君のいない教室
少年少女は…それでも旅立つ
紅空くんは…今日も休みか…
ここ最近紅空くんが休む日が多くなっている気がする。
「樺夜?どうかした?最近ぼーっとしがちだけど…」
「そうだよ〜。しかも噂になってるよ?樺夜と紅空が付き合ってるって…」
私と…紅空くん…
「……樺夜?…はっ!まさか…本当に付き合ってたり!?」
私と紅空くんが…どうなんだろう…確か結婚は決まっている…けど…本当に…これでいいのだろうか…。
本当にこれで…これで私は幸せになれるのかな…本当にこれで…紅空くんは…幸せになれるのかな…。
私はあの日紅空くんの優しい所を知ってしまった…。いつもは冷たい紅空くんだけど…優しくされると紅空くんの声でいっぱいになりそうで…なんだか…怖かった…。それからなんとなく紅空くんを避けるみたいな感じになってしまった…。
「今日紅空の見舞い行く?」
「えー…でも私達で紅空ん家入れんの?」
「そんなの行ってみないとわかんないじゃん」
「んー…それもそっか。樺夜も行くよね?」
「う…うん」
紅空くんの家か…私もあの日以来行ってないな…。
「うわっ…さすが超大金持ち私らとは比べ物にならないね…」
「うん…すごい…」
「あのー!すみませーん!紅空くんのクラスメイトの者ですけどー!」
…ギギーー
中からは…支配人らしい人が出てきた…。私達の方へ駆け寄ってくる。
「申し訳ありません。紅空様はただ今家を出ていかれました」
「じゃぁ、どこに行ったんですか?」
「それは…善次郎様に内密にすることと言われているので…」
申し訳ありませんと頭を下げられたので言い返せる訳もなく。私達は帰ることになった…。
「樺夜様…」
「…はい?」
「実は、善次郎様から樺夜様には言っておくようにと言われておりまして…」
「私だけに?」
朝焼けに映る教室でまだ…1人揃わないクラスがあった…。夕日に染まる教室で何もわからない生徒が…1人いた…。
「え…」
そこには…もう誰もいないはずの教室で…1人立っていた…。
「放課後の解放感ほど気持ちいいものはないよねー」
「本当にそれー。やっと終わったー。」
「樺夜も一緒に帰ろ?」
「うん」
「このあとどこに行く?」
「カラオケ!!」
「いいね!!樺夜は…?」
「…ん?待って…」
お父様に電話しないと…あれ?
「…あ。ごめん!学校にケータイ忘れたみたい。取りに行ってくるね」
「早く戻ってこいよ~」
学校まではここからすぐなので不幸中の幸いというべきか…。
階段を駆け上がる。
若干息も上がってきた。そんな時…私の前で立っていたのは…
「紅空くん…」
「あぁ…樺夜か…」
………なんでだろう…たくさん言いたいことがあるくせに何も言えない
…。
「紅空くん…」
でも…これだけは言える…。
「行かないで…」