表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋愛短篇集『graffiti of someone』

短篇、葉月蝉

作者: 自由帳

この小説はすぐに忘れるような戯言です









彼女、桑原葉月を殺したのは俺だ。


別に桑原葉月の事を愛してはいなかった。


だからこそ、彼女が死んだ時。彼女が俺の名前を呼んだ時に後悔してしまった。その瞬間に、桑原葉月の存在を大きく感じたからだ。


俺がした事は、刑事罰には処されない。

俺がした事は、彼女の死を見届ける事だけだった。


軽トラックが俺達の運転する車に衝突し、俺達はその下敷きになった。

俺は助かり、彼女は死んだ。


人類単位で見れば、よくある事だろう。


それでも俺は後悔をし、それでも彼女は涙を流し、それでも俺は愛を与えず、それでも彼女は俺を愛し、それでも、それでも、でも、でもでもでもでもでもでもでも……。



数え切れない言い訳の中で、彼女が死んだ日から数日経った日に見つけた。


いつかの夏に鳴くのを止めた、蝉の姿を。

その姿が、今は聞こえない煩わしい声を思い出させる。



____ごめんね……私が悪かった



ミーンミンミンミン



____嫌いだよね、こんな私



ミーンミンミンミン



____殺したいなら、殺していいよ



ミーンミンミンミン

ミーンミンミンミン ミーンミンミンミン

ミーンミンミンミン ミーンミンミンミン ミーンミンミンミン



「……ご、めんなさい、私、死んじゃうみたい……。

最後、まで……ずっと……愛、して……たよ」



最後の言葉を思い出す頃に、俺は蝉の亡骸を地面に埋めていた。


葉月の蝉。


きっと俺より幸せで、あいつより愛された蝉を。















この小説はふと思いついてノートの端に書かれた物語です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ