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魔帝②

 かなり短いですがご容赦ください。

「陛下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます」


 アリアスはルガートに会議室に入室すると同時に頭を下げつつ挨拶を行う。アリアスは年齢が二十代前半といった所の赤毛の短髪の男だ。容姿はルガートほどではないとはいえ整った容姿である。しかし人間でないのはアリアスの側頭部に生えている羊を思わせる角が生えていることが物語っていた。

 アリアスはいわゆる魔族である。ルガートの建てた帝国には様々な種族がいるため、魔族であっても差別されるような事はないのだ。


「くだらん挨拶はいらん。それで首尾はどうだ?」


 ルガートの声には先程の会議のような無機質なものはない。むしろプレゼントをじらされている幼子のような声である。


「上々です。しかし創世神に会いたいなどと何を考えているんです?」

「そりゃ、創世神様にお願いがあるから会いに行くに決まっているだろう」


 ルガートの言葉にアリアスは呆れた様な表情を浮かべた。


「まったく、お前は昔から素の自分とイメージの自分が違いすぎるな」

「仕方ないだろう。かかる火の粉を払っていたらこうなったんだ」

「やれやれ、お前が調子に乗るからだ」


 ルガートの言葉にアリアスは肩をすくめながら言う。廷臣達と違いアリアスにはルガートを恐れている気配は一切無い。長年の友人という感じで気安い雰囲気が両者の間には流れていた。


「仕方ないだろう。……って俺がここまで恐れられている理由の半分はお前のせいだろうが!!」

「何さりげなく半分も俺のせいにしてるんだよ。俺の責任なんてせいぜい2割と言ったところだろう?」

「そんなわけないだろ。どう考えても半分はいってるわ!!」

「そんな昔の事は忘れた」

「また都合の良い記憶力だな」

「都合良く忘れる事が出来るから生を全うできるのだ」


 アリアスの返答にルガートはため息をつく。アリアスという男はルガートにとって素の自分を現すことの出来る数少ない男であるのは間違いない。アリアスと話すときはルガートは本来の素の自分で振る舞うのだ。


「まったく……もういいよ。それで?」

「ああ、俺とお前の魔力で次元の壁を破り創世神のいる世界へと向かう。すでに術式の開発は終わっている」

「そうか。それじゃあ早速その術を……いてっ」


 ルガートの頭をポカリとアリアスが殴るとルガートが頭を押さえる。その光景を他の者が見たら卒倒するのは間違いないだろう。しかし、二人の間では当たり前のやり取りの一つである。


「お前な。話聞いてたか? 次元の壁を破るような術式がすぐにできるわけないだろうが!! 少なくとも一ヶ月の儀式は必要だし、お前自身の魔力を注ぎ込む必要があるから結構は最短で三ヶ月かかるぞ」

「お前がいて三ヶ月だと?」

「当たり前だ。俺だけの魔力じゃ足りないからお前の魔力を使ってやっと出来るというものだ」


 アリアスの説明を受けてルガートは小さく頷いた。アリアスの実力を知るルガートにしてみれば自分がいかに困難な事を親友(とも)に頼んでいるのか確認する思いである。


「そんな顔をするな。なんだかんだ言って俺も楽しんでいるからな」


 アリアスの言葉にルガートは頷く。


(三ヶ月後か……あの男(・・・)に会うために俺はここまで来た。あと三ヶ月ぐらい耐えなければな)


 ルガートは心の中で呟いた。



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