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鉄騎兵団⑤

「お、新手か……」


 紅神は自分の元に向かってくる者達の気配を感じるが余裕の表情を崩すことはない。


「これを壊すような事はしないと思うんだがな」


 紅神は魔法陣を見ながら小さく呟く。この魔法陣は言わば天瑞宮への道である。ここを壊してしまえば相手は天瑞宮へと侵攻する事は出来なくだろう。そう仮定した場合にこの魔法陣を破壊するような手段を執ることはしないと思ったのだ。

 もし、ここを破壊する事を相手が厭わない場合は、天瑞宮への侵攻を諦めたか、他に魔法陣があるのか、それとも自分達で魔法陣を作り出す技術を有しているかのどれかである。


「ん?」


 ドゴドゴドゴドゴォォォォ!!


 突如、紅神の防御陣に直撃したミサイル群が爆発する。一応念の為に紅神は防御陣を張り巡らしていたのだ。


(警告無しに攻撃か……この魔法陣は必要ないと言う事か?)


 紅神は警告無しに攻撃が来たことに対して即座にそう判断する。紅神はこの魔法陣を失っても相手が何らかの方法で天瑞宮に対して侵攻できると言う事を判断すると魔法陣を破壊する事を決断したのだ。


「龍脈系の魔法陣か……さっさと壊すか」


 紅神は斬鬼紅神(ざんきくがみ)を地面に突き刺すと魔法陣に自らの魔力を送り込んだ。送り込んだ魔力は魔法陣と繋がっている龍脈を切断すると魔法陣は光を失った。


「魔法陣はこれで良いな。さてあとは事情を知ってそうな連中を締め上げるだけだな」


 紅神はミサイルを撃ち込んでくる相手をチラリと見るとニヤリと嗤う。それは危険な嗤いであることを鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)はまだ知らない。



 *  *  *


「団長、ミサイルはどうやら効果は無いようです。かなり強力なバリアーが張られています」

「わかっている」


 団長と呼ばれた機体は抑揚のない返答を行う。生物でない彼らは死の恐怖とは無縁である。今の自分が敗れたとしてもバックアップが残っている限り何度でも蘇る事が可能なためである。


「一斉射撃を行う。全員陣形を整えろ」

「はっ!!」


 団長の命令は即座に実行に移され鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)はそれぞれの射撃位置に移動する。その一糸乱れぬ動きはやはり機械ならではであろう。


「よし、撃……な」


 団長の声に僅かながら動揺の声が響いた。そしてそれは部下達も同様であった。自分達の標的(ターゲット)の紅神が姿を見せたと思った瞬間に紅神はすでに鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)の間合いに踏み込んでいた。

 鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)の動体視力ならば自分達に放たれた銃弾でさえ見逃すことはない。だが、紅神が自分達の間合いに踏み込んだ動きを見る事は誰も出来なかったのだ。


 紅神の右側にいた鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)がまとめて吹き飛ばされた。吹き飛ばされた鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)の何機かは宙を舞っている短い間に斬り離された。

 紅神が斬鬼紅神を振るって鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)の何機かを葬ったのだ。右側にいた者達は紅神の斬撃の衝撃波によって吹き飛ばされたのだ。


 紅神は余裕の表情で再び斬撃を放った。そうすると今度は左側にいた鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)が吹き飛ぶ。


「そ……そんなバカな……」


 団長の口から呆然とした声が発せられた。紅神の規格外の戦闘力を目の当たりにして団長は勝てると断言した自分の愚かさを嗤うしかない。

 紅神の表情などから紅神が自分達を敵と見てないのは明らかだ。それが無性に団長には悔しい。


「死の恐怖も知らない欠陥品だな」


 紅神は冷ややかに言い放った。


「なんだと!?」


 紅神の言葉に団長は荒々しい声を出した。紅神の欠陥品という言葉に自尊心を大いに傷付けられたのだ。


「何をそんなに怒る必要がある?」


 紅神の不思議そうな言葉がさらに団長の誇りを踏みにじる。


「貴様ら生物が我らより優れているとでも言うのか!!」


 団長の激高に部下達も驚いたような視線を向けていた。それほど機械である彼らにとって感情を爆発させると言う事はあり得ない事だったのだ。


「なら貴様ら機械は生物よりも優れているとでもいうのか?」

「当たり前だ!!」

「では聞こう。お前達が生物よりも優れているというのは、戦闘力か?それとも知識か?」


 紅神の言葉に団長はその通りだと言わんばかりに返答した。


「その通りだ。貴様ら生物よりも我々は戦闘力、知識の面で明らかに優れている」

「そうか。だが俺は実際に戦闘力の面でお前達を寄せ付けてないだろ? お前達は俺に勝てるつもりでいるのか?」

「く……」


 紅神の言葉に団長は返答に詰まる。生物よりも優れていると豪語したところで実際に紅神の二振りの斬撃により鉄騎兵団(アーマートルーパーズ)は壊滅状態になっているのだ。その状況を無視して戦闘力が上回っていると言ったところで虚しいだけである。


「それにお前は知識の面でも優れていると言ったが、知識量の多さなどそこまで重視するような事ではないだろう」

「何?」

「おや? 優秀なお前達機械は俺の行っていることが理解できてないのか?」


 ため息交じりの紅神の言葉に団長は怒りの感情を露わにした。紅神に論破されそうな状況であるのが団長は察していたのである。


「確かに知識量が豊富というのは力であるのは認めよう。だが、それは絶対的なものでは無い。俺の知らない事をお前が知ってるし、その逆もまた然りだ」

「……」

「知識の量をいくら誇ろうともこの世の全てを知ることは叶わないのだから、知識の量で他者を見下す事など恥をさらすだけの行為だ」

「だ、黙れ!!」


 団長の激高に紅神はニヤリと嗤う。


「いい声を出すじゃないか。一つ学んだようだが残念だがお別れだ」

「な……」


 紅神は斬鬼紅神を振り下ろすと団長を真っ二つに両断した。文字通り真っ二つになった団長は左右に分かれて崩れ落ちた。


「さ……いくとするか」


 紅神は外に向かって歩き出した。



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