佐鮴居詰命①
無茶苦茶久しぶりですが、よろしくお願いします。
天瑞宮の主である創世神である織音の元に二人の人物が織音と同じ席につき茶会を開いていた。その二人とはもちろん紅神こと蓮夜と呪神こと華耶である。
容姿の整った三人が楽しそうに茶会を楽しむ様は宗教画のモチーフになりそうなほど神々しいものであった。実際に神と称される三人である以上、神々しいというのは当然と言えるかもしれない。
「さ、二人ともこっちもどうぞ」
織音は心から幸せそうな表情を浮かべつて自作のスコーンと杏のジャムを蓮夜と華耶へと差し出した。二人は遠慮などすることもなくスコーンをてにするとジャムをたっぷりとつけると口へ運ぶ。
「おいしいです!!さすがお姉さまです!!」
織音至上主義者である華耶は織音へ惜しみない賛辞をおくった。織音のつくる菓子は世辞などいう必要がまったくないほど美味なのである。
「たしかにこれもうまいな。また腕を上げたな」
蓮夜の言葉に織音はこれ以上ないくらい嬉しそうな笑顔を浮かべた。織音が嬉しそうな表情を浮かべたのを見た華耶もまた幸せそうな表情を浮かべた。幸せという空気がこの空間には満ちていといってよいだろう。そんな事を確信させられる光景であった。
「それにしても平和だな」
「そうね。ここ最近は招かざる客が来なくて静かで良いわね」
「お前が強力な結界に変えたからな」
「いつまでも雑魚がお姉様のもとに押しかけるのははっきり言って我慢ならないからね。あんたも余計な仕事が減って良かったじゃない」
「まぁな。おかげで織音や華耶とこうしてのんびりとお茶を楽しめるというのは嬉しいよ」
蓮夜の言葉に織音の幸せそうな表情がもう一段階上がった。見ている者全てが幸せな気分になるのは間違いないそんな笑顔である。
「二人の弟子の成長具合はどう?」
織音が蓮夜と華耶に尋ねると二人は少しばかり考えて答える。ちなみにここでいう蓮夜と華耶の弟子とはルガートとアリアスのことである。ルガートは元々の自分の世界では「魔帝」と呼ばれ絶対者として君臨していたほどの剛の者であるが、幼い頃にであった蓮夜に憧れて一心不乱に鍛錬を行い、蓮夜に会うためだけに強くなったのである。
アリアスはそのルガートの親友であり、ルガートが天瑞宮にやって来たときに一緒についてきた男だ。その際に華耶の魔術にすっかり感銘を受けて弟子入りをしたのである。
「そうだな。ルガートはまだまだ強くなるのは間違いない。現段階でジーク達四人と互角に戦えるな」
「アリアスも魔術に関しては本当に天才的な能力を持ってるわね。あと二千年もすれば今の私を追い抜くのは間違いないわね」
「お前ちゃっかり自分を上げることを忘れないな」
「ふふん、お姉様に褒めてもらえる可能性が少しでもあれば私は多少のカリスマダウンなどおそれないのよ」
「アリアスが可哀想だな。それにジーク達も……まったく」
蓮夜の呆れたかのような声に華耶はふふんという表情を崩すことはない。華耶は織音の前で醜態を晒すことは限りなく嫌であるのだが、それ以外は割と緩いのである。
ゴォォォォォン
ゴォォォン!!
ガシャァァァァァァン!!
三人が楽しそうに穏やかな会話を楽しんでいたとき、天瑞宮より遙か彼方で華耶の張った結界が砕かれる音が発した。
「華耶!!」
「わかってる!!」
華耶は短く返答すると魔法陣を展開して思念を部下達に飛ばした。織音の警護に回すためである。今回の侵入者は華耶が新しく作った結界を突破してきたのだ。それは並の力量ではないことをしめしており、蓮夜、華耶も気を引き締めているのである。
蓮夜は即座に立ち上がり空間から斬鬼紅神を取り出すと腰に差しながら織音達の前から駆け出した。もちろん侵入者の迎撃に向かうためである。
「蓮夜、気を付けて!!」
織音の言葉に蓮夜はピタリと立ち止まるとゆっくりと振り返り小さく笑いながら言う。
「ああ、まかせろ。すぐに戻るから新しい菓子と茶を用意しておいてくれ」
「うん♪」
織音は微笑むと蓮夜は再び駆け出していった。すでに蓮夜の表情は創世神の守護者である紅神のものであった。




