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鉄騎兵団①

「いくぞ」

「はっ」


 紅い髪の短髪の男が率いている男達につげると全員が歩き出した。全員が妙に抑揚のない声である。

 紅い髪の男を見た者達がすっと進路を譲ると敬礼する。その様子には一切の淀みもなくまるで人間味を感じさせない。


 紅い髪の男はそのままずんずんと進んでいく。進む通路は幅5メートル、高さ4メートル程のスペースだ。

 そして、扉の前で立ち止まる。すると付き従っていた男達二人が前に進み出ると扉を開ける。


 扉を開けた部屋の中央に魔法陣が浮かんでいる。


「あれか……」


 紅い髪の男の言葉に付き従う男達は答えない。まるでその必要がないと言わんばかりの態度である。しかし、紅い髪の男もそのような態度にもまったく不快感を示すことはない。


『去れ……』


 その時、声が聞こえた。だが男達は構うことなくその場に立っている。


『ここは神聖な場所……エルデの民以外の者がここにいることは赦されない。即刻立ち去るが良い』


 声に対して男達はまったく反応を示さない。


『そうか……仕方ないな……無益な殺生はしないようと思っていたのだが仕方あるまい。その傲慢さの報いを受けるが良い』


 何者かの声がそう告げると黒い靄が湧き起こると身長二メートル半の全身鎧(フルプレート)、大剣と巨大な盾を身につけてた。


『グォォォォォォォォォォ!!』


 騎士は盾を前面に押し出して大剣を後ろに構えると男達に突進してきた。


「やれ……」


 紅い髪の男が小さく言うと背後に控えていた男の一人が進み出た。


「モードチェンジ……バトルモード起動」

 

 男がそう言うと身構える。身構えた男に対して騎士は構わず突っ込むと大剣を振るった。


 ギィィィィイン!!


 騎士の斬撃を男は左腕で受けると金属を打ち付ける音が響いた。騎士は大剣をそのまま横に振るうと今度は金属をすりあわせるような音が響いた。


 男は騎士の懐に飛び込むとそのまま拳を騎士の腹部に叩き込んだ。


 ドゴォォォ!!


 男の一撃に騎士は二メートルほどの距離を飛ぶと着地する。男の体格は中肉中背でありとても二メートルを大きく上回る巨体をただ一撃で浮かせるという芸当が可能なようには見えない。

 だが、それは現実の事である。男はそのまま騎士の間合いに跳び込むとそのままさらなる追撃を行う。男の右拳が凄まじい速度で放たれ、騎士はその拳を盾で受けるがその威力は凄まじくまたも騎士は体を浮かせて着地する。

 男は一旦空いた間合いを再び詰めるとそのまま騎士の腹部を蹴りつけた。まともに決まった蹴りにより騎士は壁まで吹っ飛んだ。


『く……お前は一体……』


 騎士から戸惑いの言葉が発せられる。騎士の大剣を受けたにも関わらず切り落とす事の出来ない事、自分を圧倒する恐るべきパワーといい不可解な事が多すぎるのだ。


「答える必要はない」


 男は機械的にそう言うと両手を壁によりかかる騎士に向ける。その瞬間、男の両掌から電撃が放たれる。放たれた電撃はそのまま騎士の胸部を射貫いた。


『がぁぁっぁぁ!!』


 騎士は絶叫を放つとそのままズルズルとへたり込んだ。体の節々から煙が浮かんでいる。


 ボロ……


 騎士の体が崩壊を始めるとそのまま騎士は崩れ落ちた。


『お前……人間ではないのか……』


 騎士は呆然とした声を発すると男の代わりに紅い髪の男が騎士に言い放った。


「生物が絶滅してからすでに5221年経過している。エルデの民もその際に絶滅したのは間違いない」

『……そうか』


 騎士の声には妙な悲哀が漂っている。エルデの民を待ち続けたがそのエルデの民がすでに絶滅しているという事は騎士にとって今までの自分のやって来た事が無駄であった事の確定である。


『お前達は……どうするつもりなのだ?』


 騎士は最後の言葉をふりしぼり紅い髪の男に尋ねる。


「会いたい者がいるのだ」


 紅い髪の男がそう言い終わるのと騎士が崩れ去るのはほぼ同時であった。


「エゲル総司令……守護者(ガーディアン)の消滅を確認」

「そうか、それでは始めるとしようではないか……」


 エゲルと呼ばれた紅い髪の男はニヤリと嗤った。

 次回の更新から隔日更新とさせていただきます。

 次回の更新は7月18日(木)となります。

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