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魔帝⑧

 ルガートとアリアスは試合が始まった瞬間に紅神の背後に現れた。当然ながら身体能力故の事ではなく転移魔術によるものである。

 転移した先でルガートとアリアスはアンデッドを召喚した。召喚されたアンデッド達は死の騎士(デスナイト)と呼ばれる瘴気によって形作られた者達である。


 死の騎士(デスナイト)は身長二メートルを超える巨体と大剣と盾を持った騎士である。その戦闘力は凄まじいの一言である。実際にルガート達の世界において死の騎士(デスナイト)一体と戦うためには二百人もの兵士で当たる必要があるぐらいだ。

 その死の騎士(デスナイト)が二十体現れたのだ。


 紅神は斬鬼紅神(ざんきくがみ)を抜き放つと同時にルガート達に向かって駆け出した。


(転移!!)

(当たり前だ!!)


 ルガートの言葉にアリアスは当然とばかりに答えると再び二人の姿がかき消える。別の場所に現れたルガート達は再び死の騎士(デスナイト)を作成した。


(おいおい……)

(流石……)


 ルガート達は転移し終えた瞬間にアンデッド作成を行い再び二十体もの死の騎士(デスナイト)を作成して紅神に視線を移すと置いてきた死の騎士(デスナイト)達二十体はすでに消滅していた。

 ルガート達が転移し終えてまだ五秒ほどしか経っていないはずなのにすでに死の騎士(デスナイト)二十体が消滅していたのにはさすがにルガートもアリアスも戦慄せざるを得ない。

 アリアスは再び死の騎士(デスナイト)を作成したが紅神の前には無力であることはこの段階で十分に察している。だが、現段階(・・・)ではこれしか手がないのも事実であった。


 紅神は左手をルガート達に向けた瞬間に凄まじい衝撃波が二人を襲った。


「がぁ!!」

「ぐわっ!!」


 凄まじい衝撃に二人は吹き飛ぶと壁に衝突する。


(まずい、アリアス転移するぞ)

(ああ)


 かなりの衝撃であったが紅神が追撃を行うのはわかりきっていた事であるためにろくに視点の定まらない段階であるが二人はまたも転移する。


 転移した先でルガートはようやく視点のゆらぎを回復させると再びアリアスが死の騎士(デスナイト)を作成した。


(よし。やるぞアリアス!!)

(ああ、一矢報いてやろうぜ!!)


 ルガートとアリアスは念話で覚悟の程を確かめ合う。もともと勝ち目など望めない試合だ。

 死の騎士(デスナイト)達は盾を構え隊列を組むと紅神に向かって突進を始めた。


「やるな」


 紅神の言葉にルガートの心の中に喜びの感情が芽生えた。紅神から放たれる威圧感はほとんどないために腰砕けになることはないのだが、やはり超越者である紅神と対峙しているという現状では緊張感が常に心を占めていたのだ。


「ルガート!! 気を抜くな!!」


 ルガートの気の緩みを察したアリアスがルガートを怒鳴りつける。アリアスの怒鳴り声にルガートははっとする。


 ルガートとアリアスが紅神から意識を逸らしたのは一瞬の半分にも満たないほどの僅かの時間だ。しかし紅神にはその半瞬ともとれる短い時間は大きすぎる隙である。

 気づいた時には紅神はルガートとアリアスの間合いに入っていた。紅神とルガート達の間にいた死の騎士(デスナイト)達は吹き飛び地面に落ちたものから塵となって消え去っているのを視界の端に入ってきた。


「うぉぉぉぉ!!」


 ルガートは魔剣ダグラムを振るって間合いに入った紅神に斬りかかった。魔剣ダグラムの能力は限りなく頑強であり、自己修復能力があるということである。ルガートにとって武器とは最後の最後まで失わない壊れないというのが第一である。


(な……)


 キィィィィン!!


 紅神はルガートの斬撃を受けるのではなく、むしろ斬撃を放ってきた。明らかにルガートの方が早い段階で斬撃を繰り出したはずなのに、紅神の斬撃の方が遥かに速くルガートは辛うじて斬撃を中断し、紅神の斬撃を受け止める事に成功したのだ。


「ぐ……」


 紅神はそのまま押し切ろうとしてルガートの剣に重みを加えていく。ルガートは全身全霊を込めて紅神の圧力に抵抗しているがそれが長く持たないのは明らかである。


(ルガート、やるぞ!!)

(頼む!! もうもたん!!)


 瞬間、紅神の斬鬼紅神は振り切られそのまま地面を斬り裂いた。


「転移か……この状況でまだ行うか。何を狙っているのかな……」


 紅神が呟きながら振り返るとルガートとアリアスが離れて転移していた。そして次の瞬間に再び転移して二人は合流した。


(おい、あからさますぎるだろ。こんな手に紅神様がかかると思ってるのか?)

(大丈夫だ。俺達が紅神様と互角に戦えていれば躊躇もするだろうが、俺達を恐れるような事はないだろ)

(自分で言ってて虚しくならないか?)

(現実を直視しようぜ)


 ルガート達が念話で意思疎通を行っている時に紅神は歩を進めだした。それはどのような罠であっても食い破るという確固たる意思と自信からの行動である。


 アリアスは死の騎士(デスナイト)をまたも作成する。数は二十体であり、今までと同じだ。

 紅神は構わず進み出る。今までの流れで死の騎士(デスナイト)など紅神の敵でないのは明らかである。紅神とすれば今回のルガート達の行為は自分を誘い込むためであると言うことは百も承知であろう。それでも恐れる事無く歩を進めたことは紅神の自信に他ならない。


(よし、入った!!)

(やるぞ!!)


 紅神が入った瞬間にルガート達の位置を中心に魔法陣が浮かび上がると同時に光を放った。

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