宣戦布告⑤
「蓮夜、華耶……始めるわよ」
「了解」
「まかせて♪」
織音の言葉に蓮夜と華耶が簡潔の応える。蓮夜は斬鬼紅神を抜き放ち、華耶は陣を即座に形成する。
蓮夜が令貴夢伊切命に斬りかかると同時に華耶の術が発動する。
華耶の頭上に放電する雷の珠が顕現すると周囲に無差別に雷撃が襲う。
「ぎゃあああああああ!!」
「ぐわぁぁぁ!!」
雷撃の直撃を受けた衛士が半ば炭化して地面に転がった。
「余裕だな」
蓮夜は不敵に嗤うと同時に令貴夢伊切命の間合いに飛び込み斬撃を見舞った。
「ちっ」
令貴夢伊切命は舌打ちをしつつ蓮夜の斬撃を後ろに跳んで躱した。
(よし)
蓮夜は心の中でニヤリと嗤うと令貴夢伊切命への追撃を行う。
再びあり得ない速度で令貴夢伊切命との間合いを詰めた蓮夜は、二段突きを放つ。一本目は腹、二本目は間髪入れずに喉!!
令貴夢伊切命は二本目の喉への突きを首を横に捻って躱した。だが、それで終わりではなかった。
蓮夜はそのまま刃を横に振り、首を薙ごうとしたのだ。
「く……」
令貴夢伊切命は屈むことで、蓮夜の斬撃を躱すことに成功する。
しかし、それで終わりではなかった。蓮夜は河岸だ令貴夢伊切命の右耳を無造作に掴むと同時に顔面に膝を放った。
令貴夢伊切命は咄嗟に膝と顔面の間に左手を割り込ませたために直撃を避けることができたが、蓮夜の膝蹴りの衝撃で吹き飛ばされてしまう。
ブチリ……
蓮夜に耳を捕まれていたために、令貴夢伊切命の耳が引きちぎれた。
「やってくれたな」
令貴夢伊切命は憎々しげに蓮夜に言い放つ。
「令貴夢伊切命……お前中々強いな」
蓮夜は令貴夢伊切命の怒りなどまったく取り合うことなく上から目線で言い放った。
(天津御神にとって、元地津神に上から目線、これで激高するとつけ込めるんだがな)
蓮夜は令貴夢伊切命に負けるなどと思ってはいない。だが、油断をするべき相手ではないことは十分に理解している。そのような相手に言葉で挑発するのは至極当然だ。成功すれば隙を作ることが出来るし、失敗しても大した問題ではない。
「天津御神など所詮上位者を諫めることも出来ない無能者揃いだな」
「何だと?」
蓮夜のさらなる言葉に令貴夢伊切命は怒りの籠もった声をあげる。
(アホだな……俺の言葉など無視すれば良いのに)
蓮夜は令貴夢伊切命が自分の掌の上で転がされていることをこの段階で気づいていない。




