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鉄騎兵団③

 紅神が視線を向けた先には、紅神が斃した機械の男達と同様の服装をした者達が現れた。場所は紅神が居る場所からほぼ反対側の外縁のリングである。


(……この調子であっちこっち潰していくのは流石に面倒だな)


 紅神はそう決断すると思念を華耶に飛ばした。


(どうしたの?)

(ああ、今、変な奴等がここに次々と転移してきてるんだが)

(確かにたくさんの地点に同時に展開してきてるわね)

(そこでお前がそいつらを潰しておいてくれないか?)

(あんたは?)

(大本を叩きに行く。そっちの方がどうやら手っ取り早そうだ)

(了解、まぁとりあえず貸し一つと言うことでいいかしら?)


 華耶の声に愉しみの感情が滲んでいるのは、決して気のせいではないだろう。紅神と華耶は仲が悪いというわけではない。むしろ仲が良い部類に入るのは間違いない。紅神にここまで気安い態度がとれるのは織音以外では華耶ぐらいのものである。


(ああ、この借りはちゃんと返すさ)

(はいはい、それじゃあ。この件が終わったらお姉様に私がいかに活躍したかを伝えてもらうわよ)

(了解だ。それじゃあ頼んだぞ)


 紅神は苦笑混じりにそう思念を送ると華耶との思念でのやり取りをうち切って転移した。




 *  *  *


「さてと行くとしますか」


 華耶はすくっと立ち上がると転移魔術を起動する。ぐにゃりとした視界の歪みが収まった時にはすでに華耶は外縁のリングに立っていた。


「あら? 結構な数がいるのね。蓮夜ったら意外と面倒な事を押しつけたというわけね」


 華耶は皮肉気にそう言う。華耶もまた容姿の優れた美少女であるために皮肉気な表情を浮かべていても男女問わず見惚れてしまいそうな表情になるのは容姿の優れたものの特権と言えるのではないだろうか。


「ま……さっさと片付けるとしますか」


 華耶はそう言うと機械の男達の前に一瞬で移動する。男達は華耶に気付くと懐から銃を取り出すとそのまま警告無しに華耶にむけて発砲する。銃から放たれたのは先程紅神に向け放たれたビームである。

 数条の光が華耶に放たれるが紅神同様に光は華耶の一メートルほど手前で壁に当たった水のように消滅した。


「変なの……魔術じゃないわよね」


 華耶は首を傾げて疑問を呈するがその右手は一体の男の顔面を貫いていた。男達の数は十体であるが、その内の一体が華耶と出会って僅か三秒で斃されてしまったのだ。


「一体……あれば良いか……」


 華耶は冷たく言い放つと同時に周囲に直径十センチ程度の黒い球体が数十個浮かんだ。その球体はそれぞれ分裂をくり返し、それからまた直径十センチ程の大きさになり最終的には数百の黒珠が華耶の周囲に浮かぶことになった。


「バトルモード起動」

「これより近接戦闘へと移行する」

「排除開始……」


 男達は何ら抑揚のない声でそう宣言すると華耶に向かって殴りかかってきた。華耶はつまらなさそうな表情を浮かべる。華耶にしてみれば男達の行動は愚か(・・)以外に称することは出来ないものである。

 なぜなら、華耶の使う魔術と男達の使う技術とは何もかもが異なっている。おそらく魔術というものに対して全くと言っていいほど、この男達は無知なのだ。にも関わらず華耶に向かって殴りかかってくるのは勇気ではなく無謀というしかない。


(ま……愚かの代償は自分で払うからいいのよね)


 華耶はそう心の中で言い放つと周囲に浮かんでいた黒い球体が動き始めそのまま周囲に放たれる。

 高速で飛来する黒い球体を男は腕で防ごうとするが、その狙いは文字通り消滅してしまう。黒い球体は防御した男の腕をまったく問題にする事無く突き破ると、そのまま男の体を突き破った。

 男の傷口はまるで最初から存在しなかったかのように空洞が空いていた。頭部を失った男がそのまま地面に倒れ込んだ。


「一体あればいいわね」


 華耶は冷たく言い放つと男達を一体だけのこして他の男達を蹂躙していく。男達を駆逐し終えた黒珠(こくしゅ)は再び華耶の周囲に浮かんだ。華耶はそのまま周囲に視線を移すと周囲の黒珠はそのまま華耶から放たれるとそのまま黒珠は群れとなり天瑞宮の他の場所に飛んでいった。


 群れとなって飛んでいった黒珠は天瑞宮の至る所に現れた機械の男達を駆逐していった。男達はほとんど抵抗も出来ずに黒珠によって削られていきわずか五分ほどで天瑞宮に転移してきた男達は駆逐され尽くしたのであった。


「さて、残りはあんたね」


 華耶は両腕と両足を黒珠により切り離され床に転がっている男を見て言う。


(痛覚……死への恐怖はないと言うわけね)


 華耶は男の様子を見てそう判断する。男は両手、両足を失い、そこから覗く傷口からは機械が覗いており、生物でないことを察している。


「あんた達は何しに来たの?」


 華耶は冷たく男に言い放つが男は返答しない。


「まったく……木偶人形はこれだから私の言っている事が理解できないのね」

「お前の質問に答える謂われは無い……」

「何言ってるのよ。あんたはただの木偶人形じゃない」

「我々は貴様らよりも遥かに優れている」


 男はやや不快そうに華耶に言い放った。


(へぇ……人形のなのにそれなりの自我があると言う事かしら?)


 華耶は男の反応に少しばかり意外な感想を持った。どうやらこの男達は見下されるのが不快なようであった。それが自我によるものなのか、それとも種族的なものなのかは分からない。


「まぁいいか……あんたを始末しなかったのはあんたの持っている知識を得るためだもんね。あんたがどんな思考回路を持っていようが関係ないわね」


 華耶はそう言うとニヤリと嗤った。華耶にしてみればこの天瑞宮にやってきていきなり攻撃を仕掛けてきたのだから容赦の気持ちは全くなかったのだ。


「あとは蓮夜が上手くやるでしょ」


 華耶はそう言うと一体の黒い靄を人間の形にする。人形となった黒い靄は男の顔面を鷲づかみにする華耶の後ろをついていく。


 この段階で華耶の仕事は終わりという事で華耶は自分の研究へと戻るのであった。

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