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出発

 僕はグロワールに戻ってくると、カミラの部屋にベッドを置きに行って、皆を招集した。


「予想以上に事態は深刻みたい。さっき、ベッドを買いに行った帰り道で騎士達に襲われたよ」


「えぇ!? 大丈夫だったの!?」


「なんと……ですが、どうして一般人であるユークさんを」


「昨日の件で邪魔したから、だろうね。その情報が騎士達の中ですでに出回っていて、腕のある騎士が僕の力を見抜いたからじゃないかな」


「ま、あいつらがバカじゃないならそうなるわよね」


 こうなってしまった以上、ナノカには真実を話して貰う必要があった。


 僕はナノカに目線を移すと、ナノカはすでに決心していたようだった。


「……全て、お話します。ビスゥーダ王国のことも、私のことも……」


「ナノカ様……」


 真剣な表情で、ゆっくりと語りだすナノカ。


 僕はすでに彼女たちの事情をほとんど知っているが、そのことについては触れない。やはり、自分の意志で話して貰うことが一番だと思うからだ。


 ナノカの話を聞いたジェシーは特に表情を変えないでいた。対するカミラは興味津々といったところか。


「何々? じゃあ、マジで本当に、お姫様なわけ!?」


「はい。私はビスゥーダ王国の第一王女です。大臣の野望をどうにかして阻止しなくてはいけないのです」


「それについては、ニーナが証拠を見つけ出してくれるはずだよ。恐らく、ビスゥーダ王国に着くまでの間にね」


「本当ですか、ユーク」


 驚いた様子のナノカ。エマは察していたのだろうか、驚いてはいたがやはりといった様子。


「はい。なので、明日の朝……いえ、やはり今から出発しましょう。一部の騎士が行方不明となれば、ここへ敵がやって来るでしょうし」


「あのさぁ、ユーク。ちょっと思ったんだけど」


「どうかしたのかい? カミラ」


「うん。それって、ボクも一緒に行っていいのかな?」


「カミラも? でも君は……」


「またボク一人、のけ者なんて嫌だよ! ボクだって何かしらの力にはなるよ! 連れていってよ!」


 カミラの意志は固そうだった。参ったな……カミラは僕やジェシーと違って、それほど戦闘力があるわけじゃない。


 つまり、同行するとなると僕らはナノカとカミラ……エマさんはどうか知らないけど、エマさんも戦闘力がないのなら三人を守らないと行けなくなる。これは割りと大変だ。


 ニーナが居てくれれば平気なんだけど……まあ、装備を固めればどうにかなるか。


 となると、グロワールの留守を誰かに見てもらわないといけなくなるんだけど……店を閉めるのはいいとして、奴らがまたここを襲撃してくる可能性は高い。


 そうなると、必然的に室内を滅茶苦茶に荒らされてしまうだろう。


 それは困る。ということで、ギルドのナーシャさんに僕は連絡を取ることにした。


「別に構いませんよ~」


 たった三秒で了承された。さすがナーシャさん。


 ナーシャ・ベリントス。ギルドの総括をしている偉い人だ。


 27という若さでギルドを纏めているだけあって、実力も相当である。


 よし、これで何の心配もなくなった。ビスゥーダ王国に向かおう。


 カミラには、特別製の魔導服を着て貰うことに。後、護身用の魔法銃。


 マジックコーティングを施した魔導服で、魔法に対する耐性はかなりのモノだ。防御面でも優秀。ハイマジックアーマーほどではないけどね。


 同じ魔導服をエマさんとナノカにも着て貰うことにした。念には念を入れないといけない。何かあってからじゃ遅いからね。


 準備を完了させた僕らは軽い食事をとって、移動を開始した。


 早馬を使い、ビスゥーダ王国に向かう。その道中の出来事だった。


 ビスゥーダ王国の騎士団に見つかったのだ。王国へ向かう以上、見つからないで行くというのは難しいとは思っていたけど、こんなに早く見つかるなんて。


 敵の数は十。馬には乗っていない。振りきれなくはない、か。


「僕とジェシーが奴らを惹きつける! そのうちに先に進むんだ!」


「わかったよ!」


「やらせると思うな!」


 騎士達が剣を構えてこちらへと向かってくる。僕は先頭に立って、魔法を放った。


「風よ……我が命に従い、舞え! ウイングブラスト!」


 僕の手から放たれた爆風が、騎士達を襲う!


 やはり、ハイマジックアーマーのせいか、ダメージは大して与えられていない。少しの間動きを封じたぐらいだろう。


 実を言えば、僕はこの騎士達を大出力の魔法で全滅させることも出来た。


 しかし、自国の騎士達を無残に殺すのはナノカにとってどうなのかと思ったのだ。


 あの時は内密に処理したからいいけど……目の前でっていうのは、後々に響いてこないだろうかってね。


 そういうこともあって、僕は手加減をしながらこの騎士達を突破しなくては行けなくなったわけ。


 ジェシーも恐らく、同じことを考えているのだろう。相手の剣を破壊するか、弾き飛ばそうとしていた。


 ハイマジックアーマーなんて重装備を着ている癖に、柔軟な動きをする。


 早馬に追いつくなんて、飛んでもない話だ。意外と、ビスゥーダ王国の兵士って兵のレベル高いんだな……兵士の教育にそれだけ力を入れているっていうのは、それはそれで何かを起こしかねないのだけどね。


 自国を守る為っていうのはあるだろうけど……行き過ぎた力は野心を生む。


 かつて、そうやって力に溺れた国が滅んだのだけど。


 大昔だと、古代人達か。


 そんなことを考えている場合じゃなかった。僕は杖に魔力を込めて、腕力強化を行う。相手が馬に接近して来たところで、それを逆に叩いた。


 騎士は勢い良く吹き飛ばされる。鎧はわずかにヘコんだだけ。頑丈にも程があるよね。


 カミラは僕らのやり取りを見て、自分もと思ったのか銃を取り出して応戦しようとした。


 馬鹿! 何をやっているんだ! 戦いは僕らに任せておけばいいのに!


 それを見た騎士がカミラの放った銃を弾き返す!


「う、うわぁっ!」


「カミラ!」


 僕は早馬を捨てて、風魔法を使いカミラの元へと飛んだ。


 弾き返された魔法弾に狙いをつけて、魔法を放つ!


 うまい具合にヒットし、魔法弾は消滅した。


「た、助かったよ。ユーク。ありがと」


「カミラ。戦いは僕らの仕事だ。君はナノカ達と一緒に先に進むんだ。いいね?」


「う、うん……ごめん」


「わかってくれればいいよ。さあ、行って!」


 カミラが馬を飛ばすのを見計らって、僕は動いた。


 すでにジェシーがあらかた倒しているけど。


 僕は魔力を一点集中させて、騎士達の足を狙う。


 騎士達の足は僕の魔法によって、折れ曲がった。


 力を入れ過ぎると吹き飛ばしてしまうので、加減が難しい。


 絶妙な魔力の込め方によって、ギリギリ足が折れるぐらいの威力を放つ。


 ハイマジックアーマーの強度については昨日と今日の戦闘である程度、把握している。結果、うまくいったようだ。


 敵を動けなくした僕とジェシーは捨てておいた早馬に乗り、ナノカ達に合流した。


 ビスゥーダ王国までは、それほど時間もかからないだろう。


 せいぜい、数日といったところだろうか。


 僕らは騎士団の動きに警戒しながら、ビスゥーダ王国へと足を進めた。

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