…ありだな
「俺が金だ」
なんで…?なんで紅空くんの声がするの…?まさか…ここに紅空くんがいるの?
「だめ!紅空くん逃げて!!」
「ンンン!んんんんんんんんんん!!」
「うるせぇなぁ…」
男の後ろには、目隠しされ口と身体を縛られているが確かに樺夜の姿があった。
「待て。俺がそいつと…」
「大変だ!けっ警察が…」
「………」
お父様か…
「な、なんだと!?くそっ!!…仕方が無い最後の手段だ…」
男は俺と樺夜を見る。…まずい。これは、俺も樺夜も殺される流れじゃないか…?
「この2人を人質に車を用意させよう」
…司令塔が冷静でよかった。ひとまず今死ぬことはなくなった。
あとは、どうやってこの状況を切り抜けるかだ。
「早くいけ」
頭を掴まれる。
樺夜が捕らわれていたのは山の中の小さな小屋だった。俺がそこまでいくのに、いくつもの細い道を通らなくてはなかった。
しかしお父様はどうやってあの大人数を連れて来たんだ…?
「おい、まさかお前が呼んだんじゃないよな?」
横に首を振る。
小屋の周りにはパトカーが囲むようにして止まっていた。
「紅空…」
「くっ…車だ!!車を用意しろ!!今すぐだ!!」
俺は目を瞑る…。
誘拐犯は7人…そのうちの2人は俺と樺夜の傍にいて5人は近くて3mか…。『樺夜さんはなにがあっても守り抜け…』守り抜け…か…。
俺はその時、お父様に…いや、自分自身に誓った…。
「車だ…これでいいか?」
「もう、もういいでしょ?か、帰してよ?」
樺夜は震える声が響く…
「だめだ…まだ一緒にいないと俺達の命が…」
― プシュ
「な…ん…」
樺夜の傍にいた男が倒れる。
「な…誰だ!!撃ちやがったヤツはッ!!」
― カチッ
「ま…まさか…」
― プシュ
「お父様…申し訳ありません」
「どうして謝る?かっこよかったぞ?
まさか麻酔銃を使うとはな…」
「紅空くん…」
泣いていたからだろう樺夜の頬は少し赤くはれていた。
「どうして…こんなところに来たの?」
お父様に言われたからだ。なんて言える訳もなく…。
「…こういうのも…ありだな」
意味不明な言葉を残し俺は車に乗り込んだ。
紅空くんは…どうして助けになんか来てくれたんだろう…?それに、『…こういうのも…ありだな』って…どういう意味よ…。
「くす…」
「あー!樺夜!なんで昨日休んだのよ!?」
私のもとにすごい勢いで駆け寄ってくる様子をみると、昨日は相当迷惑をかけたみたいだ。
「ごめん!!急に熱出ちゃって…」
勢いよく頭を下げる。
「え…いや。そこまでされたら…」
「まぁ、悪気はないみたいだし。いいじゃん」
「うん。熱下がったんだよね?」
「下がったよ。おかげさまで。」
紅空くんは…いつもどうりでした。
いや…なんか…紅空くんいつもより…なにかが違う気がした。
6話へ続く、