表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

ベッド・イン

 食事も終わり、それぞれが寛いでいるところで僕はニーナに呼ばれていた。


「何かわかったのかい?」


「はい。彼らの着用していた鎧から分析した結果、南西に位置する中国・ビスゥーダ王国に属する騎士のようです」


「ビスゥーダ王国か……ここから然程遠くないし、間違いなさそうだね」


 というか、ニーナのデータベース検索は相当のものだ。ニーナしか出来ない行為でもある。当時はどうやってニーナがそのようなことをしているのかわからなかったけど、今の僕なら何となく仕組みは理解出来る。


 ニーナには膨大な量のデータが収容されており、それと照らしあわせて導き出したのだろう。それと、衛星からのネットワークも健在の模様。


 つまり、この時代において僕らほど情報戦に長けている者はいないということだ。もちろん、ニーナのような存在が他にもあれば別かもしれないが。


 さて……それよりも、王国の騎士が動いているとなるとこれは大事だろう。


 騎士団が少女を追い回す理由ね……大体、見当がつくけど。


 そこは確定じゃないから、何とも言えないか。


「ニーナ。悪いけど、ビスゥーダ王国について探りを入れて貰えるかな?」


「はい。かしこまりましたマスター」


 僕らがここまで首を突っ込むことでもないのだろうけど……この辺一帯の治安も悪くなるだろうし。芽は早くに摘む方が最適かな。


 戦争、なんてことになったら困るからね。特に僕らがいるところは小国の町だからなぁ。資源地としての重要性もある国だし。


 まあ、大国が攻めてくるなんてことはないと思うけど。同盟も結んでいることだしね。


 それはともかく、小規模な争い自体はありえる話だからね。


 って、どうして僕らが戦争にまで気を配らないといけないのだろうかっていう話ではあるけど。


 僕はニーナと別れてから、自室へと戻った。すると、そこにはジェシーの姿があった。どうして、ジェシーがここに?


「あ、帰って来たわね。ニーナとの話は終わったの?」


「終わったけど……どうしてここにいるんだい? 何か話でも?」


「べ、別に来たっていいでしょ……っていうか、あの二人を部屋に案内したら寝る場所がなくなったのよ」


「あー……なるほど。いや、でもそれならカミラのところへ行けばいいんじゃ」


「カミラは駄目よ。あの子、寝相凄いもの」


「うーん……じゃあ僕が下で寝ようか?」


「駄目に決まっているでしょ! 風邪引いたらどうするのよ!」


「じゃあどうするんだい?」


「……だから、その。一緒に……寝れば、いいんじゃないの!」


「へ?」


 どういうことだ? 一緒に寝る? 僕と、ジェシーが?


 いやいやいやいや、おかしいでしょ。ありえない。そんなことをしたら、殺され……って、向こうから誘ってきたんだった。


 落ち着けユーク。いや、小野寺和人。そうだ僕ならこんなシチュエーションは大歓迎じゃないか。何を迷う必要がある。でも、いいのか?


 恋人ってわけでもないのに……同じベッドで寝るなんて。


 てか、僕にそんな耐性あるわけないじゃないか。そういう問題じゃなくて。ああ、もう。どうしろと!


「なによ……嫌、なの?」


「いや……嫌っていうか。いいのか?」


「べ、別に一晩ぐらい……変なことしないでよ」


「しないけどさ……」


「しないんだ……」


「は?」


「っ……な、なんでもないわよっ!」


 なんなんだろう、こいつは。さっきからよくわからない。何を考えているんだ? 誘っているのか? いやー、ラノベの主人公とかって何をじれったいことやっているんだって思っていたけど、いざ実際にそういう場面に立たされるとたしかに困るわ。なんかこう、理性的なものというか、道徳的なものっていうか。ねえ?


 何かこう、踏み越えてはいけない一線みたいなものを感じて……。


「それじゃ、まあ……失礼して」


「う、うん……」


 そういって、ベッドに入ろうとした時──。


「あーっ!! 何やってんのさ、二人とも!!」


「えっ……! いや、これはっ!」


「ち、ちちちちちがうんだから! べ、ベッドがなくて!」


「うわぁ、ずるいんだぁ! ボクに内緒で二人で一緒に……一緒にぃ! ボクだってユークと寝たかったのにぃいいいいいいっ!!」


「「へ?」」


 僕とジェシーが今度は呆然とする。


「あっ……いや、今のはっ! そういうんじゃないから!」


「ちがうからっ!」


 こくこくと僕とジェシーは頷いた。そうするしかないだろう、もう。わけがわからなくなってるし。頭の中は真っ白だし。きっと、ジェシーもそうだろう。


 だから、必死にカミラが何かを言っているが、全部耳を素通りして突き抜けてしまう。


「だから……ちがうんだから!」


 最終的にどうなったかというと。よくわからないが……僕もベッドで寝たいということに変わりはなく。ジェシーもカミラも出ていかないので。


 狭いベッドに三人で寝ることになったのだった。


 どうしてこうなってしまったのかはもうよくわからない。


 僕は一番右で相手に背を向けて寝ることにした。


 ……。


 眠りに入ったところで起こされた。


 原因は言うまでもない。カミラだ。ジェシーの言うとおり、カミラの寝相は最悪だった。パンチが飛んでくるわ、蹴りが来るわ。抱きしめられるわ。


 しかも、凄い力で。眠いせいで魔力の集中も上手く出来ないので、障壁展開するわけにもいかず、ボコボコと殴られるわ締め付けられるわ。


 痛い。寝れない。眠い。ヤバイ。とても、女の子に色々されて嬉しい! なんて、言っているような状態ではない。実は羨ましいと思える状態はそうでもなかったんだなと思いつつ……早くどうにかして欲しいと願う僕だった。


 正直、かなり息苦しい。そりゃそうだ。これだけの人数で狭いベッドを占拠しているのだから。


 というか、部屋出て行ってカミラの空いているベッドで寝ればいいんじゃとか思ったけど、眠すぎて動く気にもならなかった。それに、女の子の部屋に勝手に入るのも問題か。


 そんな状態が数時間ほど経過して……眠気の方が痛みを勝ったのか、僕はそのまま眠りに入ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ ↓ 評価をお願いします。 ↓ ◆
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ