもいない。単純に火を放とうとしただけのことなのだ。その射線上にたまたま斬りかかった衛士が巻き込まれたに過ぎないのだ。


 パチン


 華耶が指を鳴らすと衛士を灼いていた蒼い炎が跡形もなく消え失せた。


「さっさと治療してあげたら?」


 華耶の言葉に衛士達は顔を見合わせる。華耶が炎を消した意図を計りかねていたのだ。


(蓮夜も華耶……さすがね。ここまでは計画通りね)


 織音は蓮夜と華耶の2人の行動に心の中でうなづいた。


(私も始めるとしましょうか)


 織音は気配を最小限度に消して目的の術式を構築する。令貴夢伊切命(れきむいきりみこと)は連夜に意識を集中しているし、他の衛士達も華耶から意識を外す事はできない。この状況で織音が術を展開していることに気づくことなどできないのだ。


(よし、これで完了っと)


 織音は心の中で小さく呟くと連夜と華耶へ視線を向ける。


「さて、令貴夢伊切命……続きをやろうか」


 連夜はニヤリと嗤うと戦いの再開を告げる。その声に嘲りの感情があったのを令貴夢伊切命は気づくと表情が歪んだ。


(いやいや、こいつってこんなに扱いやすいやつなのか。こりゃ利用できるかもしれんな。織音の仕込みも終わったということだし、ここらで切り上げるか)


 連夜は心の中で呟く。令貴夢伊切命の表情の歪みは連夜への怒りゆえであるのは当然である。天津御神である自分が元地津神に侮蔑を受けるなど大いに自尊心が傷付くというものであろう。

 それが即座に見抜かれるレベルで素直に顔に出ることは、連夜とすればありえないレベルの失態である。こういう自尊心が高く単純なやつはは利用価値があると連夜が考えるのも不思議なことではない。


「連夜、華耶、2人とももういいわ」


 そこに織音が声を発した。


「逃げられると思っているのか?」


 令貴夢伊切命が織音に言う。織音の言葉を撤退と受け取ったのである。


「何を入っているの? 私は別に逃げるなんて一言も言ってないわよ。希望的観測はやめておくことね」

「希望的観測だと?」

「ええ、お前は連夜に勝てないことを理解しているのよ。だから、私の言葉を自分たちに都合よく解釈したのよ。出なければ説明がつかないわ。それにそちらの衛士達もそうよ」


 織音の言葉に令貴夢伊切命はギリッと唇を噛み締めた。


「連夜と華耶ではなく私がお前達の相手をすると言っているのよ」

「お前が?」

「ええ、より正確に言えばお前達の相手をするのはこれだけどね」


 織音がいい終わると同時に織音の頭上に直径3メートルほどの黒い球体が現れる。そしてすぐに球体から八つの細長い棒が生える。映えた棒はどんどん伸びると曲がり節を形作る。


 それは蜘蛛にも似た形状の奇妙なモノであった。


「さて、これを残していくから頑張って倒してみてね」


 織音はそういうと連夜と華耶へ視線を向けると朗らかに言う。


「それじゃあ、帰りましょうか」


 織音の言葉に2人はうなづくと織音がポンと手を打つと三人の姿がふっと煙のように消えた。


「な、なんだと……」


 令貴夢伊切命の驚きの声をあげるのと織音の残した奇妙な蜘蛛が動くのはほぼ同時であった。


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