その気は無い
「紅空…」
え…まさか?まさかね。
紅空なわけ…ないわよね
「おい、今日聞いたよな?『お父さんから何か聞いてないか?』って」
「だって、私だって今日聞いたんだもん!」
「はぁ…」
な、何この空気
「おぉ来ていたのか樺夜さん」
「善次郎さん」
天ノ 善次郎 紅空の父親でネットワーク天ノの社長だ。
「お父様、これはどういうことですか?」
「まぁまぁ、そのことについて食事でもしながら話そうではないか」
善次郎さんによると私達の婚約の話しは今に始まった話しではないらしい。前々から話しは進んでいたらしいが、私のお父様がどうしてもその日の興奮を押さえきれず「一刻も早く娘に伝えたい」と言い出したらしい。
善次郎さんも大賛成だったらしく今に至るわけだ。
「お父様は、またその日のテンションに任せるんだから…」
「まったくだ。もう少し慎重性を持っていて欲しい」
「ご、ごめんなさい…」
否定できないのに、悔しくない。
それから数分後私は緊張でほとんど料理に手を出していなかった。
お腹…減った
「樺夜さん」
「な、なに?」
「何か食べたいものでもあるか?」
「え、そうね…じゃぁピラフ」
紅空くんはピラフに手を伸ばす
なんだ…意外と気が利くじゃん。
「ねぇ、紅空くん…」
紅空はこっちを見るだけで何も言わない。無駄に緊張するじゃない…
「紅空君はその…この事いつから聞いてたの?」
「3日ほど前だ」
紅空君はピラフを盛った皿を私の前に置く
「あ、ありがとう」
紅空君は何の反応もしない。そういうところは健在らしい。
それから数十分後食事会は終わり、善次郎さんは私に車を出すように言った。ただ一つ疑問なのは何故、私の隣に紅空くんが座っているのかだ。
「ね、ねぇ紅空くん?」
「なんだ?」
「なんで紅空くんがついて来てるの?」
「お父様に一緒に行くようにと言われたからだ」
えぇ、なんで…まぁ予想は付くけど。
「多方俺とお前の距離を近づけるために努力しているんだろう」
私と紅空くんの…
「まぁ、その内恭介さんにあいさつしなければいけなかったんだ。ちょうどいい」
恭介とは私のお父様の名前だ。
「お父様の判断に反対する気は無い。
だが、親しくしろというのは無理な話しだ」
「何よ、好き勝手言ってくれちゃって」
家に着いた紅空くんはお父様と十分ほど話したあと帰ってしまった。本当嫌なヤツと思ったが、お父様とお母様はとても気に入っているようでしつこく紅空くんはどうだったと聞かれた私は部屋に入ると一気に疲れが出てきて、そのまま寝てしまった。
一週間後
「お願い!!樺夜!私にはもう樺夜しかいないんだ!!」
今がどんな状況かと言うと、1ヶ月後に迫った学園祭の準備に取り掛かる生徒も出てきている中、この女性陣はメイドカフェを開くために頭数を増やそうとしているがどうしても一人人数が足りないらしい。そこで私に頼んでいるんだが、
「でも、私バイトなんてしたことないし...」
「そこんとこは大丈夫。樺夜には客引きをしてもらうから」
「そう?なら…いいけど」
「ヤッター!!さすが樺夜!持つべきものは友達だ!それに比べて紅空は」
「え…紅空くんにも頼んだの?」
「ウェイトレスをね。即拒否られたけど」
当たり前だ。
「準備は?なにするの?」
「........」
え?
まさか、人数揃えるのに必死でどうするか全く話していなかったなんて…おかげで毎日大忙しだ。
メニューを考えたり、看板をつくったり、机や椅子を用意したりと当然だがそう簡単にはいかなかった。
先生に料理が食べられるものかどうか審査してもらったりもしなければいけなかった。そんな中、客引きの私は看板を職人に作らせたり、机や椅子を用意したりした。
そして、学園祭当日…
雑貨店やら編み物店やら学校にはたくさんの店が並んでいる。
私もメイドの服を着て友達と楽しく学園祭を満喫している……はずだった。
「お目覚めですか?樺夜お嬢様?」
目を覚ませばそこは…見知らぬ男が私を縛っていた…
4話へ続く、
えー、どうもあめのそらです。
3話はもう少し違う展開にしようと思ってたんですけど…なんでこんな感じにしちゃったかな…。
次回は主人公視点で話しを進めて行きます。