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鉄騎兵団⑦

“黒幕が出てくるまで暴れる”


 紅神はこの言葉を言うと同時に両手を掲げると両掌の先に魔法陣を発生させた。発生した魔法陣から次々と紅神のような格好をした羽織袴の姿をした者達が現れた。


 現れた者達は服装こそ羽織袴を身につけてはいるが、顔は目鼻口の器官の一切無いつるりとした卵形の顔で人間でないのは明らかである。


 現れた奇妙な兵士達は紅神の元に跪くと紅神の命令を待っているようである。


 紅神はある程度の数が揃ったところで静かに頷いた。すると奇妙な兵士達は一斉に立ち上がると腰に差した剣を抜き放つと方々に散っていった。駆けていく者、空に浮かび上がるとそのまま飛んでいく者と散会の仕方は様々であった。


 紅神が命令を下した者達は実の所、生物ではない。紅神が魔術によって作成した魔力を人型にして操るという分身体であり、名を“兵尉(ひょうじょう)”と言う。兵尉は紅神の作成した分身体の中でも最下級のものである。

 単純な戦闘力であれば紅神の足元にも及ばないどころか比較するのもバカらしいレベルであるが、一度に大量に作成できるという利点がある。今回のように敵をあぶり出すためには広範囲にわたって展開する必要があるような時には重宝するのだ。


「……三千もあれば良いかな」


 紅神はそうポツリと言うと次々と兵尉を生み出していく。生み出された兵尉達は次々と紅神の命令に従い散会していく。


(それじゃあ……次の場所に行くか)


 紅神は決断すると転移魔術で別の場所に転移した。転移した紅神は早速そこで先程同様に両掌をかざして魔法陣を発生させると兵尉達を作成する。


 作成された兵尉達は再び散会していくのを確認すると、再び紅神は転移してそこで兵尉を作成する。これを何度かくり返すと紅神は地面に降りて事態の推移を待つことにした。

 紅神の分身体である兵尉の身に何かが起こった場合には紅神はそれを察する事が出来るのだ。実際に放った兵尉のうち数十体は敵との交戦によって消滅させられている。


「そろそろ何かしら動きがあるはずだ」


 紅神は小さく呟くと紅神の予想通り兵尉達が各地でやられ始めたのだ。紅神に比べれば機械の男達も鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)も等しく弱者ではあるが、兵尉達にとってはそうではない。

 金属製の骨格を断ち切ることは容易ではないし、所持している武器も高火力だ。その事を考えればそう簡単に制する事は難しい。


 兵尉と機械の軍は世界の所々で激戦を繰り広げているのが紅神には手に取るように分かる。その中で紅神は少しずつ情報を集め精査していく。その中で黒幕の存在を確認しようと考えていたのだ。


「見つけた……」


 しばらく目を閉じていた紅神はそう呟くとゆっくりと目を開けた。兵尉との戦いにおいて機械の男達、鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)が転移していくる事を見ていた紅神はどこから転移してくることを探していたのだ。

 そして、紅神はどこから敵が転移してくるかを確認したのだ。兵尉達はこの段階で世界中に展開しているが、敵が送り込んでいる場所は同じなのだ。ここまで条件が揃えば敵が送り込んでいる場所が怪しいととるのは当然であった。


「あっさりと見つかったけど……まぁ動くとするか」


 紅神は転移魔術を起動すると黒幕がいると思われる場所へ転移する。紅神が転移した先には一つの近代的な巨大な建物が建っている。

 巨大な建物は近代的な造りとなっており外壁は大理石でできているような光沢を放っているが紅神にはそれが何なのかよくわからない。これは紅神が無知と言うよりもその世界の特有の物質であるためわからないのだ。


 紅神が建物の前に現れると周囲から男達が現れる。男達は紅神を見ると躊躇なく重厚を紅神に向けるとそのまま放った。

 紅神は避けるのもバカバカしいとまっすぐに男達に歩を進める。男達の放った数十条のエネルギービームは紅神の二メートル程前で弾かれたように消えていく。間合いに入った紅神は斬鬼紅神(ざんきくがみ)を抜き放つと同時に男達を斬り捨てた。もはや、何度目かの紅神の蹂躙劇が始まった。


 紅神は男達の攻撃など意に介さぬといわんばかりに建物の中に向かって行く。男達は必死の抵抗を見せるがまったく無意味であった。それどころか男達は紅神に相手にすらされていない。

 目の前に建った場合は容赦なく斬り捨てていくのだが、紅神の刃の届かない範囲にいるものは基本相手にされていなかったのである。


 紅神は揚々と建物の中に入ると五体の男達が立っていた。手には今までの男達の様に銃ではない剣の柄のようなものを持っている。


(飛び道具ではないな……やっと武器を変えてきたか)


 紅神は立ちはだかった男達の武器を見て、ため息をつきそうになるのを何とか堪えているという感じである。

 男達の手にある剣の柄から光が発せられ剣の形に形成された。男達は剣を手に紅神に斬りかかってくる。生物ではあり得ない速度で紅神の間合いに踏み込んできた。

 男達は絶妙の間合いで紅神に襲いかかるが紅神は斬鬼紅神を一振りすると一番前の男を左肩から斬り裂かれるとそのまま上半身を斬り離されて床に落ちる。

 斬り伏せられた仲間に構うことなく次の男が剣を踏み込んでくる。紅神は左掌をその男に向けるとそのまま衝撃波を放った。衝撃波をまともに受けた男はそのまま吹き飛ぶ。

 吹き飛ばされた際に後ろの一体を巻き込んで吹き飛ぶ。後ろの二体は左右に分かれると紅神に斬りかかった。右からは紅神の首を、左からの斬撃は紅神の足元を狙っての斬撃である。

 紅神は後ろに下がるのでは無く、前進すると斬撃を放った二体の男の首があっさりと飛び床に落ちる。首が無い状態で斬撃だけが虚しく空を斬った後に男達の体は倒れ込んだ。


 紅神はそのまま衝撃波によって吹き飛ばされた二体の男が立ち上がろうとしたところで紅神が斬鬼紅神を振るって立ち上がろうとした男二体の首を刎ね飛ばした。紅神が五体の男を斬り伏せるのにかかった時間はわずか十秒である。


 五体の男達を斬り伏せた紅神はそのまま歩を進めていく。その際に紅神の歩みを止めるために次々と敵がやって来るがまったく紅神の歩みを止める事は出来なかった。


 紅神は迎撃の男達をあしらいながら虱潰しに黒幕と思われる者を探していく。時間はかかるが紅神にしてみれば他に方法は無いために仕方の無い事であった。

 そして、ようやく黒幕と思われる者の部屋に到着した。


 紅神が黒幕と思われる者の部屋と判断したのはその部屋のセキュリティがやけに厳重であったためだ。まぁ紅神の前にはまったくの無力であったのだが……。


 扉があっさりと消しとぶと紅神は部屋の中に入る。


 そこには重厚で豪奢な机の向こうに一人の男が座っていた。

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