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巨人①

「うぉぉぉぉぉ!!」

「がぁぁぁっぁぁぁ!!」


 二体の戦士が熾烈な業の応酬を行っている。二体の戦士の武器は共に大剣であり、全長にすれば確実に六メートル程の長さだ。その長さの武器を手にしている二人の戦士はその長大な剣を片手で振り回しているのだ。

 二体の戦士達のサイズは優に二十メートルを超えている。彼らは所謂巨人族と呼ばれる種族であり、その強力な戦闘力に比肩する者はない者達である。


 巨大な剣同時が打ち合わされ鳴り響く金属音は凄まじいものがある。


 そして何度目かの業の応酬についに終止符が打たれるときが来た。碧い目をした金髪の巨人の一撃が、黒髪の巨人の頭頂部から一気に両断したのだ。

 頭部を両断された巨人の体から力が抜け地面に倒れ伏した。倒れた時の衝撃は高層の建物が崩壊したような印象を周囲の者に与えたのは間違いないだろう。


「そこまで!! この勝負、エリュオン=ダルトの勝ちとする!!」

『うぉぉぉぉぉぉぉ!!』


 勝負を決する審判の言葉が発せられると観客達は声を揃えて興奮の言葉を発した。


「勝者エリュオンよ!! ここへ!!」

「はっ!!」


 壇上に立つ巨人が勝者であるエリュオンを呼ぶとエリュオンは堂々とした態度で一礼すると壇上の男の元に跪いた。

 壇上の男は空間に手を突っ込むと一本の巨大な両刃剣を取り出した。その両刃剣の鋒は滑らかな曲線を描き、鍔元に黒い宝珠(オーブ)が埋め込まれている。妖しく光る刀身には見る者の目を奪う危険な美しさがあった。


「この神剣“トゥールゼルス”を授けよう。この剣を持って巨人族に永遠の繁栄をもたらすが良い」

「はっ!! このエリュオン=ダルト、一命をもちまして巨人族への繁栄のために一心不乱に働くつもりでございます」

「うむ。それではエリュオンよ。来たるべき時に備えよ」

「ははぁ!!」


 壇上の巨人はエリュオンにそう声をかけるとエリュオンは感極まったように頭を下げた。


「聞け!! 我が民達よ!! 今我らは新たな英雄を得た。エリュオンの実力は今見た通りぞ。この者を中心とすれば必ず巨人族には栄光が訪れるであろう!!」

『うぉぉぉぉぉぉ!!』


 巨人達の咆哮がいつまでも鳴り響いていた。



 *  *  *


「華耶、あいつらの戦闘訓練は一応終わったぞ。元の世界の下級神程度なら十分に勝利することは可能だ」


 華耶の部屋に入った紅神は華耶に向けて言う。紅神の言葉を受けて華耶は満足気に頷いた。ここで紅神の言う“あいつら”とはジーク、アルマ、アーノス、シェリーの四人である。

 元の世界で居場所の無くなったジーク達は華耶に拾われ華耶の元で働く事になったのだが、まだまだ戦闘力では大きく劣っていたために紅神が直々に戦闘訓練を施していたのだ。その結果、ジーク達はメキメキと力をつけ下級神とはいえ神に匹敵するほどに実力を上げていたのだ。

 ちなみに、ジークはアルマとアーノスはシェリーと結婚をしていた。もし子どもが生まれれば華耶はその子達にも両親と同様の処置を施すつもりであるがそれはまだまだ先の事である。


「そう、ありがとう」

「どこに送るか決めたのか?」


 紅神が華耶に尋ねると華耶は少しばかり考えて決断したように頷いた。


「うん、ちょっと前にあんたが斃した魔王がいたじゃない」

「いつの話だよ。魔王とか斃しまくってるからいちいち覚えていないぞ」


 紅神は首を傾げながら華耶に返答する。紅神の返答には本当に覚えていないという様子しか無い。実際に紅神は今まで多くの魔王を名乗る者達を斬り捨ててきたのだ。いちいち顔も覚えていないどころか名前すら覚えていないのだ。


「え~と……ほら、あんたが考え無しに剣を振るって天瑞宮の結界を破壊した事があるじゃ無い。その時の魔王よ」

「ああ、(なにがし)という偉そうな奴だったな」

「結局名前覚えてないのね……」


 華耶はため息をつきながら言う。呆れた様に言ってはいるが華耶も大体似たようなものである。華耶もその桁外れの魔力にものを言わせて天瑞宮に侵入してきた者達をなぎ倒してきたのだ。


「まぁいいや、そいつの世界に送り込むのか?」

「うん」

「魔王という大きな楔が失われた以上、遅かれ早かれ戦乱の世の中になるだろう。そんな所に送り込むのは少々きついと思うんだが……」


 紅神の言葉には華耶への非難の感情が込められている。紅神とすれば折角育てたジーク達をいきなり危険地帯に送り込むのは抵抗があったのだ。なんだかんだ言って紅神は面倒見の良い性格をしており関わった者達を大事にするのだ。


「何言ってるのよ。あんた師匠なんだから少しは弟子を信じなさいよ」

「う……それを言われると」

「私もあの四人を見たけど下級神を斃せるぐらいの実力を有したんだからよっぽどの事にならない限り大丈夫よ」


 華耶はそう言うとうんうんと頷く。


「そうだな。とりあえずもう少し鍛えることにするか」


 紅神の言葉に華耶は小さくため息をついた。弟子に対する過保護が過ぎると華耶は思ったのであった。


「はぁ……まぁいいわ。それよりもお客さんみたいね」

「そのようだな」

「どうする? 私がいく?それともあんた?」


 華耶の言葉に紅神はニヤリと嗤って返答する。


「もちろん俺だ。華耶は織音の所に行って守ってくれ」

「了解♪」


 紅神と華耶はそう言って笑う。侵入者が何者かは知らないが無事では済まない事を示していた。

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