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呪神Ⅱ②

「ジルツォル様、何故です!?」


 ジークは空に浮かぶジルツォルに向かって声を張り上げる。もちろんジークはジルツォルが自分達を殺そうとする理由をほぼ正確に察している。紅神からのアドバイスにもあったし、自分達の経験上、自分達の都合のために他者の命を奪う事に対して躊躇しない者がいることを知っていたのだ。

 その上でジークが尋ねたのはジルツォルとの戦いにおける突破口を探していたのだ。


「お前達は知りすぎた。それが理由だ」


 ジルツォルの言葉は端的である。ジルツォルは言い終わると右手を掲げた。ジルツォルが右手を掲げると周囲にいた天使達が身構える。


「お前達のような虫けらを潰すのはそれだけで十分な理由であろう?」


 ジルツォルは悪意の籠もりすぎた表情を浮かべジーク達を嘲るように口元を歪めた。


「それがあんたの本性というわけか?」


 ジークの忌々しげな声にジルツォルや周囲の天使達は嘲笑を投げ掛けてきた。


「人間如きが神である私を“あんた”とはな……不愉快だな。その言葉の代償を払わさせてやる。天使共よ。まずはアルマを殺せ。次いでシェリー、アーノスの順番だ。ジークは一番最後に嬲り殺してやろう」


 ジルツォルの言葉にジーク達の顔が強張る。ジルツォルは一番ジークが怒りを燃やすように仕向けその上で殺すつもりなのだ。その方がジークの絶望はより深いものになるであろう事は容易に想像がつく。

 ジルツォルの思考は嗜虐心からくるものであり他者に苦しみを与える事による暗い愉悦を持つ者の思考であり高潔さとは対極にあるものである事は間違いない。


「さぁ……やれ。天使共!!」


 ジルツォルは掲げた右腕を振り下ろすと天使達はいやらしい笑顔を浮かべると一斉にジーク達に襲いかかった。


「くるぞ!!」

「くそっ!!」

「負けるもんですか!!」

「何とかしないと……」


 ジーク達は襲いかかる天使達を迎え撃つために即座に戦闘態勢に入った。ジルツォル達が連れている天使達は上級の天使達であり人間よりも遥かに上回る戦闘力を持つ者達だ。そのような強者達が一斉に襲われればジーク達はあっという間に斬り刻まれることであろう。

 いや、ジルツォルの命令通り長い時間をかけて嬲り殺されるのかもしれない。


「アルマ、シェリーは後ろに!! アーノスいくぞ!!」

「ああ!!」


 ジークの言葉にアーノスは即座に答える。そのジークとアーノスの行動に天使達はいやらしい嗤いを崩すことはない。自分達が傷付かない事を知っており一方的に傷付けようとしようとするときの顔が醜いのはどの生物であっても変わりない。


 ガキィィィ!!


「え?」

「な……なんだ?」


 しかし、突如発生した強力な結界にジーク達は呆気にとられた。その表情からアルマ、シェリーが結界を張ったわけではないことがわかる。

 一方でジルツォルも天使達も困惑しているようだ。張られた結界はエネスレベルの力がなければ破る事はできないほど強力なものであったからであり、すでにエネスの加護を失ったジーク達にこのレベルの結界を張ることなど不可能なのだ。


「貴様ら、これは一体……」


 ジルツォルの言葉にジーク達も戸惑いの表情を浮かべていた。ジーク達も事情が飲み込めていない証拠であった。


「この程度の結界も敗れないの?」

「誰だ!? どこにいる!!」


 その時一人の少女の呆れたような声が周囲に響くとジルツォルが周囲を見渡しながら叫んだ。天使達も少女の声がどこから響いているか分からないらしくキョロキョロと戸惑った表情のまま周囲を見渡している。


「はぁ……本当に情けない連中ね。まぁ主があれだから仕方ないか」


 少女が呆れたかのように言い終わるとその姿を現した。突如空間が裂けるとそこから一人の少女が姿を現したのだ。銀色の髪を頭の両側で結んだ所謂ツインテールと呼ばれる髪型の美しい少女だ。もちろんこの少女は華耶である。


「あ、あなたは……」

「あの時の……」


 ジーク達は驚いた表情を浮かべてて言う。華耶は一つため息をつきながら返答する。


「もちろん、このクズ共を皆殺しに来たのよ」


 華耶はニッコリと笑い返答する。華耶の見た目はとんでもない美少女なのだが、その美しい口から紡ぎ出される言葉は苛烈な意思そのものである。


「紅神は甘いからエネスとやらを斬って終わりにしてあげたけど私とすれば手ぬるいと思っていたのよ。まぁ残った神や天使が反省してあんた達に手出しをしなければ今後おね……創世神様に危害を加えようとはしないと思ったけど……またやるわよね」


 華耶はジルツォル達に皮肉気な視線を向ける。華耶はジルツォル達を無視してさらに言葉を続けていく。


「というわけで私が来たのよ。あんた達を滅ぼしにね。あんた達が生きてると都合が悪いから消えてちょうだい」


 華耶の言葉にジルツォル達は一斉に身構えた。華耶の服装が自分達の最高神を斬り捨てた紅神と非常に似通っていることに気付いたのだ。

 いや、それよりも華耶から放たれる圧力が強者であることを如実に物語っていたのだ。


「わ、我々は神だぞ!! その神を殺すというのか!?」


 ジルツォルの言葉に華耶は“ふ……”と小さく嗤った。その嗤いにジルツォル達はゾワリとした感覚を味わった。


「さ……始めましょうか」


 華耶はニッコリと笑った。

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